第2回 教会のクリスマス

12月に入ったとたん、街はすっかりクリスマス一色になります。緑や赤の鮮やかな色彩、流れ続けるクリスマスソング・・。にぎやかなお祭り気分が盛り上がっていますが、クリスマスは元々教会の行事でした。毎年この季節、カトリック教会ではどのようにクリスマスを祝う準備をし、クリスマスについてどのような考えを持っているかを、お話しします。

クリスマスはキリストの誕生を記念する日です

カトリック教会ではクリスマスをどう考えているでしょうか。

カトリック教会で一番大きな行事は、イエス・キリストの復活を祝う復活祭です。その次がイエス・キリストの誕生を祝うクリスマスです。多くの国では日本と同じように、10月末か、11月はじめから、「X’mas セール」「X’masコンサート」「X’masツリー」「X’masパーティー」「X’masプレゼント」「X’masケーキ」「X’masカード」などの言葉をよく耳にします。けれど、このようなクリスマスはまことのクリスマスとは、直接関係しないと思います。このようなクリスマスは商業の色合いがついているように感じます。
まことのクリスマスとはイエス・キリストと関係するのです。人間となられた神の子イエス・キリストの誕生を記念し、祝うものです。聖書の中にはキリストの生年月日は書いてありません。12月25日はキリストの誕生日というより、キリストの誕生を記念して祝う日です。
クリスマス(Christ Mass)という言葉は英語で、Christ=キリスト、Mass=ミサ「キリストのミサ」という意味です。クリスマスの夜、キリストの誕生を記念し、祝うためにミサに出席する習慣から来た言葉です。

クリスマスは神から私たちへのすばらしいプレゼントです

クリスマスになぜ、プレゼントをするのでしょうか。
クリスマスにプレゼントをするのは、ずっと古くからの習慣です。なぜ、いつから、クリスマスに人々にプレゼントをするようになったのかは、私にはわかりません。聖書には、東方の博士たちがプレゼントを携えて、生まれたばかりのイエスに捧げた、と書かれています。けれど、このエピソードが、プレゼントの起源かどうかはわかりません。
私個人の考えを言いましょう。なぜ、人々は、特別なとき、たとえばお誕生日・結婚式・卒業式・めでたいとき、あるいは病気の時などにプレゼントをするのでしょうか。それは、プレゼントが心のしるしだからです。目に見えない心を目に見える形で伝えるものだからです。
よく考えてみますと、クリスマスは毎年神から私たちに与えられている、すばらしいプレゼントなのです。神の私たちへの、愛と思いやりの心のしるしです。クリスマスは、愛の時・思いやりの時・感謝の時・喜びの時なのです。神にも人々にもその気持ちを現すときです。ですから、お互いにプレゼントをするのは、とても意味深いことであり、よいことでしょう。
でも、残念なことに、お互いのプレゼントの交換に忙しく、肝心の誕生日を迎えたご本人へのプレゼントを忘れていないでしょうか。もし、イエス様にプレゼントをするとしたら何を一番お喜びになるでしょうか。

クリスマスを迎えるために教会では三つの行事があります

教会ではどのようにクリスマスを迎える準備をしますか。

クリスマスの4週間前から、教会では心の準備期間があります。それは、神の御ひとりごが、人となられた歴史的な出来事を記念し、その恵みを受けて感謝し、適当な形で祝うためです。そして、クリスマスの時に新たに世の光・心の光であるイエス・キリストを迎えるための季節です。
教会では、この季節を待降節といいます。この待降節中、待降節の心を告げる日曜のミサ以外に、三つの催しが行われています。すなわち、待降節のリース、馬小屋、キャンドルサービスです。
待降節のリースは、もみの木や松などの常葉木の枝で輪を作り、紫のリボンをつけ輪の中に四本のローソクを立て、日曜のミサごとに一本づつ火をつけてクリスマスを待ち望みます。常葉木の輪は永遠の命を象徴し、リボンの紫は悔い改める心をあらわし、ローソクは世の光・心の光であるイエス・キリストを象徴します。枝の緑は、クリスマスの時に私たちの所へこられるキリストへの希望を表すものです。
馬小屋は、イエス・キリストが、現在イスラエルのベツレヘムの馬小屋で生まれ、飼い葉桶に寝かされたということを表すものです。待降節中聖堂の中に馬小屋の模型が作られ、その中にマリア、ヨゼフと幼子イエス・キリストの像、彼らを訪問している羊飼いたち、東方の三人の博士たち、羊、牛などが置かれます。教会の祝日である主の公現(一月の第一主日)まで飾っておきます。
クリスマスの季節になると、キリスト教の教会や、施設で、クリスマスの美しい行事であるキャンドルサービスが行われます。キャンドル・サービス(candle service)という言葉は英語です。キャンドル(candle )はローソクを、サービス(service)は宗教的行事を意味します。キャンドルサービスのやり方は様々ですが、大体次のようです。まず、参加者にクリスマスの聖歌集とローソクを配った後に、会場の電気を消して暗くします。参加者は聖歌を軽くハミングしながら灯のともったローソクを持つ司式者が登場するのを待ちます。司式者は会場の真ん中に立ち、自分の周りの人々に、自分のローソクから火をともします。火を渡された人々は、それぞれの周りの人々へと火を伝えます。みんなの光で、会場はだんだん明るくなっていきます。十分に明るくなったら、みんなで聖歌を歌ったり、聖書の朗読を聞いたり、クリスマスのメッセージを聞いたりします。
ローソクは世の光・心の光であるイエス・キリストの象徴です。また、私たち一人一人の象徴でもあります。ローソクが次のローソクに灯をともすことによって、世の中(すなわち、家庭・職場・社会)を二倍明るくすると言うことは、キャンドル・サービスの一つのメッセージです。

皆様が、意味深く恵み深いクリスマスをお迎えになられるよう、お祈りいたします。
クリスマス、おめでとうございます。

参考図書 「クリスマス小事典」(現代教養文庫)

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