Oriental ABBAland

『MAMMA MIA!』レポート

 神奈川県にお住まいのNaomiさんから,ミュージカル『MAMMA MIA!』をご覧になった感想をお寄せいただきました。ご本人からOriental ABBAlandへの転載許可をいただきましたので,以下にご紹介したします。

 『MAMMA MIA!』は,ビョルンとベニーが,アバのヒット27曲を用いて制作したミュージカル。1999年4月からロンドンのPrince Edward Theatreでロングラン中です。


MAMMA MIA! 4月17日(土)正午

 2年ぶりに会うロンドン在住の友達とTower Records前で待ち合わせ、お昼を一緒に食べることになっていた。ダンナの「飲茶がいいなあ」の一言で一路チャイナタウン方面へ向かう。そういえばMamma Mia!の劇場Prince Edward Theatreはチャイナタウンの目と鼻の先だ。だいたいの見当はつけてあるけれど、夜になってから迷わないように場所の確認をすることにした。道に詳しい友達が難なくOld Compton Streetを見つけ、ほどなくMamma Mia!の看板が目に入った。あったよ〜!ここだよ〜!ついに来たんだ〜! と、感激。でも初めて行く人には見つけづらいかもしれない。

 Prince Edward Theatreは外見から判断すると考えていたほど大きな劇場ではなさそうだ。けれど重厚そうな造りとクラッシックな雰囲気。ミュージカルを観たのはたったの一度きり、それも10年以上も前という「観劇初心者」の私が劇場を評価するのは申し訳ないけれど、こぢんまりしたこの雰囲気には満足した。外で数枚写真を撮ってから私のチケットがちゃんとあるかどうかを確かめにとりあえず中へ入ることにする。予約のときに「海外にはチケットは郵送しません。当日劇場の窓口で受け取って」と言われていて、チケットを持たずに現地入りしていたので・・・。

 予約の時になんだかんだと問題が生じていたため、現地で実際に手にするまではどうにも安心できなかった。信用していないわけではないのだけど手元にチケットがないまま海外に行くというのはどうも無謀な気がした。不安で仕方がない。念のために確認のとれる書類(エージェントからのメールのコピー、クレジット会社の引き落とし証明等)を持ってきているから大丈夫だと思うんだけど・・・

 中に入ると十数人の人がボックスオフィスの前に並んでいた。(それも割と年配のご夫婦ばかり。どう見ても50〜60代だ。イギリス人なのかなあ。ABBAはほんとに世代を超えて浸透しているみたいだ。)今日はマチネがある日だから(木曜日&土曜日のみ。当日は土曜日だった)きっとその分のチケットを買うのに並んでいるんだろう。しばらくすれば人もひけると思い、ぐるっと入り口付近を観察してみることにした。

 入り口のドアを押して入るとエントランスホールがある。部屋は半円形でそれほど広くはない。床にはバーガンディカラー(深いワインカラー)のカーペットが敷かれ、同色の壁と統一感があり重厚でいかにも劇場!という感じだ。客席へ通じるエントランスは4つあり、半円形のホールの円周上に一定の間隔をおいて位置している。それぞれのエントランスの間にボックスオフィスの窓口、グッズを売るコーナー、そしてプログラム販売のときに使うと思われる台があった。

 それにしても人の列がなかなか進まない。どうしたんだ?一番前の人がなにやら時間をとっているようだ。しばらく様子を見ていたこの劇場の従業員らしき男の人が(カジュアルな服装だったからこの劇場で働いている人とは分からなかった。バイトかな?)列に並んでいる人たちに向かって「今日の昼、夜分のチケットはもう売りきれてますよ。」と言った。とたんに長い列が一気に崩れる! みんな今日のチケットを買おうとしていたんだ。この時点で「チケットがあれば私も観たい」と言っていた友達の夢も消える。しかし列の一番先頭にいた2組の年配のご夫婦はまだ窓口の人と話をしていた。よく聞いてみるとどうやら来週の月曜日の夜の予約をしているみたいだ。チケットは6月分まで売り切れ・・というのをどこかで読んだような気がするのだけれど。もしかしたら平日の夜だったらキャンセル分のチケットがとれる可能性はあるってことかな。どのくらいの可能性かはわからないけども。

 それよりも私のチケット!できれば今受け取りたい。エージェントからは「当日1時間前に窓口が開くからその時にピックアップして」と言われたのだけど、きっと並ぶだろうなあ。窓口での対応が長引いていたのでまだ横に立っていたさっきのバイトらしき男の人に「もう予約してあって今チケットを受け取りたいんだけど、大丈夫かな?」と聞いてみた。すると「夜になったら3つとも窓口があくからその時のほうがいいよ」とのこと。少々不安だがまあ1時間少し前に来て受け取ることにしよう。我が友人曰く「イギリス人は並ぶのが嫌いだからきっと並ばないでもチケット受け取れるよ。大丈夫。」だそうだ。ほんとだろうか?それって応対がスムーズっていう意味かしら?とにかく場所の確認はできた。あとは夜を待つだけだ!

official MAMMA MIA! souvenirs 4月17日(土)7PM

 雨が降り出してきた。にもかかわらず劇場の外はキャンセル待ちの長蛇の列。最初はチケットを受け取る人の列かと思い「ひえ〜っ」と叫んでしまったが「キャンセル待ち」のたて看板の後ろにみんな並んでいるのを見て少々ほっとする。しっかしさすがは週末のロンドン。この界隈の劇場はどこもいっぱいなんだろうなあ。いそいそと劇場の中へ入ると入り口付近はかなりの混雑だったにもかかわらず、窓口の前には数人しかいない。友達の言う通り『まったく並ぶことなく』チケットを受け取る。よく考えてみれば現地で予約した人はすでに郵送でチケットを受け取っているわけで、当日受け取りは外国人に限られるはずだ。並ばないのも当然か。劇場の人にどの入り口から入るかを指示され、自分の行くべき所を確認。その後グッズを買うことにする。ダンナにプログラムを買っておいてもらい、私はグッズのカウンターの前へ。しかしここでも誰も並んでいない!しばらくどれを買おうかとショーケースの中の品物を吟味していたが、その間買いに来る人は誰もいなかった。いろいろ迷ったすえにTシャツにマグカップ、それとキーホルダーを買った。Mamma Mia!と書いてある紙の手提げ袋に入れてもらってお金を支払う。(全部で21ポンド50ペンスだった。1ポンド=約200円)。この他にも長袖のTシャツ、ピンク色のミニTシャツ(俗にいうピタT。またはチビT?女性向けのようだ)、腕時計、ポスター、キャップ(帽子)、トレーナー、ピンバッジ、レコードバッグ(メッセンジャー・バッグみたいな形)などがあった。

 客席への通路の入り口に行き、チケットの半券をもぎとられる。あれ、この男の人。昼間のバイトらしき青年ではないか。蝶ネクタイにタキシードでなかなかキマっていた。

 長い通路を通って自分の席へ。前から7列目というまずまずの席だったのでオーケストラピットも近い。中をのぞけくことはできなかったけれど。舞台背景は真っ青な空をイメージしているのだろうか、所々に白く雲のようなものが浮かんでいるふうに描かれている。設定はギリシャだしなあ。空はとても澄んだ青だ。舞台自体はあまり大きくない。でもスタンダードな劇場のサイズを知らないので私の意見は参考にならないと思う。それにしてもさすがに大入り満員だ。だんだんと席がうまっていく。ひとつ気づいたのは周りを見回すと年配の人がとっても多いことだ。この人達もABBAを聴いていたんだろうか? 私みたいに「ミュージカルだ!行くぞー!」と肩に力が入っているのとは違い、気軽に楽しむ気持ちで見にきてるんだろうな。

 やがて照明がおち、目の前のスピーカーからボリュームいっぱいに聴きなれたABBAの曲が流れてきた。Gimme! Gimme! Gimme!だ、Lay All Your Love On Meだと聴いているうちにどーにも目頭が熱くなってきてしまった。そしてついに幕が・・・!

ACT 1 - 結婚式前夜

Donna  舞台はギリシャの小さな島。20年前にロンドンのショービジネスを引退したDonnaはこの島で小さなホテル兼レストランを経営している。明日は一人娘のSophieの結婚式。Sophieは20年前の母親の日記を見つけ、密かに「自分の父親」らしき3人の男性を母には内緒で招待してある・・・という設定である。
ミュージカルが始まった・・・

Sophie  ギリシャの家の白い壁の前にSophieが座っている。(あれ、Sophie役のLisa Stokkって金髪だったっけ?あとで確認しよう。)

 ここでオープニングの曲が始まる・・・

『I Have A Dream』

 アカペラバージョン。この曲は個人的にはあまり聴かないのだけど、伴奏がないほうがいいことに気づく。子供のコーラスもいらないような気がする(それが特徴ではあるのだけど)。しかしどうしてこの曲で始まったのかがナゾである。Fridaの落ち着いた声とは異なるSophieの甲高い声で歌うのもまた良い。Sophieが3通の結婚式への招待状を投函する。Bill, Sam, Harryは20年前にDonnaと「良い仲」で、このうちの誰かが彼女の父親のはずなのだ!

Sam 『Summer Night City』

 Waiting for a sunrise.............Summer Nighti City......のコーラス部分のみ使われていた。ステージ奥にDonnaが座っているのが一瞬映る。(・・と思う。)このあと娘のSophieの2人の友達、AliとLisaが登場。久々の再会を喜ぶがここでSophieは自分の「父親」らしき人たちを招待したと告白する。3か月前に(Summer Night Cityからこの時点までに3か月たっているらしい・・・最初はちょっと分からかったが)母親の20年前の日記を見つけ、その中に3人の名前があったからだ。ここで日記の何ページかを読み上げる。

Sky 『Honey, Honey』

 日記の内容とHoney, Honeyの歌詞をダブらせている。笑いをとるためか、ちょっぴり「下ネタ」風表現あり。たしかに受けていたがちょっと気恥ずかしい(確かに歌詞には「You're a love machine」とか「When you do your THING」という表現があるけど・・・)。この曲ですでにとなりに座っていたおじさんリズムをとり出した。ノ、ノッてる・・

 セットが変わって・・・

 Donnaの2人の友達登場。彼女たちはDonnaと20年前にロンドンのショービジネスで一緒に仕事をしていた仲間だ。Tanyaは大柄でスタイル抜群の派手なおばさん(イメージ的にはうーん・・カイヤ川崎さんっぽい。もちろんTanyaのほうがずっと年上)。そしてRosieはかっぷくが良く、背の低いおばさん(森公美子さんのイメージ)。でこぼこコンビだ。SophieとSky(Sophieの婚約者)も登場し、顔合わせをする。2人の友達がDonnaに向かって「あんたもこっち(ギリシャの島)に来ていろいろ大変だったでしょうねえ」みたいなことを話しているところから・・・

『Money, Money, Money』

 これは上手い! このDonna役のSiobahn McCarthyという人はほんとうに上手!Chessにも出ていたらしいけど味のある女優さんだ。この時点でもう彼女に釘付けになった。それにこの曲はなんてステージ映えする曲なんだろう! 前に座っているおばさんの肩も動く・・・みんなノッてるぞ・・・ここからレビューのようにダンサーも出てきて大きなショーとなる。

 全員がひけた後にSophieが招待したBill, Sam, Harryが一緒に登場。それぞれDonnaと関係があったがもちろん3人とも初対面である。以前この島にいたことがある・・・というところから3人3様の思い出話が始まる。Harryが部屋の隅にギターを見つけ「なつかしいなあー。あの頃ぼくはこんなふうに(ギターのネックと自分の頭を同時に上下に振りながら)演奏してたっけ」。これはあきらかにBjo:rnのギター演奏をおもしろおかしく表現したとしか思えない!会場の一部にウケる。(きっと私と同じことを考えていたんだと思う。)そして・・・

『Thank You For The Music』

 Harryがギターを弾きながら歌い始める。ドアが開きSophieが登場。Harryと一緒に歌う。そして全員で。うーん・・・この曲がここで「Harryの思い出の曲」として使われているけれど、どう考えてもつなぎの曲というかんじでこの曲自体の素晴らしさが生かされていない。ちょっともったいない気がする。

 Sophieは3人を招待したのは自分で、Donnaは何も知らないことを告白する。母には明日の結婚式に招待されているということは内緒にしておくように3人に約束させる。Sophie退場。

 なにも知らないDonna登場。ホテルのドアを直しているので後ろにいる3人には気づかない。一人が声をかける。Donnaは振り向いて驚き、ひとりずつ「え? なんであなたがここに? あなたも?」と指差し、最後にSamに向かって「YOU!」と言った後・・・

『Mamma Mia』

 ミュージカルのタイトルナンバー。歌詞が少し変えられていたがあまり気にならなかった。(I've been cheated by you since I don't know whenのsince以降がかわっていた。)フルコーラス歌う。これもSiobahnが素晴らしかった。

 場面は変わって、Donnaの部屋。友人のTanyaとRosieを前に「昔の恋人」のいきなりの出現におろおろするDonna。彼らの一人がSophieの父親のはずなのだけれど、問題は彼女自身も誰がSophieの父親なの分からないこと!すっかり動転しているDonnaをRosieが慰めようとする。ここで、

『Chiquitita』

 'Chiquitita, tell me what's wrong' と始まると会場からも笑いが。歌う・・・というよりは、台詞を言っているふうだ。Chiquitita本来のメロディーの美しさを考えると、いま一つ曲を生かしきれていないような気もするなあ。このミュージカルはどちらかというとコメディーに仕上げているようだ。しかしRosieとTanyaの声はなかなか良い!役者に全く不足はないと思う。(とても生意気なコメントですみません。)

『Dancing Queen』

 さらにDonnaを慰めようと友達が歌う。(ヘアドライヤーとブラシをマイクにみたてて)途中からDonnaも加わる。この3人のコーラスもなかなかいいではないか。はしゃいで歌って・・・というところは「ミュリエルの結婚」のワンシーンを思わせる。うーん。Bjo:rnはあの映画の影響を受けているのかな??

 場面が変わり、SophieとSkyが桟橋で会っているシーンとなる。結婚前夜に友達とすごすバチェラー・パーティーに行くSkyを追いかけ、「行かないで」とSophieが言う。(Skyもまたロンドン(だと思う)の喧燥から逃れてこの小さな島に居着き、現地で働くようになった青年。)他の島にボートで渡るという設定なのだけれど、この時横にあったボートの名前が『Waterloo号』だった!ABBA の25周年記念のミュージカルなのに、この要の曲が使われないからこんなところで登場させているのかな?そして次の曲は・・・

『Lay All Your Love On Me』

 Sophie & Sky。大人の曲・・・というイメージのあるこの曲も、若い二人にさわやかに歌われている。オリジナルとはまったくイメージが違う。ここでもコメディータッチの演出あり。最後は着ていたウエットスーツを全部はぎとられ、Skyは友達に抱えられ、船に乗せられて去って行く・・・

 Skyが'Waterloo号'に乗ってパーティーへ行ってしまってから、今度はSophieの「独身最後」のパーティーである(女の子の場合はヘンズ・ナイト=hen's night というらしい)。Donnaの経営するホテル(レストラン)で大勢に囲まれ席に着くSophie。そして次にかかった曲は・・・

Rosie Tanya 『Super Trouper』

 Donna, Tanya, Rosieの「元スター」たち3人によるパフォーマンス。衣装がこれまた70年代のABBAそのものだ。全員がシルバーの、あれジャンプスーツっていうのだろうか、裾がパンタロン風になっていて袖も肘のあたりからフリフリに広がっている(ABBA GOLDのビデオのなかでAgnethaがMamma Miaを歌っているときに着ているものとほぼ同じみたい)衣装を着て、'Super Trouper lights are gonna find me...'のところではお決まりの上に向かって指を差すポーズ。振りもAgnetha&Fridaそのもの。コーラスが女性の声ではあるけど、秀作だ。これもDonnaのショービジネス時代の心情と歌詞をダブらせたひとつと思われる。

 そしてhen's nightといえば女の子だけのパーティなのだけれど、たしかこの後3人の「父親らしき」男性陣がこのパーティに加わり(ここんとこ定かでないです。すいません・・・)ダンサーを交えて、

『Gimme! Gimme! Gimme!』

 これも一部分しか使われていなかったという記憶がある。歌詞も少々の変更あり。この曲では会場もかなりノッていた。他の曲でも歌詞の変更は多少あるにしろ(これは仕方のないことだと思う)いつも聴くABBAのアレンジとさほど変わっていないのは嬉しいことだ。もちろんコーラスが足りないとか、歌手の声がFridaより高いとかそういうことは抜きにしてではあるけれども。

 場面は変わって・・・

 「父親」の一人であるBillとSophieが桟橋で会っているシーン。ここでBillはなぜ自分が結婚式に招待されたかということを悟る。が、悟りすぎて自分が「父親」であると勝手に確信を持ってしまう。Sophieも話の流れでBillこそ自分の父親に違いない、と思う。

『The Name Of The Game』

 BillとSophieのデュエット。多少の歌詞の変更あり。'I'm a bashful child.'が'I'm a curious child.'など。その他多々あり。この曲をデュエットでという手もあったかと「目からウロコ」の気分だった。

 自分が父親だと確信したBillは明日の結婚式でSophieを花婿に引き渡す役(父親が娘に腕をかしてバージンロードを歩くという、あれです。)を務めるのは自分だ、と思いDonnaと話しをするため桟橋を去る。

 Sophieは友達のAliとLisaに「誰が父親か分かった!」と打ち明けるが、他の2人の父親候補のSamとHarryも「自分たちが父親なのだ」ということをそれぞれ思い違い(?)をしており、バージンロードをSophieと歩くのは自分だ・・・と各々思っている。(しかしこの男性たちは互いにDonnaと関係があった者同士とは夢にも思っていない。)

Ali Lisa 『Voulez-Vous』

 すみません!この曲がどういう経緯で使われたかあまりよく覚えていないんです。演奏されたのはもちろん覚えているんだけど・・・これもダンサー&キャスト全員でステージ中歌って踊って・・・っていう場面だったんですけど、フルコーラス歌われた記憶はないです。ほんと一部分だけ。すみません・・・

 ここで、Act1終了。

 私もAct1はとても楽しかったけれど、他のお客さんもものすごくノッいた! 拍手するところ、ひくところ、歓声をあげるところなどツボを得ている。これだったらパフォーマンスしている人も気持ちいいだろうなあ・・と思う。これって普通なんだろうか? 日本でミュージカルに行ったことはないけど、日本の観客はどうなんだろう?

 Act1終了後の15分間の休憩中ダンナがトイレへ立ち、私は席に残りプログラムを読むこととする。プログラムの中に細長い紙切れが挟んであり、それには今日のSophie役はオリジナルキャストのLisa Stokkでないということが書いてあった。(そうだよなあ。Lisaは黒髪だったもんなあ。)代役でSophieを演じているのはCaroline Sheenという女優さんだった。そして父親役の一人、Sam(要の役)もオリジナルのHilton McRaeではない!(でも代役のTom Magdichという人のほうが私好みではある・・・な〜んてね。)しかしつくづく思ったのだがDonna役のSiobahn McCarthyはダントツに素敵!彼女が出てくると観衆の目が一斉に彼女に注がれるのがよ〜く分かる。舞台に何度も立っているベテランだし、カリスマを持っている人だなあ〜と思った。

 そんなこんなで短い休憩が終わり、Act2が始まった・・・

Act 2 - 結婚式当日

『Under Attack』

 Sophieが「悪夢」にうなされているシーンからが始まる。夢の中にはなんとウェディングドレスを着たSky(!)が出てきたり、3人の「父親」と絡み合っている母(アブナイ・・・)が出てきたりと文字どおりの「悪夢」。歌の間中Sophieがベッドの上に乗せられたまま舞台の端から端へと引っ張りまわされる。しかしここで舞台後方にベールの幕があり誰かいるらしいことに気が付いた。ん?もしかしてこのベールはもうすぐ取り払われるのか?案の定「under attack, I'm being taken.....」のくだりのところで幕が落ち、後ろにはダンサーの列!それもみんなウェットスーツや水着、そしてゴーグルとシュノーケルを着けている!!ゴーグルとシュノーケルの縁は蛍光になっていて、うす暗い舞台でくっきりと浮かび上がるようにされていた。そして曲に合わせながらゆっくりと、まるで歩くように無表情で足だけを動かしていた。会場にはこの演出が大ウケ!Under Attackにかけて「水中」をイメージしているらしい・・・うーん、ますますコメディータッチだわ・・でもSophie役のCarolineはとってもキュートで歌も彼女の声に合っていると思う。Agnethaの声のようなパワーはないけれど。

 一夜明けてDonnaの部屋にSamが訪ねてくる。昔二人が付き合っていた頃の話をしているとき・・・

『One Of Us / S.O.S』

 (2曲続けて歌ったわけではないですが)当時どれほどDonnaが傷ついていたかを切々と歌うシーン。ここはOne Of Usの歌詞がストーリーに反映されている。何度も言うようだけれど、やっぱり上手い。もう完璧に観客は彼女のペースにはまっている感じだ。歌が力強くて説得力があるし、声も素晴らしい。

 シーンが変わり、海辺でTanyaが水着で日光浴をしているところへ、Skyの友人のPepperが現れる。彼はTanyaが島に着いてからずっとモーションをかけていたのだが、ついに行動にうつす。Tanyaもまんざらでもないので(親子ほどに年は離れているのだけど)Pepperの誘いにのろうとする・・ところでこの曲!

Eddie Pepper 『Does Your Mother Know』

 歌い出しはTanya。歌詞の変更あり。...but I can't take a chance on a 'chick' like you....の歌詞のところを'kid' like youと言っていたと記憶。それに、'girl'というところを'boy'へ変更。Tanya役のLouisaもなかなかいい味だしていると思う。そしてここでまた客席が盛り上がる演出があった。Pepperが曲中になんと十回以上もの連続ジャンプを見せ、会場からは割れんばかりの拍手!ダンサーってやっぱりバネがあるんですねえ。見ているほうが疲れてしまった。

 そして場面はSophieとSamが桟橋で会っているシーンへ。

『Knowing Me, Knowing You』

 正直言ってなぜここでこの曲が使われたのか分からなかった。Sophieは「自分の父親探し」がなかなか結果を見ないことへのジレンマを感じ、Samは「もしかしたら自分が彼女の父親では・・」と思いつつも確信が持てないもどかしさを感じているのだが、この曲を使う意図が読み取れない。うーん・・・。当然のことながら歌詞に変更あり。が、深く考えている暇はない。ストーリーの流れ的にはSamが「父親」というインプットがされているように思えるのだけれど、どうなんだろうか・・・最後にはっきりするのかしら??

 Donnaの部屋にHarryが訪ねてくる。Sophieの父親は自分ではないか・・・とのHarryの問いにDonnaは驚くが、答えられない(もちろんこの時点では彼女自身も分からないのだから仕方がないのだけれど。)ここで次の曲。もうみなさんは'Harry'と聞いて何が歌われるかお分かりだと思いますが・・・

Bill Harry 『Our Last Summer』

 DonnaがHarryとのパリの思い出を歌った曲。Donnaの歌唱力はもういうまでもない。そして...and your name is 'Harry'...のところでは会場から「やっぱりね〜」という意味の笑い。私も心の準備はしていたけれどやっぱり笑ってしまった。

 シーンは変わって・・・

 Sophieが母Donnaの部屋にやってくる。結婚式の身支度をするためだ。DonnaがSophieの髪を結ってあげ、娘がウェディングドレスを身につけるのを見届けながら歌うのは・・・

『Slipping Through My Fingers』

 ああ、なんて切ない曲なんだろう、と思った。この曲はAgnethaとBjo:rnの娘Lindaが知らない間にどんどん成長してしまい、自分から遠ざかってしまうように思うAgnethaの母心をBjo:rnが書いた、というエピソードがある。やっぱりLindaをお嫁に出すときにも思い出すんだろうか・・・?この曲は他のどの曲よりもこのミュージカルのコンセプトに合っているんじゃないかな。オリジナルもミュージカルも「母と娘」をテーマにしているから。それにしてもSiobahnの声のキーはAgnethaとFridaの中間くらいなのかもしれない。どの曲を歌ってもあまり違和感がない。この曲もソツなくこなしていた。

 Sophieが支度を終えて部屋を去り、独りになったDonna。(もしかしたらSamも一緒だったかもしれないんだけど・・・)

『The Winner Takes It All』

 SamはDonnaと恋人であったけれどその想いを振り切ってロンドンに戻り、他の女性と結婚してしまったという過去がある。しかしSophieからの招待状をもらってからやはりDonnaとの想い出が捨て切れず、妻と離婚して(または「していた」)この島に戻ってきた。当時の想いをDonnaが歌う。この曲は私自身かなり思い入れがあるため、どういうふうに歌われるか一番注目していた。Siobahnはもちろん素敵だったけれど、この曲に限ってはやっぱりAgnethaのほうがいいな、と思った。特に曲の最後の、...The winner takes it aaaallll!のところは、Siobahnのパワフルな声をもってしても(それでもキーがずれないようにかなり丁寧に声を出していたようだが)やっぱりAgnethaの説得力にはかなわん!と思った。

 所は変わって結婚式場のシーン。早めに着いたRosieはやはり早めに来ていたBillと接触。Donnaがだめなら私がいるわよ・・・とばかりに、

『Take A Chance On Me』

 Billに色目を使いながらのいきなりの歌い出しに会場も大ウケだった。このミュージカルはDonna, Tanya, Rosieの3人が主役だ。Sophieはもちろん主役ではあるのだけれど、実際は3人のベテラン女優が引っ張っているのがミュージカル素人の私(とダンナ)でもよく分かった。

 いよいよ結婚式が始まった。誰が花嫁の腕をとるか・・・という疑問も結局Donnaがその役を務めることで決着がつき、Sophieは無事にSkyの元へ。が、そこでSophieは一大決心をする。「やっぱりこの結婚はやめましょう!」これはとっても意外な展開だった。いきなり、なのだ。Sophieは結婚式前のSamとの会話で「君たちの未来はまだまだ可能性に満ちている」みたいなことを言われたのが効いたらしい。SkyもSophieの一言であっさり「そうだね。今結婚しなくても」ということになる。そして二人で島を離れ、旅に出ることを決意する。そして誰がSophieの父親かというこのミュージカル最大の関心ごとも話し合われるが、Donnaの「私にも誰だか分からないのよ」の一言で極々簡単に終結。ああ、ここまで気をもたせておいて割りと単純な結末だなあ。しかしここでちょっと意外な展開。せっかくの結婚式をみすみすキャンセルしなくても・・・ということになり、な、なんとSamがDonnaにプロポーズ!そこで、

『I Do, I Do, I Do, I Do, I Do』

 当然この曲!でもまさかDonnaとSamのために歌われるとは!肝心のDonnaはためらいの後に「I do!」と言いSamのプロポーズを受け、結婚式は二人のために行われる。

 そして・・・

『I Have A Dream』

 締めくくりの曲もこれ。SophieとSkyの旅立ちの場面。短パンにTシャツ、パックパックという軽装でみんなに別れを告げ、手に手をとって旅立って行く・・・二人の姿が舞台袖に消える・・・

 ということで「おしまい」です。

 一旦幕が下り、観客はスタンディングオベーション!拍手と歓声に劇場がつつまれ、私もすっかり熱気におされて気味。うーん、劇場の空気っていいなあ!!と頭の中を駆け巡る自分のセリフに「感嘆符」がいくつも付いてしまい、雰囲気に酔いしれることしばし。さてアンコールで何が演じられるのでしょうか?!

 案の定というか当然というか「Mamma Mia」にのせてキャスト全員が登場し、全員で歌いながらグループごと(3人の父親、Sophie、Sophieの友達... etc.)に挨拶。し、しかし肝心のDonnaとその仲間たちがいない!!と思ったら、アンコールはDancing Queenでした!!この曲は何度も聴きすぎてファンの人の中にはげんなりしている人も多いかもしれないけれど、あのイントロを聴いた途端にため息が出ました。これをABBA本人たちが歌うのを聴いたら、感動なんてもんじゃないでしょう。泣いてしまうかもなあ・・・非常に大袈裟な表現ですが。Donnaとその他2人の衣装は前出のSuper Trouperの衣装と色違い(ここでは黒)。3人のハーモニーがとてもいい!半ば興奮しながらも少々冷静さを保っていた私は二階席を見たり後ろの席の人の様子を見たりしていたけれど、ほんとーに総立ちのノリノリだったですよ〜!!

 アンコールを終え、幕が下りた後もしばらくボーッとしていたけれど、どんどん人が引けていくのでかろうじてついて行った、という感じでした。途中疲労のためか気分が悪くなってあわや退席か・・・という事態にもなったんですが、とりあえず気力で持ち直し(ここまで来て退席なんて言語道断ですもんね)最後まで観れましたが、ほんとに来てよかった〜!と思いました。でもミュージカルが終わってすぐに会場が一瞬硬直した場面があったんです。お客さんが席を立った瞬間なんですが、後ろのほうの席で男の人が突然「Frida!」って叫んだんですよ!劇場中の人が一斉にその声のするほうへ振り向いたんですが、結局その後の動きは何もなし。ただのデマだったみたいです。でも確認はとってないので、もしかしてほんとうに・・・??なんてことはないと思ってるんですが。プレミアにAgnethaもFridaも出席しなかったので、もしかしたらお忍びで・・・ということも聞いていたので、一瞬期待したんですけれどね。

Prince Edward Theatre  劇場の外に出て数枚写真を撮ったのですが、週末の夜10時少し過ぎのTottenam Court Road周辺は人が多く、昼間のような混雑ぶりでした。人をかき分け、かき分けして地下鉄の駅まで辿り着きホテルまで戻りました。Mamma Mia!を観れた「幸運な」でも特別ABBAファンでもないダンナに感想を聞いたところ、「曲はいつも聴いていたものばかりだったので全部わかった。なかなか楽しめた。やっぱりあの女優さん(Siobahn)が一番注目を集めていたね。」でした。

 そして私の総評は、と言いますと「楽しかった〜!」の一言につきるんですが、いい面だけでなくネガティブな感想もご報告せねば、と思います。不満に思ったのは肝心要であるはずの『ストーリー』です。これは賛同されるABBAファンも多いのではないかと思います。こういう表現があるかどうかわからないですけど「肉薄」というか、いまひとつストーリー的に厚みが足りなかったような気がします。もちろん既存の曲を使って「はい、これでつなげてストーリー書いてね」と言われた脚本家の苦労を考えるとこんなこと言うのは申し訳ないかな、とも思いますが話の筋のところどころに無理が生じているのが結構分かります。Bjo:rnが「まるでストーリーのほうが先にできていて、曲が自然にフィットするように」創って欲しいと脚本家にリクエストしたらしいですが、これは無理難題だったと思います。でも観る人によって感じ方は違うと思いますので、これは私個人の意見として受け取ってください。ではどうしてストーリーがいまいちなのに「楽しい」という感想を持ったのか、というとそれはやはり出演者(特にベテラン勢)が素晴らしかったからでしょう。そしてその素晴らしいパフォーマンスによるABBAの曲の素晴らしさだと思います。ABBAを知っている人にはもちろん、知らない若い世代の人たちにも違和感なく受け入れられるんじゃないかと思います。劇場初心者の私ですが「エンターテイメント」を肌で感じた経験でありました。

 長々とつたなくご報告させていただきましたが、とりあえずこれにて「おしまい」です。尚、このレポートには多少記憶違いがあるかもしれませんが、そこのところご了承ください。なにせけっこう圧倒されていたので・・・とにもかくにもここまでご拝読ありがとうございました!稚拙な表現などがあったとは思いますが、ご容赦ください。こんなレポートでもABBAファンのみなさんのお役に立てれば、と切に願っております。それでは失礼いたします!

Naomi


『MAMMA MIA!』のオフィシャルサイトを見る(英語)

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original text written: 1999-05-01
updated: 1999-10-08
by SAITO Naomi

page designed: 1999-10-27
last updated: 1999-10-31
by MURAKAMI Chifumi