乾燥地の塩性土・アルカリ性土の特徴

1)塩害・アルカリ害の発生地域

中国での不良土は全耕地(1.0億ha)の1/3に当たる。その中でも塩性(アルカリ性)土壌は720万haあり、大きな問題です。なお、作物のできない塩の土地を塩砂漠と呼ぶ。 中国の塩害、アルカリ害の発生地域は次のとうりです。
@乾燥・半乾燥地帯での塩・アルカリ土:
内陸の西北部の閉鎖水系付近で、乾燥気候による蒸発によって発生する土壌表面での塩類・アルカリ集積がある。

A東部の半乾燥・半湿潤地帯の塩・アルカリ土:
春季の干害、夏季の冠水の被害があり、地下水と土壌の間を塩・アルカリ性分が季節によって移動することで発生します。

B東・南部の海岸地域の塩害:
干拓との関係から塩害の問題があります。

2)塩性土・アルカリ性土の生成

土壌中に可溶性の塩類(アルカリ)が集積し、植物の成長を阻害する塩類土(塩・アルカリ集積土壌)は、土壌中の水分が上方に移動するときに生成します。 このような土壌は乾燥地ばかりでなく、半乾燥地や乾期のある熱帯地方にも分布します。乾燥地では降水量に比べて蒸発量が極端に多く、塩類化が起こりやすいからです。
中国の乾燥地には塩類土が広く分布し、不適切な開墾と耕作による塩類化の事例も多く、新彊の塩性・アルカリ土は1988年には総面積の5.8%を占め、 耕作可能地の31.5%に相当すします。1949年~88年に372万haを開墾しましたが、その保存率は50.4%です。また耕地の約30%が塩類化土壌です。さらに解放後、人民軍が開墾した兵団農場では、43.4%(南新彊は約40%、北新彊は約20%)が塩類化しています。 このように、乾燥地では塩類土や土壌の塩類化の問題は農業上、重要です。
灌漑は塩・アルカリ土地を利用するための重要な手段です。乾燥地では、不適切な灌漑で、2次的塩類化が起こり、塩が水に溶解した状態からナトリウムの集積が起こります。
灌漑地の土壌2次塩類化は、灌漑耕作地では斑点状、河道や老化水路の両側、平地のダム、湖沼、用水地や水田の周囲では線・帯状、浅い 用水地や水路の交差する地帯では面状になります。また、塩性土壌とアルカリ土壌がモザイク上に分布することがよくあります。
塩類化の発生原因は、@不適切な灌漑による排水不良、A不適切な平地での貯水(平地ダムは地下水位を高め、周囲の塩類化を拡大します)、 B浸水、漏水する水路、C漫然とした多量の灌漑、D無計画な水稲栽培による浸水に無防備な周辺の畑地、E凹凸地面の耕地で、被覆物が少ない場合などがあります。

3)塩性土・アルカリ性土の改良

塩類土(塩性土・アルカリ土)の改良方法は基本的には類似していますが、ここでは繰り返し述べることにいたします。

1)塩性土の改良

塩性土を農耕地として利用するには、土壌中の塩類を除く脱塩が必要で、@水利的(灌漑、排水、洗脱、水稲栽培)、A農業的(土地整理、耕作、施肥、播種、輪作、混作、客土)、 B生物的(耐塩性作物や緑肥の栽培や植林)、C化学的(改良物質の施用)などの方法があります。
塩性土が作物に害を与える主因は、土壌中の塩(アルカリ)分が地表に集積するためです。地下水位が高くなると、塩分を含んだ水が土壌中を上方に 移動して塩類が集積し、地表面に塩が析出します。
排水施設は水分の下方への移動を促進し、土壌中の塩分の移動を調節する。排水システムの改良と地下水位の制御は、塩性土の改良と2次的塩類集積(塩性化)を防ぎます。 排水システムの役割は地下水量の平衡を保ち、地下水位の上昇を防ぐことですから、幹線排水路を深く作り、地下水位を制御します。揚水ポンプによる灌漑・排水法を 他の排水システムと組み合わせると、塩類の洗脱は早く脱塩効果も大きくなります。
灌漑水により塩分を土壌下層に洗い流す洗塩は、塩集積の多い地域の開墾には不可欠です。溶解した塩分は排水路を用いて排水します。塩類が少なければ大量の 灌漑水を用いることで土壌中の塩分を除くことができます。水稲栽培は生育期に田面水位を一定に保つため、洗脱作用が持続的に進み、脱塩層は次第に深くなります。
耕地の均平化は均一な浸透を可能にし、塩類の洗脱効果を高め、不均一な塩性化を防ぎます。化学肥料を連用すると土壌は硬くなるので、塩性土の改良に有効な有機質 肥料を多く施用します。合理的な輪作、混作や草生マルチ、緑肥牧草栽培、砂礫客土による地表面被覆は水分の蒸発を減少させ、塩類の表面集積を抑制します。 植栽造成林や防風林は排水を促進します。
塩類化の防止法は、@合理的な灌漑と排水システムによる地下水位の制御、A地下水位の上昇を避ける合理的な灌漑、B井戸水の灌漑と排水システムの導入、C排水路の漏水・浸水の 防止、Dマルチ、中耕、有機物施用による土壌物理性の改良、地力増強、蒸発抑制などです。

2)アルカリ性土の改良

アルカリ土の改良としては、治水事業によって干害を防止する際に利用する灌漑水でアルカリ(塩)分を洗い流すのが最も早い方法です。ただし、これには多量の水が必要ですが、灌漑を実施した上で地下水を下げ、排水路を整備して排水することが不可欠です。 またきれいな井戸水灌漑によって、アルカリ土を洗い流すことで、地下水位のレベルが下がり、被害も減少いたします。
さらには水が豊富にあり、濃度があまり高くなければ、稲栽培によって土壌改良ができます。これには灌漑・排水路の整備が必要です。また稲栽培では稲→ 緑肥作物→稲→小麦などのようにすると効果が大きいため、土壌を肥沃化するとともに地下水位を下げ、土面からの蒸発量を減らす効果があるため、結局は アルカリ化を防止できます。
作付け体系として、稲、小麦、トウモロコシ、サツマイモ、綿、テンサイ、ひまわりなどの合理的な作物の組み合わせ・導入が必要です。
排水、土地の均平化、農道整備などの基盤設備が不可欠であり、またこれと平行して農道には防風林を造成する必要があります。 防風林は水を吸収して、葉から蒸散するため、地下水位を低下させます。また気象の改良としての減風と蒸発量の減少によって地表面でのアルカリ集積を防止します。

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