狂牛病と甘酒

 BSE(狂牛病)に鳥インフルエンザ、発がん性食品添加物、最近話題となっているテレビ番組『発掘!あるある大事典』のデータ捏造問題や不二家の期限切れ原料使用問題など、食にかかわる問題点が多く取りざたされるようになり、「食の安全」ということが叫ばれるようになってきました。日本ではこのあたりをどのように対処しているのか調べてみました。

 「経済社会の発展に伴い国民の食生活が豊かになる一方、我が国の食生活を取り巻く環境は近年大きく変化し、国民の食に対する関心が高まってきています。

 こうした情勢の変化に的確に対応するため、食品安全基本法が制定され、これに基づいて新たな食品安全行政を展開していくことになり、これにともない、食品安全委員会が平成十五年七月一日に、新たに内閣府に設置されました。

 食品安全委員会は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行う機関です。(以下略)」

 リスク評価としては、@添加物(食品衛生法)A農薬(食品衛生法、農薬取締法、水道法)B動物用医薬品(食品衛生法、薬事法)C化学物質・汚染物質(食品衛生法、ダイオキシン類対策特別措置法、水道法等)D器具・容器包装(食品衛生法)E微生物・ウイルス(食品衛生法、と畜場法)Fプリオン・自然毒(食品衛生法、家畜伝染病予防法、と畜場法、牛海綿状脳症対策特別措置法)G新食品等(食品衛生法、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)H飼料・肥料等(食品衛生法、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律、肥料取締法等)Iその他 …とあります。

 ただ、このような食品安全委員会が政府機関にあったとしても、例えば、遺伝子組換え食品が本当に安全か否かの適切な評価がなされるかどうかに、一抹の不安を抱いているのは、多分私だけではないと思います。

 とはいえ、何が何でも自然食品、安全食品でなければ納得できないというのも考えものであります。こんな話があります。

 ある高僧がご自分の小学生時代の思い出を話されました。

 彼は父親の住職の代わりに檀家の三七日のお経をあげに行かされた。

 仏壇に向かって、小学生が一所懸命にお経をあげていた。隣の部屋には、たぶんお経が終わったあとの接待であろう、お膳が用意されていた。家の人は誰もいない。

 そこに赤ん坊が這って出てくる。

 赤ん坊はお膳の横にあるおひつからしゃもじを取り出し、それでもって遊びはじめた。しゃもじでおひつの中をかきまわしていたのだ。

 しばらくして、赤ん坊はしゃもじを畳の上に投げ捨て、そのしゃもじの上に「しゃあー」とおしっこをした。そしてそのあと、またそのしゃもじでもっておひつの中をかきまわしている。

 小学生のお坊さんは、お経をあげながら横目でそれを見ていた。

 お経が終わったあと、お婆さんが出てきて、ご馳走を用意してあるから食べていってくれ、と言う。しかし、小学生は、いやきょうは腹をこわしているので……と、ほうほうの態で逃げて帰った。

 その七日後――。

 小学生はまたしても父親の住職から、同じ檀家の四七日の法要に行かされた。しかし、こんどは何事もなかった。

 無事にお経が終わったあと、お婆さんが出てくる。お婆さんは、きょうは甘酒が用意してある、どうか飲んでくれとすすめる。

 小学生は甘酒が大好物である。彼は喜んで甘酒をいただき、三杯もおかわりをした。

 そのあと、お婆さんがこう言った――。

 「いや、よかった。先週はあなたが何も食べてくれないので、ごはんが余ってしまった。それで、そのごはんで、きょうは甘酒をつくりました。」

 たぶん、小学生は、食べたものをもどししたくなったのではなかろうか。

 「しかしですな、頂戴せんならんものは、どうしたって頂戴するようにできていますな……。」

 高僧はそのような感想を語られたそうです。

 なるほど、避けては通れない巡り合わせというものはあるようです。食だけに限らず、何事も大らかに構えていたほうが良いようです。

(2007/2/18)