04.03.01
女性アルバイト手品師




友人と新宿ぶらついていた。
おもちゃ屋通りかかったら、エスカレーターのまえに立ち机出して、マジックしてる若い女性が。
マジック商品を売っている訳だが、小柄で丸顔でちょっと可愛いけどちょっと芋くさい「女性」ということと、手つきのたどたどしさから、
違和感を覚えて立ち止まり、友人と一緒に見学。

下手ではない。だが、見ていて盛り上がらない。
一連の流れがぎこちないのかもしれない。
ふと、友人が口を開いた。「あなた、この商品の会社の人ですか?」
「はい。いや、えと、アルバイトです。この会社の」女性が答えた。
「歩合制なんですか、つまり、売ってなんぼのアルバイト代ですか?」
「えと、はい、そうです。こういうのはあまり売れないので、キビシイです」

女性マジシャンを哀れに思ったのか本当に興味があったのか、友人はなんと「お札にぶっさしボイールペン」を購入。
喜ぶ彼女は、そのトリックを責任もって教えてくれると言った。
「ちょっと待ってて下さい」と消える彼女。
ややあって戻り、「今なら大丈夫です」と親指を立てる。
なんのことやらとついて行くと、それはおもちゃ屋の「マジックグッズコーナー」。
友人は「あれ? こんな立派なコーナーがあるなら、エスカレーター前なんかに出張らなくても良いじゃないですか」
すると彼女は声を低くして答えた。
「ここは、社員さんの持ち場なんです。本当は、下っ端の私が入っちゃいけないところなんです。でも、昼ご飯って言って二時間も帰ってきてないし。もし今帰ってきても、お客さん相手だったって言えば、言い訳になるし」

あまりの哀れさに私もマジックスカーフを衝動買いしそうになったが、やめといた。
マジシャン故に、どこからどこまで本当なんだかわかんない。
そういう意味でも、素晴らしいのは友人の肝とノリの良さ。





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