21世紀

ケアマネジャーに聴く

「こうすれば良くなる介護保険」

 

介護保険が始まりそろそろ1年を迎えようとしている。さまざまな点で実験的といえるこの制度も漸く落ち着きを取り戻してきているかに見える。その一方で新たな問題も浮き彫りになってきた。実際現場で今何が起こっているのか、また、介護保険でキイといわれるケアマネジャーはどう考えているのか、その声をまとめてみた。

榎本孝代さん

幸手市在宅介護支援センター

 

市内中心部の堀中病院に併設された老人保健施設「幸手ナーシングホーム」の中に榎本さんはいらっしゃいました。目下たったひとりのケアマネジャーとして奮闘中。開口一番「ケアマネはコンピュターが使えないとだめですね。」と話す榎本さんは昭和44年からずっとこの病院を振り出しに働いているそうです。社会福祉士の資格は在宅介護支援センターができるときに取られたとのこと。

今感じていることは「住宅改造やショートステイの振り替え、福祉用具などについて、苦労の多いわりに見返りがない。自分の給料くらい何とかしたいと思うのにそれもままならない」と介護報酬の低さを指摘。「それに低所得者に対する施策の遅れや、幸手には40、50歳台のリハビリ施設がないんです。訪問リハビリもありません。」とサービスがありながらお金がなくて使えない一方で、利用したいがサービス地域にない現状をもどかしそうに話していました。こうすればの問いに「低所得者にもっと助成を!」。日々利用者と接している第一線の実感のこもった言葉でした。

 

丸山広子さん

久喜市社会福祉協議会

 

丸山さんと会えることができたのは夕方7時過ぎ。「もうこれでもすごく早いほうなんです。ヘルパーさんたちの話を聞いていたらついつい長くなってしまって。」丸山さんは、今年度から、基幹型在宅介護支援センター、訪問介護、居宅介護支援の3つを同時に開始した久喜市社会福祉協議会の主任です。ケアマネジャーとして働きながらも、ヘルパーさんたちの悩み事にも耳を傾けます。また、利用者からの苦情も受け付けます。「ケアプランを作るためには、いろんな機関とケース会議を開きたいのですがその時間もほとんど作れません。それに、事務処理もとても時間がかかります。」毎月の請求事務もかなり膨大になるようです。その間にケアマネの仕事をしているといった状態とのこと。「事務については、やはり、役割分担が必要。専門性を生かし効率よくやっていくために、そういった方向でできるように検討中です。」とも。

 

阿部喜代子さん

白岡町社会福祉協議会

 

阿部さんは、今年度より開所となった社会福祉協議会に委託された介護支援センターに所属し、ケアマネジャーと兼務する業務をされています。お忙しい中、時間をさいてくださり、いろいろなお話をしてくださいました。

ケアマネをやってみて感じること

例えば、お腹のすいている人にパンを与えることによって、その人はお腹を満たし満腹感は得られるでしょう。しかし、ひとつのパンを分け合って食べれば、本当は足りず満腹感はなくとも、満足感は得られるかもしれません。人の生活とはそういうものなのではないかと思っています。

今の介護保険の中には、利用者の話をゆっくりと傾聴し共感する時間がなく、またそのものに対する評価もありません。心を支える部分が介護保険にはないのです。ケアマネジャーとしての任務は重く、もちろんないがしろにはできませんが、人の生活への支援は、一連の流れの中で完結できないものだと思っています。ケアマネージメントは、「サービス」という「もの」の管理だけではないはずです。人への援助は、お金には合わせられない面があるのではないでしょうか。

今後の展望

今の介護保険はまだ完成されたものではないと思っています。まだ始まったばかりですし、欠陥があって当たり前なのかもしれません。私たちソ−シャルワーカーが、問題を整理し提言していく役割を担っていくべきだと考えています。「その人らしさを取り戻し自然回復力を支える」これはソーシャルワーカーにしかできない仕事だと思います。

阿部さんは「欠けていて望まれているサービスとは何か」を考え、ご自分の研究テーマとしているそうです。阿部さんと同じように感じ、共に考えてくださる方からの連絡をお待ちしていますとのことでした。