福祉と社会保険労務士

 

随想

社会福祉士社会保険労務士吉村事務所 吉村 晃一 

 

私は知的障害者の入所更生施設で十数年の勤務後、現在は社会保険労務士業を営んでいます。福祉に関係しないのでは、と思われる方もいらっしゃると思いますが、実は社会保険労務士は非常に近接し、関係している仕事です。以下その関係の一部について記述させていただきます。

障害者・高齢者の関係では、年金、保険の業務があります。先日、他の人から聞いたのですが、ある身体障害者の方が20歳の時に、福祉の相談機関に相談に行ったとのことで、その時年金の話がなかったのでそのままにしてしまい、その後27歳の時に年金のことを知り、初めて手続きに行ったとのことで、結局年金は5年遡れるので(給付の時効は5年)22歳からの年金を受けることができたが、2年間分損をしてしまったとのことです。これはほんの一例ですが、年金に関しては制度が複雑ゆえ失敗しているケースが多いようです。このような方が出ないよう障害者・高齢者の経済的援助の一助となればと思います。

社会保険労務士は、通所事業所の顧問として労働保険、社会保険などの諸手続、人事・労務管理(就業規則の作成、賃金制度の設計導入、解雇退職問題の対応等)の経営労務管理全般の相談、指導などの業務遂行しています。事業所の中には障害者を雇用している所がありますが、障害者の就労について障害者の個々の障害や障害者であるということの意味を理解されておらず、障害者の権利擁護の問題や、ごく微細な日常の諸問題が時々起きています。このような問題に対し私自身、社会福祉士として福祉の立場からできるだけ障害の内容や障害者との接し方など説明し事業主や従業員の方に理解していただくよう心掛けていきたいと考えております。

施設の関係で申しますと、現在基礎構造改革が進められようとしていますが、施設の運営管理も収入支出会計から損益会計に変わり、賃金制度の変更など職員の労務管理なども問題になっていくと考えられます。この問題に関係してくるのが社会保険労務士ではないかと思います。

一般市民の啓蒙という点では、数日前ある市民講座で国民年金の話をしたのですが、年金に加えて福祉の話をしたところ、好評だったようです。先行き不安な時代ゆえ、生活に密着した社会保障に興味を持たれているようでした。
現在、介護保険を皮切りに従来の措置型から契約型に変化し、経済効率性を追求する民間企業が参入するなど福祉の大きな転換期です。今後社会福祉の理念が問われ、社会福祉士の存在がますます重要になると思います。私自身、社会福祉士会の介護保険制度委員会や成年後見制度委員会(予定)に参加させていただいており、福祉と民間企業のハザマにいるようなものですが、今後も福祉の理念を大切に、福祉に何らかの形で一生係わっていきたいと考えております。

なお、私で分かることがありましたらご相談いただければ幸いです。