「デジタル 」
    
大杉 涼

昔 俺の部屋にAC100Vで動くデジタル時計があったんだ。
最近の液晶表示のヤツじゃなくて駅の発車時刻案内に使ってるような鉄板に書かれた数字がクルクルとまわるもの。
俺はこれがキライだったんだ。
だって一分ごとに数字が パタッ・・・ て落ちるんだぜ?
おちるんだよ!

パタッ・・・

最後の一葉の話は知ってるだろ?
ちょうどあんな気分にさせてくれるんだ。

夜になればブラックライトで文字が緑色に光りやがるし。
消灯時間の病院の様に部屋中緑色なんだぜ!

まあ・・・そういう訳かどうかは知らないけどこのタイプのデジタル時計は姿を消した。

でも俺の心の中にはあの緑色がいまでも焼き付いて離れない。

光と音。
それらは俺の体内時計と完全に一体化して
終末の映像を作り出していたからだ。

俺はいったいどうすりゃいいんだ?

不安と絶望の深淵がせまりくる。
窓の外を見る。
下館音頭が聞こえてくる。

・・・ああ・・・盆踊りの季節か・・・

市役所前の広場では小学生が口から泡をブクブクと吹き散らしやぐらの下で首を吊っている。
スラム街の連中は早速その足を削り落としてスウプを作っていた。
圧政に虐げられている農民達はここぞとばかりに女子校生の背中を狂ったようにクワで耕しまくっている。
御禁制の天然痘までが会場に持ち込まれ審査員達は踊りの採点よりも発疹のでき具合いにご執心の様子である。

いつしか俺はくわえタバコの煙の中で両手をひらひらと動かしていた。
デジタルなリズムではない盆踊りの太鼓に合わせて・・・。

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