Cross Settingの真実?


先日、某店を覗くと、スピーカーがいわゆるCross Settingになっていた。「これが噂の…」とその奇怪なセッティングに面食らいながらも、音を聴きながらそのからくり(?)を自分なりに考えていた。少し考えて、「ああ、そういうことか」と大体納得のいく結論が出た。細かいところはともかくとして、大筋としてはこんなところではないかと。


これがいわゆる典型的なCross Settingの一例。左右のスピーカーの軸はちょうど直角で交わり、リスニング・ポジションとペアのスピーカーで正三角形を形作る状態です。リスニングポジションからスピーカーの外側の側面が見えるという、かなり珍妙な事態ですね。しかし、視点を変えてみれば、これは次の状態とほぼ同じであるということに気付きます。


これはスピーカー中心とリスニング・ポジションを結ぶ線を対称軸として、スピーカーを反転させてみた図です。これだと一般的な、少し内振りのセッティングです。実はこれで、上のCross Settingとスピーカーの放射特性上はほぼ同じ状態です。もし無響室で、十分な距離が取られていればこの二つの間の差は殆ど分からないでしょう。

では、何故Cross Settingなのか?それは、実際のリスニング・ルームが無響室ではないからです。従って、この二つのセッティングでは音の反射の仕方に決定的な差が出ます。Cross Settingにした場合、左右の壁はスピーカーにとって殆ど背後にあたるわけですから、音圧は一般的なセッティングに比べて落ちるはずです。一方で、スピーカーと逆側の壁へは殆ど正面を向いているわけなので、一般的なセッティングより音圧は上がりますが、反射してリスニング・ポジションに到達するまでの距離があるため、耳が区別できるほどに遅延していれば、響きとして認識される…かもしれません(計算しないと、区別できるかどうかは分からない)。また、この2点と比べると差は少ないでしょうが、リスニング・ポジション背面の壁からの反射もCross Settingの方が若干音圧が落ちているでしょう。その一方で、スピーカー背面の壁の一次反射点からの反射の音圧はCross Settingの方が大きいはずで、最終的にはやはり聴いて判断するしかないわけなんですが。

以上を考慮すると、Cross Settingが特に有効な条件は、左右の壁から距離が取れるが、リスニング・ポジション背後の距離を取れない状態かなぁと思えます。つまり、部屋の長辺側にスピーカーをセッティングする場合です。一方、左右の距離が十分でない場合はむしろスピーカーと逆の側の壁からの一次反射の影響が問題になるのではないかと思います。…計算して出せたら載せるかもしれません。










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