Songs  山下由


エビに急用


タイやヒラメにも意見はある
どんな洞窟にも昆虫はいる
履きかけた靴の靴紐は結ぼう
でも俺は大変なんだ
すぐに行かなきゃいけないんだ
エビに急用 エビに急用
エビに急用ができたんだよ

となりの姉ちゃんがラッパを吹いてる
イルカたちの肩もキラキラまぶしい
ピーナッツは袋にパンパンだ
でもそれどころの騒ぎじゃないんだ
10トントラックで行かなくちゃ
だって エビに急用 エビに急用
エビに急用ができたんだよ

未来の花嫁が煙を出してる
ロボットの母親のうなじも青い
ブルースェードシューズもピンク色なのさ
そうだよ兄弟 分かるだろう
オリエント急行に乗らなきゃね
エビに急用 エビに急用
エビに急用ができたんだよ

マッチ箱のマッチは一睡もできない
楊枝立ての楊枝にも用事が待ってる
カーブを曲がろうとしてる奴がいる
カーブは何にもしてないのに
であえ! 者共! スエットスーツだ
エビに急用 エビに急用
エビに急用ができたんだよ

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夢の女


淋しい夜明け
銀の歌声
波の涙
夢の女

船の男
忘れた島
椿の花
夢の女

鳥は鳴く
空への愛
僕の雨
夢の女

銀の櫂
海の涙
君の歌声
夢の女


28 October 2009

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Country Song (Tears in America)


いつここに帰って来るのかと
君のことを思っている
青空はあまりにも淋しい
僕の名前を呼ぶと 君が呼ぶ
帰って来てねと

鏡の中を歩いているように淋しい
君がいないから淋しくて
酒の船に乗って出かけた
煙草の大陸とコロンブスの島へ
君を探して

僕の頭脳をうまく絵に描けたら
また君の膝枕で眠りたい
鳥たちが歌っているよ
五月はそこまで来ている
君の笑顔と一緒に

いつかそこに帰る
草むらの歌の中に
青空はあまりにもまぶしい
僕の名前を呼ぶと 君が呼ぶ
帰って来てねと


16 November 2008

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OLD CROW BOUND


泉に湧いている肉の音
岸に打ち寄せるガラスの波
今夜やって来たのは 私の彼女
OLD CROW BOUND

埃をかぶった路傍の花
太陽が暮らす砂の中の笑顔
瓶の底に残った1mmの酒
OLD CROW BOUND

階段で待っているスペードのA
男になるための長い道
彼女が持っている甘い鍵
OLD CROW BOUND

青い海をゆく黒い船
森の男が君を呼ぶ
今夜やって来たのは 私の彼女
OLD CROW BOUND

天使は立ち上がり神を見た
大いなる古い神を見た
地球を踏んだ二本の足
OLD CROW BOUND


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海のマリア


太陽が船を運んでいく
すべてが新しく生まれている
ゴルゴダの丘の風の中で
君の心臓の音を抱いている
海のマリア

彼女は裸足でしゃべっている
小鳥たちと草と花
時間が泉からあふれて
聖書が濡れているよ
海のマリア

火星と金星のあいだの
僕らが生まれた星
僕らがキスをするところ
笑顔が生まれた星に住む
海のマリア

運命のように歌う道
血のように明ける朝
もう狼は淋しくない
そして君は
海のマリア

青い青い青い夢
いつか夢は帰ってきて 
口笛を吹く
それは地球という星の歌
海のマリア


3 March 2007

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BORN TO THE WIN


波の音が聞こえる丘の上で
昨日からずっとキリストを待っている
凍えついた狼のように
自分の血に飢えながら

蛇を見かけたら きっと話かけるだろう
世界の終わりを追いかけて海へ出る
赤い時計が野原に咲いて
透明なウサギたちが走っていく

耳の螺旋の中の金色の階段
ステンドグラスを食べる羊たち
優しく獰猛な恋人たちよ
雨は降り始めたばかりだよ

カーステレオから賛美歌が聞こえる
心臓の中で眠っている子犬に
インクのにじんだ手紙が届く
雷鳴とワインと同時に

ひとかけらのパンの中に住む
幸福という家に住む
キリストは裸足で出て行った
人の子を探しに


29 January 2007

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彼のギター


アスリンダンの香がする
滅びてしまった都市の血の匂い
埃を被った聖像の
首の匂いを覚えている
彼のギターの丘の上

泣き暮らしている彼に
水の手紙を送った
帰ってこない言葉と
波に消える涙の舟
彼のギター

夕暮れの葦原で道に迷う
川はとつとつとしゃべっている
悲しくない昨日へ帰るわ
どこにもないものを持って
彼のギターと


7 February 2007

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神社へ行こう


彼女をトラックにいっぱい積んで
オールド・スモーキーから中国山地へ
いくら俺たちが狂っていても
誰も愛してくれない時は
空のイーグルを見るしかないぜ

彼女をトラックにいっぱい積んで
吉野や熊野の山の中へ
頭を森でいっぱいにしよう
頭を緑でいっぱいにしよう
三三七拍子 三三七拍子

彼女をトラックにいっぱい積んで
シベリア大陸から本四連絡橋へ
マカデミア・ナッツが不足してる
プレーリー・ドッグから便りがない
Oh! Lord!! おお 神様 便りがないよ

彼女をトラックにいっぱい積んで
聖書をトラックにいっぱい積んで
精子を袋にいっぱい詰めて
断食もやった クスリももちろんやった
ハイになれピーター 神社へ行こう

ハイになれピーター 神社へ行こう

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結婚のブルース(Marriage Blues) 


なぜだか世の中はいいことばかり
出会う人もいい人ばかり
なぜなら結婚しましたので

なんでこんなに素敵なことを
君らは避けて通るのか
全く僕には分からない

憂鬱を楽しむ時間がない
溜息をつく暇もない
なぜなら結婚しましたので

冗談という神様が
今夜も耕す畑には
真実という名の王様が

君の畑を耕して
君の畑に種撒いて
君の樹からは実が落ちて

なぜだか結婚してからは
嘘をつけない幸せばかり
それが誰か(神様)の憂鬱のよう


9 January 2005

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ジャンバラヤのブルース


虹色の蛇が宝石をジャラジャラ言わせ
ここらでは俺は休みになった
ジャンバラヤのブルース
彼女が磨いている窓の右側で
手を握ろうと立っているのさ

あちこちの汽車が走る
行方不明になったのは昔のこと
今は自分の足音がよく聞こえる
それはブギより軽い
ジャンバラヤのブルース

燃えている街を花嫁が訪れる
親戚も信者もみんな死んだ
残酷さは蛇の指輪をくぐり
死海の上に虹をかけた
ジャンバラヤの湯気の上に

バイバイ ジョー また逢おう
俺には分けてあげられるものがない
黒い髪と白い喪服の聖歌
卵が割れたような祈り
ジャンバラヤのブルース

グッドバイ ジョー また逢おう
サボテンをギターに仕立てて
ヨーデルで呼び合おう
作り変えられていない砂の家で
帽子の中に頭を入れよう


2 August 2006

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That's a Door


雪の帽子 歌う
冬また来るよ
That's a door, say yes
That's a door, say yes

まどろみ歌う
春 眠ろうよ
That's a door, say yes
That's a door, say yes

人魚の指 誘う
海 泳ごうよ
That's a door, say yes
That's a door, say yes

枯葉降る 歌う
秋また来るよ
That's a door, say yes
That's a door, say yes

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Wing Man


兄弟は赤茶けた街角で                      
なにかブルースを歌っている
陽気な陽気なセールスマンが
大きなスイカを売りに来る
Wing man! Wink at me
Some luck are waitin' for you

豚が坂道を転げ落ちてく
ゆっくりと目を閉じて楽しそうに
鼻の穴がかゆい日は
花壇の手入れをしてるのよ
Wing man! Wink at me
Some luck are waitin' for you

今日は休んで 機関銃の手入れ
明日 朝8時に銀行を襲う
12時5分に待ち合わせ
映画に行って 食事に行って
Wing man! Wink at me
Some luck are waitin' for you

タンポポの種のように飛んでくぜ
ヌード・グラビアのような朝
太陽はとてもとても赤く
いつまでもインディアンでいたいもんさ
Wing man! Wink at me
Some luck are waitin' for you

Wing man! Wink at me
Some luck are waitin' for you

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People Get Ready 2006


煙草を吸い終わって
野原を見る
黙り込んだ水平線が
狼へと続いている
準備はできた
恐くはないよ

女に出会った
君こそ イブが
食べなかった果実
私を種として
思い残すことは
何もない

神の愛が朝
新聞受けに届いている
私は目を通さずに
心を連れて海へゆく
二人の子供と
時間を抱いて

準備はできた
怖れはないよ
思い残すことは
何もない
神の御手に
私は生まれた


January 9, 2006

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Old old Black Joe


オールド・ジョーが今夜も嘆く
失われた世界を
壊れた優しさ
床に転がる人形の首を
哀れなオールド・ジョー

オールド・ブラック・ジョーが嘆く
埃をかぶっていないアザミを
氷の中で自殺している水を
失われたレコードの福音を
哀れなオールド・ジョー

哀れなジョーの真昼
カフェで死んだ亀のように
あんたを待つ
幽霊よりも辛抱強い
哀れなオールド・ジョー

政治的であるための政治
社会的であるための社会
自分的であるための自分
音楽的であるための音楽
芸術的であるための芸術

嫌悪も安らぎもない
ただ鉛のように泥の底に沈む
あんたともう会うこともないだろう
今日の飯を食うだけだ
オールド・ジョー

昔 ここに生きていた
昔 ここに生きていた
昔 ここに生きていた
昔 ここに生きていた
哀れなオールド・ジョー

殴り合って生きていた
哀れな哀れなオールド・ジョー

哀れな年老いたブラック・ジョー

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Wild Mountain Boogie


接吻が必要ないという奴らがいる
自動車に詰め込んだ知識で海を渡ろうとする奴らもいる
芋を引いて これは豚だと言い張る奴もいる
まったく俺には縁のないことだよ
Wild Mountain Boogie

鯱ばった印鑑で書類を整理してる奴がいる
ミイラのように汚れたキーボードを一晩中愛撫する奴
ライオンの足元に転がったスフィンクスの首を手入れする奴
ごくろうなこった
Wild Mountain Boogie

失われた顔にブローチを縫いつけてる男
墓場までのハイウェイをごまかしながら渡る
鏡の中で粉々になった頭脳のかけらで両の手の平はいっぱいだ
優しくする価値なんぞあるもんかい
Wild Mountain Boogie

俺にはピンクのキャデラックがある
国産車なんぞ ごめんだ
俺の頭にはNASAの払い下げの冷凍庫がぎっしりと詰まってる
つまり誰ともうまくやれっこないってことよ
Wild Mountain Boogie

俺にはマングローブのチーフの泥だらけの娘がいる
俺の銀行の口座には国家の没落を待ち侘びるマチカネワニの群れ
親父からもらった金歯の中のゴールドのCD
くたばる時に俺を思い出せよ
Wild Mountain Boogie


5 November 2005


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アル中と歩いていた


丘のしっぽではエンデミックな蛇が
朝日を破壊しながら龍になって昇っていく
変わらないものは変わらないぞ
川はもとのようでしかない
アル中と歩いていた

今でも歌を書くのは
あの親父のポンプの洪水のメロディにのせて
でもいつか全ての舟を失い
空からもう一度 引き出すしかない
アル中と歩いていた

このメンフィス・ブルースに
彼女は金を貸してくれないだろう
生まれなかった詩が屋根裏で暴れ
鮫の腹を裂くだろう
アル中と歩いていた

誰にも道を譲らないだろう
頑固で嘘つきな俺は
天使の羽根の粉で道を作り
殺せるものを殺さない
アル中と歩いていた

ああ 酒はあけられ 灰皿は山盛りであふれた
手紙を書くのはまっぴらごめん
死者に分ける花はない
生者が着る肉もない
アル中と歩いていた


May 6, 2005

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Hey! Bluesman!


Hey! Bluesman!
どこへ行くんだ
そんな機関銃のすべり台を持って
サボテンの生えてる頭まで行く

Hey! Bluesman!
どこへ行くんだ
歯形の刺繍のシャツをくれ
母親の店で売ってらあ

Hey! Bluesman!
どこへ行くんだ
あの娘のデルタをめざしてる
ミシシッピーより深い河

Hey! Bluesman!
なにが欲しい
タバコを消化する薬
天国で着るパジャマ(寝巻)

Hey! Bluesman!
この世では
どんなものにも名前がある
どんな奇妙な果実にも

Hey! Bluesman!
なにをするんだ
Bluesの数を数えてる
1で始まって1で終わる

Hey! Bluesman!
どこへ消える
夜道の真ん中 歩いてる
月に歌うのも お日様の唄


3 March 1996


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卵かけごはんの歌


それはずっと昔
心臓の音がよく聞こえ
星はずっと若かった
物干し台にすわっていたよ
卵かけごはんの歌を聞きながら

海苔は缶の中にある
ふりかけは三色に
ほら鶏が歩いて来る
胸をあんなにふくらませて
卵かけごはんの歌を歌いながら

夜も夜中
おなかがすいて
冷蔵庫には何もなく
不器用な姉ちゃんが歌ってくれた
卵かけごはんの歌を


22 January 1996

*横山やすしに捧ぐ.


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GHOSTS OF WAR


共和国大統領が挨拶している
新しく定められた国境に感謝して
鳥たちは巣へ帰り
空の広がりや地中の虫を思うだろう

廃墟の後に平和が来るという
死んでいった人間の未来は還らないのに
政治家が支配しているのさ
あんたも政治家を目指すべきなんだ

俺たちは戦争の亡霊
ヤンキーな戦争の亡霊
進化の途中の犬なんだ

テロリストは陽気に呪い
信者を満足させる
首相はミサイルの角度調整で忙しい
宗教の話は後にしてくれ

9月11日にセントラルパークで
俺はマリファナを吸っていた
いつ夢から醒めるんだい
Be alrightにいつなるのか

俺たちは戦争の亡霊
全ての血の後継者
進化の途中の犬なんだ

キリストの家は釘で閉ざされ
アッラーの家はめちゃめちゃだ
マリアが田舎道を歩いて帰る
地球の故郷の夕焼けへ

なぜ人類が地球に必要なのか
太陽が年老いた時に
この星の全生物を救うのが
人間の役割だからさ

俺たちは戦争の亡霊
歴史の残りかす
進化の途中の犬なんだ


7 July, 2004

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トゥドゥマリ口説(とぅどぅまりくどぅち)


ハァー 西表(しま)に生まれて世変わり見るよ
人の心の世変わり見るよ
神遊び(かむあしび)で恋人と歩いた
トゥドゥマリ浜の話さ

ハァー ヤサエイエイ

今も美しトゥドゥマリ浜は
満つる月夜の神遊び
今も変わらぬ神の世ならば
人は情けか心じゃないか

ハァー ヤサヨイヨイ

夏の夜には海亀御座る
波のまにまのトゥドゥマリ貝よ
砂に遊ぶはナミノコハゼよ
皆が生くるよ この神遊び

ハァー ヤサエイエイ

川の流れをのぼって行けば
主は美しプシキの花よ
金は黄金(小金)か 今世は銭か
ひとつ語らしょ コンジキハゼに

ハァー ヤサエイエイ

たつるホテルの目の高さには
大和島まで よく見えるかよ
様は知らねよ 吾が島人の
歳の流れと ふる苦労

ハァー ヤサエイエイ タカハシサマーヨ

やさし人なら 何度も笑う
砂のひとつも私の命
水をけがすは百余の病
カンビレー様も許しはせめよ

ハァー ヤサエイエイ
ハァー ヤサエイエイ


27 November, 2003

*トゥドゥマリ浜:沖縄県竹富町西表島南西部の美しい砂浜.月が浜の名でリゾート計画が進んでいる. *トゥドゥマリ貝:二枚貝の1種. *ナミノコハゼ:波打ち際に生息する珍しいハゼで,日本ではここでしか見られない. *プシキ:マングローブ. *コンジキハゼ:天皇陛下がトゥドゥマリ浜から新種として記載したハゼ. *タカハシサマ:リゾート計画を推進している(株)ユニマットの社長. *カンビレー:トゥドゥマリ浜に流れこむ河・浦内川の上流にある滝で,西表の伝統的な聖地.浦内川〜トゥドゥマリ浜一帯は西表島の極めて重要な聖地で様々な伝説がある. *このリゾート開発問題についてはネットで検索すると,多くの情報が得られます.


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