不妊症Q&A


不妊症かどうかを知りたい。

一般には、避妊を全くせずに夫婦生活(SEX)を続けたのに妊娠しない状態を「不妊症」といいます。不妊症には、これまで1度も妊娠していない「原発不妊 症」と過去に1度は妊娠したのにその後妊娠しない「続発不妊症」に分類されます。またその原因は、50%は女性側に原因がありますが、50%は男性側に原 因が見つかります。もし1年以上の性生活があるのに妊娠しなければ、その時点で早めに不妊の検査を受けることを勧めます。


不妊症の検査について知りたい。

不妊の原因の半分は女性側で、もう半分は男性側にあります。したがって、女性の検査と男性の検査が必要です。   

  1. 女性の検査   
  2. 男性の検査


不妊症の検査は保険がききますか?

上 記の検査の多くは保険の適応がありますが、さらに詳し い特殊検査では適応できないものもあります。わからなければそのつど主治医に尋ねて下さい。


主な不妊症治療について知りたい。


多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といわれれましたが、どんな病気ですか。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害の病気です。 特徴は排卵が起りにくいことから、70%が不妊、40%が無月経や肥満、20%が不正出血、 10%が多毛症などの男性化を訴えます。月経が来ないまま放置すると、まれに子宮体癌の発生も 増えます。卵巣の皮が固くなっていることがその病気の特徴です。

多嚢胞性卵巣(PCOS)は、診断基準 (最も新しい日本での診断基準(日本産科婦人科学会2007)) は、以下の3項目をすべて満たす場合の、排卵障害の病気です。

  1. 月経異常がある
  2. 多嚢胞性卵巣のエコー所見
  3. 血中男性ホルモンが高値 または LHが高値かつFSHが正


その病態は複雑で、視床下部ー下垂体ー卵巣系の異常に加えて、副腎系、糖代謝異常が複雑 に関与した病態(内分泌代謝の悪循環)が考えられていますが、 PCOSの臨床像は、欧米人と日本人とでも人種により大きく異なり、また以上のような完全型の病態を呈するPCOSはむしろ稀で、多くはLHの中等度過剰 分泌による卵巣でのアンドロゲン分泌亢進がPCOSに共通した病態であると理解するのが妥当とされています。

もし子供を望むならほとんどの例で排卵誘発剤が必要となりますが、PCOSの排卵治療で問題 なのは、治療を受ける本人に対する副作用です。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の多くは排卵誘発剤、とくにhMGなどの注射薬に過敏に効きすぎて、複数の卵子が排卵して多胎妊娠になることもあり、また卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と いって卵巣が異常に腫れやすいのです。 また逆に、クロミフェンなどの排卵誘発剤がだんだん効かなくなることもあります。つまり薬の使い方が難しいのが多嚢胞性卵巣症候群の特徴です。当然安易な 注射治療は謹むべきですが、これらはもちろん ある程度予防できますし、そのためには専門的知識が必要です。結論をいえば、妊娠を希望する場合は、ある程度の排卵誘発治療は必要ですので、排卵治療はで きるだけ不妊専門医にお願いすることが望ましいと思います。

排卵誘発の実際はクロミフェンを使用します が、クロミフェンに反応しなくなる例も多く、結局hMG の注射などをすることが多くなり、その結果、卵巣腫大などの副作用も多くなります。 注射もPCOSに対するものとして、pureFSHの注射があります。hMGなどよりは 腫れにくいですが、でもやはり腫れることが少なくありません。注射が使えないときは、最近は、 外科的な治療(腹腔鏡による卵巣焼灼)が有効なことが あり、薬による副作用も軽減でき、妊娠もできます。

なお、未婚で妊娠を希望していない場合は、 排卵誘発剤の治療は必要ではなく、結婚や妊娠を考える時まではピル(OC)やカウフマン治療などで月経だけを起すことで十分です。根本的には排卵障害とい う病気そのものは治りにくいものです。

追補:最近ではPCOSの例でイ ンスリン抵抗性を認める(糖尿病の発症の危険性が高く、肥満を伴ったりメタボリック症候群との関係が指摘され ています)例が多く見つかり、排卵が起こりにくい例で血糖検査やインスリン検査を行ないます。その結果でインスリン抵抗性を認めた場合には、インスリンを 下げる作用のある糖尿病治療薬(メトフォルミン)を服用したり、肥満(BMIが25 以上)であればウエイトコント ロールを行うことで、自然排卵が起こったり、排卵誘発剤に効果が見られ、妊娠する例が増えています。いずれにしても、PCOSの治療は専門医でも 苦労する難しい治療です。(BMI=体重kg/身長m×身長m)


高プロラクチン血症といわれましたが、どんな病気ですか。

プロラクチンとは、母乳を出すための脳下垂体ホルモンですが、このホルモンが妊娠中でも授乳中でもないのに多量に分泌され、排卵が起こりにくくなったり、 卵巣機能不全を起こし、流産等を起こしやすくる病気です。原因は脳下垂体腫瘍や薬(胃潰瘍薬や精神安定薬な ど)によるもの、ストレスなど様々です。不妊の治療ではプロラクチンの分泌を抑える薬(毎日服用するブロモクリプチン錠やターグライド錠の他に、週1回だ け服用するカベルゴリン錠もあります)を、妊娠するまで使います。


子宮内膜症といわれれましたが、どんな病気ですか。

月経の時に子宮の内側からはがれ落ちる子宮内膜と同じ組織が、お腹の中のあちこちの場所(卵巣、卵管、子宮表面、子宮筋内、腹膜、ダグラス窩など)にでき てしまう病気です。お腹の中に癒着を起こしたり、卵巣が腫れたり、様々な理由で不妊になります。月経痛 や性交痛、排便痛、腰痛などの原因にもなります。診断は内診、採血、腹腔鏡検査などで行います。治 療は月経を一時的に止めるホルモン剤(ダナゾール錠、GnRHアナログ点鼻薬や注射薬)を使いますが、薬物治療に効果がない場合や卵巣嚢腫(チョコレート 嚢胞)を認める場合は外科的に手術(腹腔鏡手術)をすることもあります。

 追加:現在新しい黄体ホルモン剤低 用量ピルも治療薬として 増えました。


排卵の時は、基礎体温が必ず下がるのですか?

いいえ、必ずしも下がりません。この質問は多分、体温計などに付録で付いている表例を見て勘違いしているのでしょう。説明文には「排卵日に下がる」とはど こにも書いていないはずです。もちろん下がることもありますが、下がらなくても高温相になっていれば大丈夫、ちゃんと排卵していますので心配はいりませ ん。一番下がった日が排卵日という訳ではなく、高温相になる直前、つまりこのホームページの基礎体温で、矢印の日が 本当の排卵日なのです。


尿LH検査で、陽性になれば必ず排卵するのですか?

排 卵直前の時期になると、下垂体から大量のホルモン (LH)が分泌されます。尿LH検査はそれを尿で調べて排卵日を推定する方法です。しかし必ずしも正確な検査ではありません。尿の濃度や採り方によっても 値が変わります。また多嚢胞性卵巣などの排卵障害の病気では常に尿にLHが出やすいため、排卵とは関係無く陽性になる可能性があります。したがって検査で 陽性になれば必ず排卵する訳でもなく、あくまでも排卵日を推定するための、参考程度の検査と考えたほうが良いでしょう。


一通りの不妊検査をうけ、一度妊娠しました。その後2人目を妊娠しません。

一 度妊娠した後妊娠しない状態を続発不妊症と呼びます。 50%は通常の不妊検査を行うだけでも再度妊娠しますが、まず一度子宮卵管造影検査(HSG)を受けるこ とを勧めます。続発不妊症の多くは子宮卵管造影検査(HSG)の後に妊娠することがよく知られています。また1度妊娠している場合でも、男性側の精液検査 も必要です。以前は異常がない男性でも、様々な原因で、その後精子が少なくなっている例もあります。


卵管采の癒着は、子宮卵管造影では診断できなく腹腔鏡検査で診断がつくと書かれていました が、本当のところはどうなのでしょうか。

子宮卵管造影 (HSG)でわかることは卵管内腔と子宮内腔の状態です。ほとんどの場合、子宮卵管造影で卵管采の癒着までを診断することは非常に困難です。やは り実際に目で確かめる腹腔鏡検査で診断がつくことが多いようです。


頚管粘液は、排卵日が近づくときれいなシダ状の結晶構造を作ると聞いたのですが、見えるの でしょうか?

頚管粘液は性周期とともに変化し、排卵が近づくと卵胞ホ ルモンの分泌量の上昇にともない増量し、粘稠度が低下し、精子の穿通性作用が向上します。この時期の頚管粘液をスライドグラスの上に滴下して乾燥させる と、シダ葉状結晶形成が見られます。これを頚管粘液検査(fern test)と呼び、頚管粘液に含まれる電解質、とくにNa、Clとムチンが適度の比率で存在する場合に起こる現象です。方法はスライドグラスの上で乾燥さ せたのち、10〜100倍の顕微鏡で観察します。

最近その原理を利用して、唾液で検査を行う排卵検査キットが市販されています。しかし実際に 顕微鏡でシダ葉状結晶形成を観察してみても、正確な判断は非常 に難しく、確実な検査にはなりえません。あくまでも排卵日を推定するための、参考程度の検査と考えたほうが良いでしょう。