ドライブシャフト・ブーツ交換(1)

部品呼称 : 一般名/ドライブシャフト・ブーツ;
         ドライブシャフト・ゲーター、ラバー・ベローズ
         のインナー及びアウター 
         まれにアクスル・ダスト・ブーツ      
不良現象 : 前車輪内面やホイールハウス内面にグリースが
         付着して汚れる。
トラブル  : ジョイント部摩耗による振動・異音の発生。
       
交換時期 : 定期点検による亀裂確認時又は5年程度
           インナー/アウターの同時交換が望ましい。
用意部品 :インナー及びアウターブーツ新品、割ピン新品 

     注) 茶字部分は追加・訂正個所


 その前に  ブーツの簡易修理法
     作業手順 ------- 20分コース
 
 ブーツに生じた裂け目が小さい場合には簡単に修理が出来ます。
 87CXのRHアウター・ブーツはこの方法で何回か修理を繰り返し、最後に一気に分裂するまで亀裂発生後約10年持たせました。
 

  1. ボロ布でブーツ全体に着いたオイル・泥などの汚れを拭い取る。次に、ボロ布にアルコール等の溶剤を染込ませてブーツ全体を綺麗にする。消毒用アルコールが使いやすい。
  2. 裂け目からグリースが漏れた分だけ補給する。周囲にグリースが付着した場合は1の作業を繰り返す。
  3. 綿棒にアルコールを染込ませ、ゴムの破断面をぬぐう。綿棒を取替えながら綺麗になるまでこの作業を繰り返す。
  4. 破断面を合わせてアロンアルファ(瞬間接着剤)をたらし、押し付ける。
  5. しっかり接着出来たら周囲をアルコールで良く拭き、接着個所全体を黒色のシリコンシーラント(バスコーク)で綺麗に覆い一晩放置する。<注:車検時の外観保持の為>
  6. 走行後、異常の無いことを確かめる。

慣れると確実かつ簡単に補修でき、手間のかかる交換作業と費用を節約出来る。
早期に亀裂を見つけることが大事。


ドライブ・シャフト・ブーツにはインナー・ブーツとアウター・ブーツとがあり、一組になって使われています。
アウター・ブーツは、ハンドルを切った時のホイールの動きに連動した左右への動きと、路面に追従するホイールの上下運動に伴う動きと、ドライブ・シャフトの回転により、首振変形をいつも受けています。首振変形はハンドルを一杯に切った時に最大ストレスを受けます。
一方、インナー・ブーツは、路面に追従するホイールの上下運動によるドライブ・シャフトの上下運動と、ドライブ・シャフトの回転による首振変形だけを受け、変形量もたいしたことはありません。
従って、ブーツの亀裂はもっぱらアウター・ブーツの方で起きます。

アウター・ブーツだけを交換する場合もありますが、ブーツの破損が小さい場合は前期の簡易修理法で対処できるので、ここでは寿命の来たインナー・ブーツとアウター・ブーツを一遍に取替えるケースを紹介します。

また、インナー・ジョイント側から分解する方法アウター・ジョイント側から分解する方法がありますが、工具の都合と作業の容易さから、ここではインナー・ジョイント側から分解をしました。

[参考]
マニュアルには主にアウター・ジョイント側からの分解方法が書いてあります。
この場合、スライドハンマーの使用が望ましいのですが、特殊な工具になりますので代わりの方法として、楢林さん達の BXサイト のやり方を参考にして下さい。
作業自体もほとんど共通ですので、併せて参考にされることをお薦めします。


 **右車輪側の交換**

作業手順 ------- 180分コース  
基本的に左・右側共作業内容は同じですが、右車輪側は中間ベアリングとエクステンション・ドライブシャフトがある分、煩雑となります。
そこで、三叉ジョイント・ケースを残したまま、エクステンション・ドライブシャフトも取らずに交換します。

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  • 鉄ホイールの場合はホイールキャップを、アルミホイールの場合はセンターキャップを外し、割ピン(A)をラジオペンチ等で曲げながら強引に取り、廻止めキャップ(B)を外します。
  • サイドブレーキを一杯に引き、廻止めキャップ(B)の下のナットをCRCを十分吹いてからソケット・レンチで少し緩めます。
photo2
  • ナットが固着している場合には、インパクトレンチが利用できると有効です。
  • ない場合には BXサイト での緩め方を参考にして下さい。
  • 丁寧に作業する場合は、一度タイヤを外してから、割ピン(青矢)と廻止めキャップ(赤矢)を取り去り、タイヤ再装着後 上記の作業をして下さい。

photo3
  • 車高をハイポジションにし、作業側の車体前部にウマをかけます。(車載ジャッキでも可能ですが、この作業には危険です
  • 作業側のタイヤを外し、車高をミニマムに下げます。車体が傾いてサスペンション・アームが上がり作業しやすくなります。
  • ドライブシャフト・ナット(青矢)を外し、シャフトにCRCを吹いたあとプラハンマーか銅ハンマーでシャフト先端を叩いて、シャフトが動いて多少凹むようにします。

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  • ハンドルを右に一杯に切り、キーを抜いてハンドル・ロックした後、プレッシャー・レギュレーターのリリーススクリューを緩めて圧を抜き、セルフセンターリングを殺す。
  • ロワ-・ボールジョイントを止めるナットを緩めて取り、ロワ-・サスペンションアームからロワ-・ボールジョイントを抜く。
  • テーパー嵌合部(黄矢印)が固着していなければ、ジョイント先端を青矢方向にプラハンマーで叩くと抜ける。
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  • 固着して抜けにくい場合は、CRCを充分吹いてから、ロワ・アームの先端を横赤矢方向に左右繰り返し叩くか、ネジ部を傷めないように気を付けながらジョイント先端を斜めに叩いたりして緩める。
  • プラ-が有れば簡単にロワ-アームからジョイント先端を押し出せるので、是非用意したい。

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  • ドライブシャフト先端をプラハンマーで叩いて押出しながら(青矢)、ステアリング・ナックル部の下部を黄矢印方向に捻り上げる。
  • 一杯に上がったら、ジャッキ等でステアリング・ナックル部を支える。(赤矢
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  • ステアリング・ナックル部の背面から、アウター・ジョイントの首を振りながらドライブシャフト先端を引抜く。インナー・ジョイント側を一杯に押し込むと抜け易い。

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  • アウターブーツ側が抜けたら、インナー・ブーツの上側が出来るだけ開くようにして適当な箱等でドライブシャフトを受けてやる。
  • インナーブーツとインナーブーツをジョイントケースに止める金属バンドとの間にマイナスドライバーの先端を突っ込んで、バンドをブーツから外し、インナーブーツをジョイントケースから引抜く。(ブーツ・バンド共、再使用しないので切ってしまっても良い。)
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  • 丁寧に外す場合には、エンジン側の横開放部に金属バンドのロック部(青矢印)を持って行き、マイナスドライバーかラジオペンチの先でロックを起こして、バンドを外す。
  • インナーブーツがジョイントケースから外れたら、ドライブシャフトをそのまま引抜く。
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  • ドライブシャフトは左写真の様に、インナー・ジョイントケ―ス側が着かない状態で外される。
  • A部がアウターブーツとアウタージョイント部、B部がインナーブーツと三叉ジョイント部である。



*インナージョイント側からの分解方法 

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  • 三叉ジョイントの3個のローラーをローラーシャフトの摺動面を傷つけないように注意し、回しながら引抜く。保管に注意。
  • ジョイント支点をとめるサークリップ/Cリング(赤矢印)を小さなマイナスドライバーで外す。
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  • ジョイント支点金具にプラーをかける。このとき、プラーの爪で傷がついてもローラー回転に支障のない位置を選ぶ。(固着していなければ傷の心配はない)
  • CRCを吹いてからゆっくりプラーを締めこんでいく。
  • ジョイント支点が外れたら、根元のサークリップ/Cリングも外す。
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  • プラーがない場合は、木角材に溝を切りジョイント支点を引掛けてドライブシャフト先端を重いプラハンマーか銅ハンマーで叩く。
  • 抜けない場合はアウタージョイント側から外したほうが早い。

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  • 左写真2枚は三叉ジョイント部が分解されたところで、各部品が矢印の様に組まれる。
  • 外した部品は古いグリースを落し、摩耗・傷などの異常をチェックする。
  • アウターブーツは、金属バンドを外して切るかドライブシャフトから引抜くかして取る。
  • 露出したアウタージョイントは組んだまま、CRC等を拭きながら古いグリースを洗い取る。
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  • 新しいグリースを150グラムアウタージョイント部に補給する。
  • 新しいアウターブーツ内面にグリースを塗り、ドライブシャフトに滑らせながら通す。
  • アウターブーツをジョイント・ケースとドライブシャフトに金属バンドで固定する。バンドを締める時、ラジオペンチの先端部でバンドを巻き取るとしっかり締めやすい。
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  • アウターブーツが固定されたら、新しいインナーブーツ内面にグリースを塗り、ドライブシャフトに滑らせながら通す。
  • ドライブシャフト先端のスプライン根元にサークリップ/Cリングを嵌める。
  • ドライブシャフトのスプライン歯部にグリースを充分につけ、ジョイント支点金具のスプライン歯部に慎重に嵌め込む。
  • ジョイント支点金具をプラハンマーで丁寧に面つらまで叩き込む。
  • 途中で堅くなり入らない場合は、木台にドライブシャフトの自重を利用して叩きつけながら入れる。
  • 最後にローラーシャフトにグリースを塗り、ローラーを回しながら嵌めた後、同様に木台に叩きつけて所定の位置にジョイント支点をセットする。
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  • ローラーを一度外し、ドライブシャフト先端にサークリップ/Cリングを取りつける。
  • ローラーシャフトにグリースを塗り、ローラーを回しながら嵌めた後、滑らかに回転しガタのないことを確認する。



*アウタージョイント側からの分解方法 

この方法は BXサイト が詳しいので、そちらを参考にして下さい。



注:写真はリペアー・マニュアルからの抜粋編集
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  • ドライブシャフト・ナットの位置(青矢)にスライドハンマーを取りつけ、ハンマー・ショックでドライブシャフトからアウタージョイント部を引抜く。(赤矢
  • スライドハンマーがない場合は、アウタージョイント基部をハンマーで叩いて外す。
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  • ブーツの交換作業自体はインナーからの交換と同じ。
  • ドライブシャフト先端に新しいサークリップ/Cリング(黄矢)をつける。
  • スプライン部にグリースをぬり、バンドの一部(青矢)でCリングを抑え、クリップバンド(赤矢)で締める。
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  • そのままドライブシャフト先端をアウタージョイント基部のスプラインに合わせてハンマーで叩き込む。
  • シャフト先端の侵入に従って、抑えバンド及びクリップバンドはズレルので、位置が決まったら外す。
  • グリースを規定量補給し、アウターブーツをバンドで固定する。



これまでの作業でドライブシャフト・ブーツの交換が終わりました。
ドライブシャフトの車体への再組み込み作業は取外し作業の逆手順で行いますが、詳しくは次の

ドライブシャフト・ブーツ交換(2)

に進んでください。


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