第3回 聖書を読もう

聖書は世界で一番多く読まれている書物です。誰もが「聖書」という言葉を知っていますが、聖書とはどんな本で、どう読んでいくといいのか簡単にお話しします。

聖書とは神と人間についての書物です

聖書には何が書かれているでしょうか。
聖書は神が人間に与えて下さった最大の賜物の一つです。聖書は多くの国民の思想・芸術・文化・生き方に著しい影響をおよぼしています。あらゆる時代、あらゆる国の多くの人々にとって、聖書は人生の案内書ですし、心の糧となって生き甲斐をもたらすものです。
聖書とは神と人間についての書物です。聖書とは人類に対する神の救いの計画を啓示し、その歴史を記するものです。また、キリスト信者にとって、神の御言葉です。聖書の意味はこう語られています。


この書物は、キリスト・イエスへの信仰を通して救いへ導く知恵を、
あなたに与えることができます。
聖書はすべて神の霊の導きの下に書かれ、
人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。
                      (第2テモテ3章15,16)

なぜ、この書物を「聖書」いうのでしょうか。
この書物は単なる人間の著作ではなく、神の関わりによって神の霊感の下にできたのですから、「聖書」とよばれているのです。
聖書はキリスト教の正典です。正典とは聖なる書として、信仰共同体によって受容された書物の目録のことです。この正典は古代よりキリスト教の中の諸教会の中で、必ずしも同一ではありませんでした。それを統一する動きもありましたが、現在でもその多様性を残しています。正典はプロテスタントでは66巻、カトリックでは、73巻がかぞえられています。

聖書は一冊の本ですか。
聖書は単なる一冊の書物ではありません。聖書全体で、73の書物を一冊にまとめ上げたものです。旧約聖書は46の書物から、新約聖書は27の書物からなっています。一冊の本としてまとめ上げられた聖書はいろんな種類があふれています。同じ聖書ですが、たとえば注釈が多く厚い本や、とても小さく持ち運びが便利なポケット版もあります。
聖書は大きく二つに別れています。すなわち、旧約聖書と新約聖書です。旧約聖書とは主にキリスト誕生以前の(B・C)約10世紀にわたって、ユダヤ人の古代言語であるヘブライ語(一部アラム語)で書かれた文書であり、新約聖書とは主に紀元(AD)1世紀にギリシャ語で書かれた文書です。また、旧約聖書と新約聖書に用いられている「約」は、契約の意味です。契約は、相互の約束と条件を明示します。旧約というのは神とイスラエルの民族との契約であり、新約とは神と全人類との間に結ばれた契約です。

頭で読むのではなく、心で読みましょう。


どのように聖書を読んだらいいでしょうか。
聖書を開きますと、まず、本の題名が目に付きます。続いてすべての本には章と節がありますが、この分け方は後の時代によるものです。聖書の一つの文章を引用するとき、題、章、節を明示し文章を簡単に見つけることができるようになっています。このやり方は全世界共通のものです。
聖書の正しい意味を理解するには、文章の単語の意味を理解するだけでは足りません。これがどんな種類の文章かを知らなければなりません。たとえば、私たちが童話を読むとき、歴史を読むのと同じ心構えでは読みません。童話は童話、歴史は歴史、小説は小説などと、文章の種類が違えば読む心構えも違います。文章の種類によって言葉の重みと表現の仕方が違うからです。
聖書の場合も同じことです。まして、昔と現代とでは、表現の仕方が違うからです。
このことを忘れて聖書を「文字通り」に信じる人は、かえって聖書の意味を誤解してしまいます。「文字を信じる」のではなく、「聖書が教えていることを信じる」のです。
心を養う聖書の読み方について、いくつかのヒントを出します。

聖書は過去形ではなく、現在形で読まなければなりません。昔のパレスチナの出来事や人々を見るよりも、現在のこと、自分のまわりのこと、自分自身のことを見なければなりません。聖書の中の人名の代わりに自分の名前を入れればもっと効果的でしょう。聖書を読むときの心がまえとして、一番大切なことの一つは、他人ではなく私に神が話しかけていらっしゃるのを知ることです。


頭で読むのではなく、心で読まなければなりません。神の、またキリストのたくさんの教えやたとえ話をよんだり、聞いたりするとき、『ああ、これはもう知っている』『これは何度も聞いたことがある』と思ってしまうと、深く考えないで、うわべだけをすべって読んでしまう危険があります。昨日読み、また今日同じ箇所を読んでも、読む人の心の状態や環境がかっわってくるから、読む力や感動が違ってくるということがあり得ます。『聞く耳を持つものは聞くがよい』といわれるように、心の耳で聞き、心の目で読まなければならないのです。


聖書を読みながら、もし自分の心に響く聖句があれば、そこを繰り返し味わってもよいし、聖句を覚えたり、線を引いたり、聖句を別の紙に移して、家の中の目に付くところに張っておくのもよいことです。


自分の好きな聖書の言葉のノートを作りましょう。

ミサ中に三つの朗読があります。

教会では聖書をどのように読んでいますか。
カトリック教会の公のレベルでは、主日(日曜日)ミサの時に、必ず聖書より三つの朗読があります。最初は旧約聖書より、二番目は新約聖書の書簡より、3番目は福音書よりです。朗読される箇所は決まっていて、3年周期で聖書のほぼ全体を読むことができるよう、配分されています。主日には全世界のカトリック教会で聖書の同じ箇所が、それぞれの国の言葉で朗読されるのです。この後、朗読された神の言葉と私たちの日常生活を結びつける説教が行われています。
小グループのレベルでは、黙想会や家庭集会など、聖書を中心とした分かち合いと祈りの集いもあります。また、聖書研究会なども、初心者(未受洗者)向きのものからあり、その内容や方法も様々なものがあります。
個人のレベルでは、心を養うためによく聖書を読むよう、すすめられています。

参考書
キリスト教や聖書のことを余りよく知らない方には、聖書自体を読むよりは、遠藤周作・三浦綾子・曾野綾子などの作家の書いた聖書入門書から先に読んだ方がいいと思います。
参考のためにいくつかの書物を紹介します。
「私のイエス 日本人のための聖書入門」   遠藤 周作
「旧約聖書入門」              三浦 綾子
「新約聖書入門」                〃

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