Songs  山下由



唄を唄ってきた


歌を歌ってきた
もう長いことずっと
歌を歌ってきた
子供の頃からずっと
口には貝

歌を歌ってきた
思い出すより速く
歌を歌ってきた
夕日が昇る時に
ただ心が歌うように

歌を歌ってきた
川のそばや崖で
山を一人で歩く時も
恋人の海にいる時も
耳に見える愛を信じて

歌を歌ってきた
けど 今日はもうおやすみ
あなたの折りたたんだ耳が
また空に囁く日まで
どこかで歌を歌ってる


12 October 2001

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Miss. Nirvana


銀河の果ての凍った家
羊たちが歩く雲の上
見たことも聞いたこともない街角で
出会う 青い青いエベレスト
Miss. Nirvana

宇宙飛行士たちの故郷で
小鳥は手のひらに眠ってる
懐かしい懐かしい海を
ジュゴンの群れが泳いでいく
Miss. Nirvana

未来の森を裸足で歩く
泉から聞こえてくる肉のドラム
エメラルドの天使が歌ってる
ひざに大きな猫をのせて
Miss. Nirvana

イルカが僕たちに午後を告げ
青い地球の海岸で眼を覚ます
夢が僕たちに会いに来る
羽と未来の船を持って
Miss. Nirvana

Miss. Nirvana


28 September 1993

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いくらでも愛してる


ゴールド・ラッシュの街なみを過ぎて
飲むのはロイヤル・ストレート
ドラゴンも麒麟も現れて
すべての指が美しい
地球でも
いくらでも愛してる

右眼からは朝日が登る
左の眼には月が行き
欲望も自然もみんなあげる
皮膚の船の高鳴る波の
海でも
いくらでも愛してる

黄色い砂の上に眠れ
大地に甘えて星をもらえ
君の名前の狼に乗って
黒い黒い森の中へ
銀河も
いくらでも愛してる

ウイルスの海の航海は続く
船には五族協和の旗
王道楽土の都に着いて
鸚鵡と語る勝利の胸の
破滅でも
いくらでも愛してる


21 March 1994


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僕のライオンを呼んでくれ


飛行機に羽をあげたい気分
天使に金をくばってさ
ダイヤの風呂にも入ろうよ
僕のライオンを呼んでくれ

地球に休みをあげたい気分
銀河に海を作ってさ
太陽を船に乗せようよ
僕のライオンを呼んでくれ

坊主を100人 呼んでくれ
牧師を1000人 呼んでくれ
それから電話を貸してくれ
僕のライオンを呼んでくれ

僕のライオンを呼んでくれ


18 February 1992

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青いんです


春と春のすきまにはさまれて
アルバムは虹色です
彼女は風のようです

僕はどこかにいて
君が帰るのを待ってます
いつかの防波堤で

おのおのがたよ 橋を渡って
灼けた工場の屋根で
月を見てます

青いんです 
珊瑚の名前の海に
燕が手紙を書いています


13 May 2001

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Black Muse


世界を美しい魚が泳いでる
泳いでも泳いでも美しい魚
緑猿は葉巻を巻いてる
眼には涙をいっぱい溜めて

男たちは世界地図を広げ
社会の健康を語る
Black Museは夜
岩と山々の手当てをしてる

Black Museは熱帯のジャングルの中
煙の中に立っている
そして夢について語り始めた

激しい雨の中で
呪術師は橋の上に立ち
最後の村人が消えていく
誰もいない都会の中へ

美しい幻が歩いてる
ひとつの家から家へ
女が門の中へ入ってく
燃えているエデンの中へ

Black Museは熱帯のジャングルの中
煙の中に立っている
そして夢について語り始めた

世界を美しい魚が泳いでる
泳いでも泳いでも美しい魚

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京都を通り過ぎる


ニューヨークを分けてあげる
あの娘の橋も
ずっと今も蜻蛉が
川の上を翔んでる
京都を通り過ぎる

どっかで僕の雨が降る
ロブスターも海に濡れて
ためいきのない街へ
空のような頭脳へ
寄っていきなはれ

ああ 今も心臓は
僕を撃つのさ
あの娘の髭だって
機嫌がいいのさ だから
京都を通り過ぎる

夢をカモシカが駆けていく
サナートクマラが手を振って
真昼の暗い森で
君に会いたい
京都を通り過ぎる


29 November 2000

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足りないものがあるだけだ


みんなが川を見ていて
うっとりとしている
ここから町も
心もよく見えた
どうぞ こわいものはない
足りないものがあるだけだ

わたしはたずねたけど
場所がわからない
そのうち雨が降って
あなたはあきらめる
どうぞ こわいものはない
足りない場所があるだけだ

あそこで腰をおろして
あそこで歌った
カワセミが弾のように
もといた場所へ帰る
どうぞ こわいものはない
足りないものがあるだけだ

人を埋めるように
土をかぶせなければ
でも おやすみを言う前に
あなたは眠ってしまう
どうぞ こわいものはない
足りないものがあるだけだ


9 November, 2000

*2001年5月現在、八坂川の蛇行部はごく一部を残して、埋立てが終わろうとしている。

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Beach Dog Bound


夜通し起きていてブルースの匂いを嗅いでいた
夜通し起きていてブルースの匂いを嗅いでいた
たしかずっと起きていて

ぐっとくる夜明けを見てる
ぐっとくるよな夜明けを見てる
犬の仲間も走るような

夜通し起きていてブルースの匂いを嗅いでいた
夜通し起きていてブルースの匂いを嗅いでいた
たしかずっと起きていて

頭に泥棒が入ったら
あんたはふとんを跳ねのけな
で 新しい自分を探す

海の向こうでブルースが
俺の舟を探してる
ギターの木が生えてる島で


9 May 2001

*橘高さんとのライブを楽しみにしてる。

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ジュース工場の裏で


カワセミがいて
カワウがいて
俺の帽子は頭のうえ
川が俺を見てるので
優しくなれた

海へ誘うよ
あの娘の舟
あの娘の水色の歌声
川が俺を見てるので
優しくなれた

地球は生まれ
夜は来た
夢の言葉があふれる
川が俺を見てるので
優しくなれた

君が俺のそばにいて
優しくなれた


May 7, 2001

*八坂川の歌

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Baby Woman


頭をソーダで割り過ぎた
リキュールは2km先を歩いて
Baby Woman
空の水色を恋人にして

ときめくサボテンの言葉
可愛い犬の嵐
Baby Woman
広がりつづける

恋に気づかなきゃ
それは天使のジョーク
Baby Woman
日傘をさしてる

美しい野薔薇
美しい音楽
Baby Woman
そこへ行こうよ


24 March 2001

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パピルスパルプ・ワールド


昔 葦原に住んでいた
恋人は木の舟で
葦をかきわけて訪ねてくる
屋根をごらん 窓をごらん
パピルスパルプ・ワールド

チグリスとユーフラテスのほとり
恋人は歌い手で
この星の守護者だった
手紙を書いた
パピルスの葉に

歌の魂が川面をとんでいる
蜻蛉やカワセミのように

豊葦原の瑞穂の国 秋津島
私はあなたたちの子供
記憶の中の夕焼けに還る
ただの子供
パピルスパルプ・ワールド


11 December 2000

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Boy Moon


俺達はカニの
そのまたカニで
旅行に吹く風を拾っている
Baby Suu
太陽を見よう
笑おう

愛をいっぱい
持っているよ
破れたラブレターもね
Boy Moon
心臓を
追いかける

君は金色の夕焼け
僕はその海に
沈むワインだ
Madam A
船だ
奇跡だ

砂漠で生まれ
街で逢うかも
恋のような人かも
Baby Moon
生きろ
奇跡だ


24 March 2001

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イカルが怒る


緋色の絨毯の形成
洞窟の探索のサンタクロース
僕は今 肉を基地に下ろし
透明な夕焼けを見ている
でも イカルが怒る

ソロモンの遠くの雨
カンガルーに殴られ
少し考え得る
影を膝に置くのだと
イカルが怒る時

レントゲンを証明できる
あのアリババはコースターではない
では二等辺三角形が
月に話しかけるように
斑鳩のはずれを歩く

こんがらがった青い電話
紫色の靴
ママがいつも隠している公園で
レジスターつまりレジスタンスを拾う
イカルが鳴いている


7 December 2000


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猫400号


君を思い出すことができなくて
誰も許すことができない
悲しみの浜辺 月の浦で
君を待ってた
猫400号といっしょに

海の涙も夢もない
もう誰も訪ねて来ないだろう
暗い漁師小屋の暗闇の中で
風の音を聞いてた
猫400号といっしょに

貝殻をひとつ拾った
錆びた色の二枚貝をひとつ
ゆっくりと握りつぶした
あの恋路島を見ながら
猫400号のとなりで

おかしなサーカスの町を
ピエロのパレードが行く
誰かが車に巻き込まれるのを
僕は見た 君は見た
猫400号といっしょに

猫400号といっしょに

*猫400号は、水俣病の動物実験で初めて発病が確認された猫。オスだったのか、メスだったのか。

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