カトリック百合ヶ丘教会の who's who


門松政男さん まっすぐに生きてきた道・「生かされる」喜び

門松さんは今年84才。日曜日のミサ後、ホームページのインタビューということで、小さな紙にきちんと整理したメモを用意して来られた。質問に答えるときは、そのメモを見て確認する。間違いがあってはいけないのだ。きちょうめんで真面目な性格がうかがわれる。現役時代には土木技術者をされていたそうだが、一見したところ長身の小説家か大学教授のような風貌だ。小柄でバイタリティのある夫人とともに、教会のシニア元気組の筆頭といえる。

生まれたのは・・・?

1914年(大正3年)10月、栃木県足尾町に生まれた。お父さんが信仰の篤い人で、子供の頃、よくお寺の講話に連れていかれたが、政男さんにとってそれは少しも嫌ではなかったと言う。そのせいか彼は少年時代から「うそ」と「差別」に敏感だった。「がき大将が威張るのは好きじゃなかったんですねえ・・・」。

人生の試練は・・・?

戦後、土木技術者として炭坑の管理部門に移った頃が、仕事上の試練の時だった。秩序が乱れた職場の慣習は彼の倫理観にはそぐわなかったのだ。家庭でも、夫人の長期入院があり、小さい子ども二人を兄夫婦に預けて7年間の一人暮らしを余儀なくされたそうだ。
その頃は抗生物質の威力がまだ良くわからなかった時代。医者に「何年生きられますかねえ」と言われ、妻がもう余り長くないと思った政男さんは、彼女の言うことは何でも叶えたいと思ったそうだ。洗礼も許し、また長い間別々に暮らしていた子供たちとも少しでも一緒にいようと日曜日ごとに一緒に教会通いもした。40年続いたの教会とのつながりがそうやって始まった。

洗礼のきっかけは・・・?

職場では人に指示するのが当たり前だった。家でも自分の考えが一番正しいと、「オレの言うことについてこい」式の自分を通していた。それが教会へ通ううちに、自分の生き方は「傲慢」じゃないのかと思い始めた。そこで出たのが、「洗礼を受けたいから神父さんのところへいって頼んでコイ!」という夫人へのひとこと。この時を逃しては洗礼を受けるチャンスは二度とないという思いで受洗を決意した。1960年のクリスマスだった。洗礼名はバルトロメオ。素直でうその言えない、誠実な聖人の名前をいただき、「そういう人にはなれない」と後悔したという「率直な」ことば。

受洗してから後で聖書の「十戒」を知り、「その全部に自分は当てはまらない」と思ったと言う。とことん正直で、うそを自分に許さない誠実な人だ。日本的な物の考え方や気短ですぐに腹を立てる性格などあまり変わらないと言いつつも、ようやく最近聖書のみことばのこころがわかり始め、「今すばらしく生かされている」「聖書の勉強に来るのがなによりもうれしい」と語ってくれた。
3年程前、娘さんに「どうしてお父さんはお母さんにそんなに甘いの?」と聞かれ、医者に言われてもう命は長くないと勘違いして、好きなことは何でもさせようと思った、と告白。みんなで笑った。「こんなに長生きするなら少し手加減すれば良かった」。

素晴らしいご夫婦です。どうぞずーっと長生きして私たち後輩をはげまし続けて下さい。 (インタビュー98年9月20日) (小西、ラブ記)

バルトロメオ門松政男さんは、2000年9月29日、帰天されました。夫人に見守られての静かで穏やかな旅立ちでした。「神に従うひとの死は、神の前に尊い」。心よりご冥福をお祈りします。



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