スーパースポーツカー
名車の条件

 スポーツカーと呼ばれる車、ここではコルベット(帆船の戦艦の意)にちなんで車を艦、スポーツカーを戦艦と呼ぶことにしよう。一般に戦艦というとどんなものを想像されるだろうか?恰好いい、速い、トラックとは違う等・・様々だろう。ではどんな艦が戦艦なのであろうか?また、名車と呼ばれる条件とは何か?私が独断で考える理想像を紹介しよう。



名車の条件1・カッコイイ、速い(速そう)

 最大の条件はこの一言につきる。その艦が速かろうが遅かろうがちょっとボロかろうが、他の艦を威圧する圧倒的な存在感が漂っていないとスーパースポーツ・超弩級戦艦と呼ぶことはできないし、ましてや呼んではいけない。名車と呼ばれる艦は何か神憑り的な存在感をかもし出していなくてはならない。
 飛行機でもあるまいしターボチャージャー等の付加装置に頼った速い艦も存在する。しかし、‘カッコイイ’という条件に当てはまるものは数えるほどしかない。北欧の艦に代表される子供の落書きのようなデザインであってはいけない。
 国産艦の多くにGT○○等と銘々したいかにも‘速そうです’‘スポーツカーです’と言わんばかりの艦が氾濫しているが、本来GT(グランツーリスモ)とは大陸横断のことである。スポーツとは無縁であり長距離を快適に巡航するために建造された艦である。いわば豪華客船であり戦艦ではない。なにを勘違いしたか、その豪華客船に手を加えて戦艦として艤装する者が後を絶たない。何百馬力にもスープアップしておまけに4WDだったりすれば当然速い。しかし、ただ速いだけにすぎない。アクセル開けてスピードを出すくらいサルでもできる。客船は所詮客船・・ここで言う恰好良さや人目を引く存在感は微塵も漂っていない。ただ頑丈でもダメ。ただ速くてもダメ。恰好良くなくてはならないのだ。スーパースポーツとはそういうものである。
 '81コルベットの場合はどうか?・・言うまでもなくこの条件は楽々クリアである。マッハ号のような鋭利で派手ないかにも速そうなデザイン(実際速くないが・・)。そのマッハ号であるが、デザインのベースが先代のコルベットであったことはあまり知られていない。元々カッコイイものをデフォルメしたものだから当時の子供たちはその恰好良さに半狂乱したものだ。
 速さという点ではどうだろう。一般市販車として世界最速記録を持つ艦をご存じだろうか?フェラーリやポルシェの300km/h程度のチンケなスピードを想像されるだろう。しかしそのタイトルホルダーは何を隠そうキャラウェイ・ツインターボ‘スレッジハンマー’がそれである。あのルマン24hにもプライベーターとして参加しているコルベットチューナーが手掛けた艦で、その記録は実に‘409km/h’にも達する。
 洗車しているだけで老若男女問わず‘カッコイイ’、‘300km/h位出るの?’等と声を掛けられる。これは圧倒的存在感のみが成せることなのだ。日本でスポーツカーにカテゴライズされる国産GTユーザーの方には恐縮だが(国産GTユーザーの方はこのボロいアメ車のHPなど眼中に無いと思われるので毒舌を吐かせていただくと)、子供たちに‘カッコイイ’と言われたことがあるだろうか?限りなく無いに等しいはずである。何故か?・・答えは1つ‘恰好悪い’からだ、スポーツカー・戦艦では無いからなのだ。



名車の条件2・古い、数が少ない

 名車と呼ばれる艦はどれも古くに建造され、現行車種として販売されているものが名車と呼ばれることは極めて希である。それ故プレミアがついたりして名車としての地位を高めていく。また、古いことで現代にない‘味’がマニアを魅了する要因となり、欠点さえも‘その車らしさ’として正当化され全てがすばらしい物として語り継がれていく。
 本HPのコルベットは'81年式である。実際に建造されラインオフしたのは1980年9月である。908台目に建造され艦齢は19年を数える。この年式の兄弟艦は4万台程である。そのうち2〜3千台程(推定)がここ19年間の内に国内に侵入していると思われる。国産スポーツで年間4万台も売れた艦がかつて在っただろうか?しかし、この数字も自動車大国アメリカでは雀の涙程の販売台数でしかない。現行型に至っては2万台程である。ただでさえ保険料の高騰により売れないスポーツカーを作っていく事は趣味でやっているといっても過言ではないだろう。現にこれまでGM内部で何度となくコルベットの存在意義が問われてきた。しかしアメリカ人にとってコルベットとはリアルアメリカン、KING OF AMERICAであるのだ。アメリカの子供に‘スーパーカーは何?’と質問すると、返ってくる答えはフェラーリでもポルシェでもランボルギーニでもない‘OF COURSE CORVETTE’である。彼らにとってフェラーリもポルシェもカッコイイ車は全てコルベットに見えるのだ。スポーツカー=コルベットらしい。そのアメリカ魂によって生まれたコルベットがスーパーカーで無いはずがない。
 因みにフルモデルチェンジを受けたC5と呼ばれる'98年現行型は、オールアルミエンジン、トランスアクスル化する等の大改装が施され現代化が図られた。そしてスーパースポーツとして、ハイウェイの覇者として将来名車と呼ばれる運命を背負ってアメリカ狭しと暴れ回っているのだ。



名車の条件3・よく壊れる

 故障といっても前述の通り古さからくる疲労による場合と、戦艦としてのハードな使われ方から来る疲労によるもに大別できる。前者の場合その古さ故、ある部品が耐用年数を迎えたとき連鎖的に故障を誘発する。この連鎖反応がくせ者で、年中どこかがトラブッているためこういう印象を与えてしまう。これはアメ車に限ったことではない。現在'81年式の国産車がノントラブルで走っているだろうか?答えは‘NO’である。いくら国産車が壊れないと言っても壊れるものは壊れるのだ。相違点は故障の質であろう。
 知人から聞いた話だが‘カウンタックを持っている人がいるが300日はガレージに入っているらしい’というものだ。こうなってくると異常だが所有者は艦の価値を良く知っており壊れることはお約束として楽しんでいるようだ。名車と呼ばれる艦はそれも又良しとされるのである
 後者の場合、その戦場がハイウェイであったり峠であったり様々な過酷な条件を試される。戦艦として生まれ持った機動性、パワーに魅了された乗り手がついつい楽しくて艦の限界を超えてしまった場合に発生するもので原因は乗り手によるところが大きい。
 少々意味合いが異なるが、極論するとF1マシンやインディーカーが良い例だろう。これらは究極のスポーツカーであるが、蹴っただけでも壊れる。ヘタクソなやつが操って、運用限界を超えたおかしな応力を加えるとあっさり壊れる。いわばもろ刃の剣なのである。
 何れにせよ名車・スポーツカーと呼ばれる艦はよく壊れるのである。壊れない艦は名車にはなれないのだ。これは掟である。



名車の条件4・操縦するのに特別な儀式が必要

 名車と呼ばれる艦の多くは、その操縦に特別な儀式が必要な場合が多々ある。また知名度に比例して儀式の数も増し、同車種間であっても同じ儀式は1つとして存在しない。まるで野生馬の調教のようでもあり、名馬を手にするには時間がかかるのだ。
 初めて名車を手にした者の多くはそのじゃじゃ馬ぶりに困惑する。例えばエンジンのかけ方1つでも様々だ。儀式を実行しないと絶対に1発で始動しないのである。「アクセルを3回あおって3秒待つ。そしてあおりながらキーを捻る」といった現代の艦では想像もつかない癖・儀式が存在する。
 この儀式を1つ1つ会得していくことが名車を操る醍醐味であり、そうすることで他人には絶対操縦できない人車一体感覚が芽生え、それがあってこそ艦に対する愛着も増すというものである。礼を持って接し、”乗る”のではなく”乗せていただく”という姿勢が長持ちさせる秘訣でもある。

 これが、私が考えるスポーツカー、名車と呼ばれるための最低条件である。どれ一つ欠けてもいけない。
 以上をふまえて我が'81コルベットに当てはめてみよう。カッコイイし、もちろん古い、しかもボロい、そして妙な癖がある。4拍子そろっている。
そう!これは正真正銘のスーパースポーツ、名車なのだ!。正に私にとって理想のスーパーカーなのである(結局ここに持ってきたかったこじつけだが・・)

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