性感染症(STD)Q&A


性感染症(STD)とはどんな病気ですか?

SEXを介して感染する(うつる)病気を総称して、性感染症(STD)と呼びます。その代表的なものには、梅毒(スピロヘーターであるトリポネマ・パリドムによる感染)、りん病(細菌である淋菌による感染)、性器ヘルペス症(ヘルペスウイルスによる感染)、クラミジア感染症(クラミジア・トラコマチスによる感染)、尖圭コンジローマ(パピローマウイルスによるイボ)、トリコモナス腟炎(トリコモナス原虫による感染)、毛ジラミ(シラミによる感染)、そしてAIDS(ヒト免疫不全ウイルス「HIV」による感染)などです。これらは決して特殊な病気ではなく、誰でも感染する可能性がある病気です。主に精液や腟液などを介して腟の粘膜やペニスの粘膜に感染するのですが、患部に直接触れて感染するものもあり、ときには口や咽頭(のど)、直腸からでも感染します。不特定多数の相手とのSEXなどがその危険性を増します。

予防法は唯一、SEXの時は必ずコンドームをきちんとつける事です。

治療は7日〜2週間、長いものだと数カ月程度かかることもありますが、病気によってはすぐに治るものから、重篤な後遺症を残す可能性があるものまでありますので、医師の指示にしたがって根気よく治療しましょう。

もしSTDにかかっていることがわかったら、必ずパートナーに話して検査を受けてもらうようにしましょう。仮にあなたが治っても、また相手からうつされてしまっては何の意味もありません。治療の原則は「パートナーと一緒に治療する」 ことです。


パートナーがクラミジアといわれましたが、どんな病気ですか。

クラミジア・トラコマチスによる感染症は、一昔前まではトラコーマ(結膜炎)の病原体として知られていましたが、現在では、性行為による感染症として注目され、増加しつつあります。男性は尿道炎として起こり、排尿痛や膿性分泌物などで気づくことがあります。女性はおりものや不正出血で気づくか、自覚症状がないまま経過し、気がつかないうちに病状が進行し、卵管炎や腹膜炎に進むとお腹の中の癒着を作り、 腹痛や子宮外妊娠、不妊症の原因になることがあります。妊娠中の流産の原因になることもあり、出産時に新生児に感染すると、子供の結膜炎や肺炎が起こります。ほとんど性交により感染する病気(STD)ですから、パートナーと二人で治療(抗生物質を服用)することが望ましいのです。
クラミジアの感染経路(図をクリックで拡大)



  ただ、最近はオーラルセックスの影響で、精液を口に含む事からのどに 感染(クラミジア咽頭炎)を起こしたり、目に感染(クラミジア結膜炎)を起こす例が増えています。その場合は治療が難しい例が少なくありません。疑わしい時は、耳鼻科や眼科で診察を受けて下さい。
(尿道や精液中には様々な菌やウイルスがいる可能性がありますので、オーラルセックスは決して安全、安心ではありません。むしろSTDの危険がいっぱいです。)


クラミジアは治らないといわれました。本当ですか。

まずクラミジアの検査方法は2通りあります。まず内診で子宮口の部分から抗原(クラミジア病原体の存在)を調べる検査法と、つぎに血液で抗体(過去に感染したことを示す血液中に出てくる反応)を調べる検査法があります。抗原が陽性であれば、現在そこにクラミジアが存在する事を示し、抗体が陽性であれば、いつ感染したかはわからないけれど、過去に感染したことがあるという証拠(なごり)を示します。つまり病気が治ってクラミジアが消えても、抗体は消えずに血液中に残ります。感染した初期であれば2週間以上抗生物質を服用すれば抗原は消えて、ほとんど治療できます。ただし血液中の抗体は治療後も消えませんので、治っていないように思われますが、症状が消えていれば、治療は中止してもよいでしょう。ただしすでに卵管炎や腹膜炎まで進んでできたお腹の中の癒着は、元には戻りません。


性器ヘルペスってどんな病気ですか。

口唇などに小さな水疱をつくる単純ヘルペスウイルスが、性器に感染する病気です。初めて感染した場合、性交後2〜7日して性器のかゆみから痛みを伴う腫れと水疱ができて破れて潰瘍になり、それが激しい痛みを伴います。女性の場合、陰部に触るだけで痛かったり、排尿時の痛みの原因に もなりますが、やがてかさぶたとなって治っていきます。時に頭痛や発熱、足の付け根のリンパ節が腫れます。これらはいわゆる急性型の発症であり、初感染と考えられます。たいてい3週間くらいで自然に治りますが、抗ウイルス剤で治療すると症状も軽くすみ、1週間程度でよくなります。


性器ヘルペスは再発するのですか。

一般的にヘルペスウイルスは、一度感染が成立すると、体内で持続感染の状態となり、感染宿主(ヒト)とは一生共存することになります。おもに神経節に潜伏したウイルスは、紫外線、ストレス、免疫抑制剤の服用、月経などの誘因により再活性され、いわゆる再発を起こします。つまり、 いったん消えたと思ったウイルスが、抵抗力が低下したときに暴れだすのです。しかし再発では症状が軽く、水疱や潰瘍も限局しており、比較的数も少なく、1週間以内に治癒します。ただし妊娠中、分娩時に再発すると、出産時に新生児に感染する恐れがあり、重大な新生児ヘルペス症になる恐れもありますので、感染しないような出産方法(帝王切開)を主治医と相談する必要があります。
追加:現在、再発の予防方法があります。


口唇ヘルペスが、性器ヘルペスとどのように異なるのかがよく分かりません。

水疱を作る単純ヘルペス(HSV)には1型と2型があり、今までは、1型は顔面などの上半身に好んで病巣を形成するので、おもに口唇ヘルペスとなり、2型は性器を中心とした下半身に好んで病巣を形成するため、おもに性器ヘルペスとなったのです。一般には性器ヘルペスはSTDの一種 であり、口唇ヘルペスは体力が落ちたり免疫機能が低下すると出現するものと考えて問題ないのです。しかし最近はオーラルセックスによって、2型が口唇ヘルペスになったり、1型が急性型の性器ヘルペスになったりすることがあり、原因が複雑になっています。また潜伏感染の場合、2型は下半身の仙骨神経節に好んで潜伏しますので、再発型の性器ヘルペスの場合はほとんど2型が多いようです。


外陰部にイボができ、尖圭コンジローマと診断されました。

「尖圭コンジローマ」とはイボの病気です。ヒトパピローマウイルス(HPV)による性行為が原因で発生する性感染症(STD)であることが知られています。ヒトパピローマウイルス(HPV)とはいぼウイルスともいわれ、腫瘍を形成する特徴を持っていますが、性行為以外でも免疫の抵抗力が弱っている例にも発生し、免疫系の関与もあるようです。しかしウイルスが一生体に残るといった特徴はなく、自然治癒する例も多いようです。イボですから、小さいものから大きいものまで様々で、できる場所も腟のまわりから肛門周囲、ときには腟の中までできることもありますが、小さいものは自然に消失する例もあります。一般的には、小さいものは抗癌剤として使用される種類の軟膏を塗る方法や、最近は液体窒素でいぼを凍らせて消滅させる冷凍治療が有効です。大きいものは軟膏や液体窒素だけでは不十分で、そこの部分を焼く治療、たとえば電気などで焼いたり、最近はレーザーを用いて焼く治療が増えてきました。これは痛みも比較的少なくイボが治ります。 焼くことができないとても大きなイボに対しては、切除手術を行います。ほとんど外来でおこなえますが、とても大きい場合や広範囲の場合には、麻酔をかけますから、1日くらい入院する事もあるでしょう。 治療が不十分の場合は、再度大きくなることもありますが、きちんと治療すれば、問題なく治るイボです。
追加:現在、治療用のクリーム剤があります。 

腟の中に尖圭コンジローマがたくさんできていると診断されました。

腟内だけに尖圭コンジローマが見つかる例は少ないのですが、女性の腟壁の表面や入口部はもともとヒダ状になっているため、一 見コンジローマのイボと見間違う例も少なくありません。その場合、他の施設で再度診察を受けてみれば問題なかったという事もあります。尖圭コンジローマの症例を多く診ておられる泌尿器科医の高橋友宏先生(高橋クリニック)が、腟内のコンジローマの誤診例STD・性行為感染症」というページで紹介されています(http: //hinyoukika.cocolog-nifty.com/std/)

診断がはっきりしないときは、コルポスコピー(拡大鏡検査)な どによる専門医による詳細な検査で診てもらって、病気のイボではない事を確認すればほとんど問題ありません。


尖圭コンジローマが子宮がんになると聞きましたが、本当ですか?

基本的に尖圭コンジローマと子宮がんとは別の病気です。もちろん子宮の入口にできる子宮頚部がんの発生原因として、尖圭コンジローマと同様にヒトパピローマウイルス(HPV)が関係している事が明らかになっています。しかしヒトパピローマウイルス(HPV)は現在まで約70種類の型が同定されており、子宮頚部がんではそのなかの16型や18型など癌になりやすいハイリスクのタイプが関係するのに対して、尖圭コンジローマでは多くが6型や11型などのローリスクのタイプが発生原因と考えられており、尖圭コンジローマは癌とは関係ありません。ただし、ヒトパピローマウイルス(HPV)は性行為で感染する事を考えれば、尖圭コンジローマが有る無しには関係なく、若い年 令であっても、性行為があれば子宮頸がん検診を勧めています。