第80回 2月19日放送
「突風平野 風車よ闘え!」
〜執念がエネルギーを生んだ〜
 昭和58年、空前の大ヒットとなった連続ドラマ「おしん」。豪雪が貧困をもらたした山形の中で、さらなる苦しみを背負った町がある。山形県立川町。最上川から吹き付ける強烈な風と格闘を続けてきた。

 奥羽山脈から庄内平野に吹き下ろす「清川だし」、日本三大悪風と言われる。 4日に一度、風速10m以上の風が吹き、春は早苗を押し流し、秋は稲穂をなぎ倒した。「立川だけには嫁に出すな」近隣の市町村には嫌な噂があった。

 「風を逆手にとって農業に生かそう」
昭和55年、役場の企画課に風プロジェクトが発足。風力発電を行い、そのエネルギーで温室栽培を行い、余った電力を電力会社に売るという日本初の試みが始まった。
早速、小型風車を購入。温室で山菜が実り始めた。
町で最も貧しい農家、長南一美。「この風が生活を変えてくれる」と期待した。
しかし、間もなく小型風車は「清川だし」に吹き飛ばされた。
 その翌年、科学技術庁から風力発電のモデル地区に選ばれた。国から委託された新型風車で、養豚場のヒーターが回った。
「今度こそ」農家の長南は温室をたて、野菜や花の苗を育て、実用化に備えた。
しかし5年後、新型風車も地吹雪に叩き落とされた。

 昭和63年、3度目のチャンスが訪れた。「ふるさと創生一億円」。これを資金に「清川だし」に負けない本格的な風力発電に取り組んだ。しかし、メーカーが出した見積もりは12億円。海外から輸入しようにも前例が無く、国の許可は下りなかった。
しかし企画課の職員は諦めなかった。担当官の前に座り込み、粘り強く交渉を続けた。 農家の長南一美は子供達のために絵本を作った。「子や孫に誇れる町にしよう」と反対する農家を説得した。
そして平成3年、アメリカから巨大風車3機を輸入した。
「清川だし」を見事に受け止め、勢いよく回り始めた。

 現在、イチゴの温室栽培を始め、電力会社への売り上げが年間8千万円に上る立川町。苦しめられた風を、希望の風に変えた住民達の執念の物語を描く。