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『アバ・ボックス』レビュー


 この内容は,Chifumiが1995年6月13日にニフティサーブの音楽フォーラムFROCKLに書き込んだものを,ウェブページ掲載用に編集し直したものです。


 『アバ・ボックス〜サンキュー・フォー・ザ・ミュージック』(ポリドール POCP-9501〜9504,再発POCP-9598〜9601,再々発ユニバーサルミュージックUICY-7076〜7079)は発売直後に買ってひととおり聞いたものの,あまりのボリュームのため,まだじっくりと聞き込んでいません。とりあえず,現時点で思っていることを書きますね。

 まず,お薦めかどうかですが,難しいところですね。レギュラー盤を制覇しているマニアなら,曲が重なっていても間違いなく買いですけど。アバを初めて買うとか,1,2枚持っているだけという人には,あまり薦めたくなんですよ。未公開トラック(=要するに没になった作品や失敗テイク)をつなぎ合わせた「アバ・アンディリーティド」なんて20分も聞かされてもおもしろくないでしょうから。そういうものを聞いてアバを評価してほしくないし…。
 ちなみに,ビデオ『サンキュー・アバ』(レーザーディスク/VHS)は,もっとマニア向けだと思います。アバの活躍を支えたスタッフへのインタビューが中心で,アバの歌そのものは楽しめません。
 1枚だけ買うのであれば,お薦めは『アバ・ゴールド』でしょう。「サマー・ナイト・シティー」「リング・リング」を除くヒット曲が網羅されていますし,解説もていねいです。また,ビデオ『アバ・ゴールド』(DVD/レーザーディスク/VHS)は,プロモーションフィルム集で,これもアバの曲がたっぷり楽しめます。

 というお断りをしたうえで,『アバ・ボックス』の詳細にふれてみましょう。

 ジャケットは,ボックスというより“ブックス”という感じかな。日本語解説が外付けなので,一度パックを開けてしまうと,収納場所に困ってしまいますね。日本盤発売前にヨーロッパ盤を見たら,ジャケットにナンバリングしてあったので,外道番号(メンバーの誕生日とか)を狙おうと思ったのですが,日本盤ではナンバリングされている部分が外付け解説で隠されていて,そういうオイタはできない仕様でした。
 解説は写真がいっぱいで,ファンならずとも楽しめると思います。50ページめには4人がほとんど半裸という危ない写真も載っております。これって,いつごろ撮ったんでしょうかねえ。解説には,メンバーのことだけでなく,舞台衣装の解説とか,当時アバがどう演出されたについても書かれていますよ。曲についても,1曲ずつレコーディングデータがていねいに紹介されています。
 日本語の解説は,英語の解説の全訳のほか,歌詞全部と訳詞が載っています。ただし,曲の解説も,原文の訳そのままなので,シングルで出た出ないといったことが,日本盤の実情と異なっていたりするので,気をつけないといけません。

 さて,肝心の盤の方ですが,音質などは申し分ありません。中にはデビュー当時の古い録音や,メンバーが気に入らなかった没バージョンも含まれていますが,音質に問題はありません。むしろ,アバをアナログ時代にすり減るほど聞いたという人には,高音がシャリシャリしていて耳障りかもしれませんね。
 1枚めから3枚めまでは,通常のベストです。選曲は,ヨーロッパでシングカットされたものを時代を追って収録しているという感じですね。シングルのB面の曲で,今までCD化されていない曲についても,できるだけこのCDに収録したようです。
 あと,日本独自のシングルカット曲である「落葉のメロディー」と「ザッツ・ミー」が収録されているのもうれしいです。現行の他のベスト盤に収録されていませんから。

 3枚めまでに収録されている曲で,バージョン違いが明記されている曲は2曲です。
 まず,「アイ・ワンダー(デパーチャー)」ですが,ライブ・バージョンと書かれています。『アバ・ジ・アルバム』に収録されているのとは違うテイクですが,未発表のものではありません。シングル「きらめきの序曲」のB面に収録されているテイクです。でも,アナログで聞くのよりはるかにいい音で感激です。フリーダって,歌うまいですね。
 もう1曲,「サマー・ナイト・シティー」は,ロング・バージョンと書かれています。曲の冒頭に,今までのどれにも収録されていないフレーズがついていて,驚きです。ビデオ発売されている『アバ・イン・コンサート』収録のフレーズに似ていますが,スタジオ録音にもついていたなんて…。

 残る4枚めは,完全にマニア向けです。1曲ずつChifumiが解説をつけましょう。

  1. プット・オン・ユア・ホワイト・ソンブレロ
     1曲めに収録されるだけあって,完成度は高いですね。フリーダのリードボーカルがさえています。コーラス部分でアグネタの声も聞こえます。

  2. ドリーム・ワールド
     何となくどこかで聞いたようなメロディー。解説ではこの曲のなかの8小節が「ダズ・ユア・マザー・ノウ」で使われたとあります。解説には書かれていませんが,この曲の他の部分は,同じ『ヴーレ・ヴー』収録の「キッセズ・オブ・ファイア」に使われています。

  3. サンキュー・フォー・ザ・ミュージック(ドリス・デイ)
     う〜む,やはり2枚め収録のバージョンの方が正解ですね。この当初バージョンはいただけない。メンバーが気に入らなくて,録音しなおしたという気持ち,よくわかります。

  4. ヘイ・ガムレ・マン
     ビョルンとベニーの『リッカ』(Lycka=幸福)に収録された曲の中で,アグネタとフリーダが参加した2曲のうちの1つです。歌詞が最後までついていなくて曲の終わりの方で「ラララー」と歌うやり方は,「ニーナは,かわいいバレリーナ」や,ビョルンとベニーがレーナ・アンデッションに書いた「恋する明日」でもやっています。

  5. メリー・ゴー・ラウンド
     日本では「木枯しの少女」に続く2枚めのシングル「恋のカルーセル」としてリリースされた曲。この曲でもバックにアグネタとフリーダの声が聞こえます。日本盤シングルでは2分40秒ほどでフェイドアウトされているのですが,それとは終わり方が劇的に違っています。

  6. サンタ・ローザ
     解説には,日本でシングルカットの予定があった曲と書かれています。実際には発売されませんでしたが,第3回世界歌謡祭(=72年11月)の参加曲として,日本武道館で披露しています。武道館ではアグネタとビョルンが中心で歌っていましたが,このCDではビョルンとベニーの声しか聞こえません。

  7. 木枯しの少女
     もう何も説明はいりませんね。日本だけの大ヒット曲です。『Inga II』というスウェーデン映画でも使われた曲だそうです。映画の邦題は,『ただれた関係』。邦題がついているということは,日本でも公開されたということです。

  8. メドレー ピック・ア・ベイル・オブ・コットン〜オン・トップ・オブ・オールド・スモーキー〜ミッドナイト・スペシャル
     78年来日時にヒットした「サマー・ナイト・シティー」のB面に収録されていたトラディショナルソング3曲メドレー。初CD化かな? 調子のいい1曲め,ゆっとりとした2曲め,そして再びアップテンポの3曲め。CCRのもいいですが,アバの演奏も大好きです。

  9. ユー・オウ・ミー・ワン
     最後のシングル「アンダー・アタック」のB面。最後の2枚のアルバム『スーパー・トゥルーパー』と『ザ・ビジターズ』って,静かでじっくり聞かせる曲が多いのですが,シングルB面にはこういうポップな曲もまだ収録されていたんだ,と再認識。楽しそうに歌うフリーダの顔が想像できます。

  10. スリッピング・スルー・マイ・フィンガーズ/ミー・アンド・アイ(ディック・キャベット・ミーツ・アバ)
     テレビ番組でのライブバージョン2曲。アバはテレビに出ても口ぱくのことが多かったようですが,これはしっかりライブしていますね。活動末期?の録音にもかかわらず,楽しそうに歌う姿が思い浮かんできます。

  11. アバ・アンディリーティド
     20分以上に渡る未公開トラック集。今これをBGMに書いていますが,楽しそうなレコーディング風景が思い浮かびます。没になった曲にも,なかなかいいものがあるんだ。でも,特にファンでない人には退屈でしょうし,さっきも書いたように,こんなトラック聞いてアバを評価してほしくないですね。

  12. 恋のウォータールー
     フランス語バージョンとスウェーデン語バージョンです。

  13. リング・リング
     スウェーデン語バージョン,スペイン語バージョン,そしてドイツ語バージョンです。

  14. ハニー・ハニー
     スウェーデン語バージョンです。

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original text written: 1995-06-13
this page created: 1997-09-13
last updated: 2001-12-23
by MURAKAMI Chifumi