大気汚染防止法

[中華人民共和国大気汚染防止法]

1978年9月5日第6期全国人民代表常務委員会第22回会議で採択

同日中華人民共和国主席令第57号により公布

1988年6月1日施行

 

第1章 総則

第1条 大気汚染を防止し、生活環境及び生態環境の保護と改善を図り、人の健康を保障し、社会主義現代化の発展を促すため、本法を制定する。

第2条 国務院及び地方の各級人民政府は大気の環境保護活動を国民経済・社会発展計画に組み入れ、適正な工業立地計画を立て、大気汚染防止の科学研究を強化し、大気汚染防止の措置を採り、大気の環境保護と改善を図らなねばならない。

第3条 各級人民政府の環境保護部門が大気汚染の防止に対する統一的監督・管理の実施機関である。各級の公安、交通、鉄道、漁業管理部門はそれぞれの職責にもとづき、動力車両・船舶による大気汚染に対し監督・管理を実施する。

第4条 大気中に汚染物質を排出する組織は国の関係規定を遵守し、かつ汚染防止の措置を採らなければならない。

第5条 いかなる組織および個人も大気の環境保護の義務を負い、かつ大気の環境を汚染する組織および個人を告発、告訴する権利を持つ。

第6条 国務院の環境保護部門は国の大気環境質量基準を定める。省・自治区・直轄市の人民政府は国の大気汚染環境質量基準に規定されていない項目について、地方の基準を定めることができる。これは国務院の環境保護部門に届け出る。

第7条 国務院の環境保護部門は国の大気環境質量基準および国の経済的技術的条件に基づいて、国の大気汚染物質排出基準を定める。

省・自治区・直轄市の人民政府は国の大気汚染物質排出基準に規定されていない項目については国の排出基準よりも厳しい地方の排出基準を定めることができる。地方の排出基準は国務院の環境保護部門に届け出なければならない。

第8条 大気汚染の防止、大気の環境保護と改善面で顕著な成果を上げた組織および個人には、各級の人民政府によって報奨が与えられる。

第2章 大気汚染防止の監督・管理

第9条 大気中に汚染物質を排出するプロジェクトを新設、拡張、改築するときは、建設プロジェクトの環境保護管理に関する国の規定を遵守しなければならない。

建設プロジェクトの環境影響評価書は、建設工事によって生じる恐れのある大気汚染および生態環境への影響について評価し、防止措置を定め、かつ所定の手続きに従って環境保護部門の審査、許可を受けなければならない。建設プロジェクトは生産又は使用を始めるに先立ち、大気汚染防止施設について環境保護部門の検査を受けなければならず、国の環境保護管理規定の要求に達していない建設プロジェクトは、生産または使用を始めてはならない。

第10条 大気中に汚染物質を排出する組織は、国務院環境保護部門の規定に従い、所在地の環境保護部門に対し、保有している汚染物質排出施設、および通常の作業条件のもとで排出する汚染物質の種類、数量、濃度を申告し、かつ大気汚染防止法に係わる技術資料を提出しなければならない。

排出する汚染物質の種類、数量、濃度に大きな変更のある場合には、遅滞なく申告しなければならない。汚染物質の施設を取り壊すかまたは取り外す場合には、所在地の環境保護部門の同意を求めなければならない。

第11条 大気中に汚染物質を排出する組織は、規定の排出基準を越えた場合には、処理のための有効な措置を採り、かつ国の規定に従って基準超過排出量を納めなければならない。徴収した基準超過排出量は汚染防止に使用しなければならない。

第12条 国務院および省・自治区・直轄市人民政府が指定した景勝地、自然保護区その他特別の保護を必要とする区域では、環境を汚染する工業生産施設を建設してはならない。その他の施設を建設するときも、汚染物質の排出は規定の排出基準を越えてはならない。本法の施行以前に企業・事業体が完成させた施設で、汚染物質の排出基準を越える場合には、期限を定めて処理させる。

第13条 市、県または市、県以下の人民政府が管理する企業・事業体の期限付き処理については、市、県人民政府の環境保護部門が意見を出し、同級の人民政府が決定する。中央または省・自治区・直轄市の人民政府が直接管轄する企業・事業体の期限付き処理については、省、自治区、直轄市人民政府の環境保護部門が意見を出し、同級の人民政府が決定する。

第14条 事故あるいはその他突発的事件の発生によって有毒有害なガスおよび放射性物質を排出するか、または漏泄して、大気汚染事故を引き起こし人の健康を害するかまたはその恐れがある組織は、直ちに大気汚染による被害を防止する応急措置を講じ、大気汚染の被害を受ける恐れのある組織と住民に通報し、かつ地元の環境保護部門に報告して調査・処分を受けなければならない。

第15条 環境保護部門その他の監督・管理部門は、管轄範囲内の排出組織に対して立入り検査をする権限を有し、被検査組織は状況をありのままに報告し、必要な資料を提出しなければならない。検査部門は被検査組織の技術秘密および業務秘密を守る義務を負う。

第16条 国務院の環境部門は大気汚染監視制度を確立し、監視網を作り、統一的な監視方法を定めなければならない。

第3章 煤塵汚染の防止

第17条 国務院の関係主管部門は国のボイラー煤塵排出基準に基づいて、ボイラーの品質基準中に相応の要求を設けなければならず、規定の要求に達していないボイラーは製造、販売または輸出してはならない。

第18条 新しく建設される工業窯炉、新しく据え付けられるボイラーの煤塵排出は、規定の排出基準を越えてはならない。

第19条 都市建設では全面的に計画を立て、熱源問題を統一的に解決し、集中供熱を発展させるものとする。

第20条 国務院の関係部門および地方の各級人民政府は措置を講じて都市の燃料構成を改善し、都市ガスを発展させ、成形炭の生産と使用を押し広めなければならない。

第21条 人口密集地域に石炭、脈石、石炭殻、石炭灰、石灰を放置するときは、防火・防塵措置を講じ、大気汚染を防がなければならない。

第4章 廃ガス、粉塵および悪臭汚染の防止

第22条 大気中に有毒物質を含む廃ガスおよび粉塵を排出することを厳しく制限する。確かに排出の必要がある場合には、浄化処理を施し、規定の排出基準を超えないようにしなければならない。

第23条 工業生産において発生する可燃性ガスは回収・利用しなければならず、回収・利用の条件がなく、大気中に排出する場合には、汚染防止の処理を行わなければならない。

大気中に転炉ガス、アセチレンガス、電気炉法黄リンのテールガス、有機炭化水素類のテールガスを排出する場合には、所轄環境保護部門の許可を受けなければならない。

回収・利用装置が正常に作動しないために確実に可燃性ガスを排出する必要がある場合には、排出する可燃性ガスを十分に燃焼させるか、またはその他大気汚染の制限措置を講じなければならない。

第24条 石油精製、合成アンモニアや石炭ガスの生産、石炭コークス化、非鉄金属精練の過程で硫化物を含んだガスを排出する場合には脱硫装置を設置するか、またはその他の脱硫装置を採らなければならない。

第25条 大気中の放射性物質を含むガスおよびエアロゾトルルを排出するときは国の放射線防護に関する規定に適合していなければならず、規定の排出基準を越えてはならない。

第26条 大気中に悪臭ガスを排出する排出組織は、周辺居住区の汚染を防ぐ措置を採らなければならない。

第27条 大気中に粉塵を排出する排出組織は、除塵装置を採らなければならない。

第28条 人口密集地域ではアスファルト、フェルト、ゴム、プラスチック、皮革その他有毒有害な煙塵および悪臭ガスを発生する物質を燃やすことを禁止する。特別な事情があり、確かに燃やす必要がある場合には、所轄環境保護部門の許可を受けなければならない。

第29条 有毒有害なガスまたは粉塵を飛散させる恐れがある物質の輸送、荷役、貯蔵するときは、密閉措置またはその他の防塵措置を採らなければならない。

第30条 動力車両・船舶が大気中に汚染物質を排出するときは、規定の排出基準を越えてはならず、規定の排出基準を越える動力車両・船舶については、処理措置を採らなければならない。国の排出基準を越える汚染物質を排出する自動車は、製造、販売、または輸入してはならない。具体的な監督・管理規定は国務院が定める。

第5章 法的責任

第31条 本法の規定に違反して、以下に記載する行為の一つをなした場合、環境保護部門その他の監督・管理部門は情状に応じて、警告を与えるかまたは罰金に処することができる。

  1. 国務院の環境保護部門が定める、汚染物質の排出に関する事項の申告を拒むか、または虚偽の申告をすること。

  2. 環境保護部門の同意を得ないで、汚染物質防止施設を勝手に取り壊すかまたは取り外し、規定の排出基準を越える物質を排出すること。

  3. 環境保護部門その他監督・管理部門の立入り検査を拒むかまたは検査の際に虚偽を弄すること。
  4. 第28条の規定に違反して、人口密集地域でアスファルト、フェルトその他有毒有害な煙塵および悪臭ガスを発生する物質を燃やすこと。

  5. 国の規定どおりに基準超過排出料を納付しないこと。

第32条 大気汚染防止施設が完成していないか、または建設プロジェクトの閑居保護管理に関する国の規定の要求に達していないまま、建設プロジェクトの生産または使用を開始した場合には、当該建設プロジェクトの環境影響評価書を審査、認可した環境保護部門が生産または使用の中止を命じた上、罰金を併科することすることもできる。

第33条 期限付きの処分を受け、期限が過ぎても処理任務を完了していない企業・事業体に対しては、国の規定に従って基準超過排出料を徴収するほか、引き起こした危害の程度に応じて罰金を処するか、または業務停止、閉鎖を命じることができる。

罰金は環境保護部門が決定する。業務停止、閉鎖の命令は、期限付き処理の決定をした人民政府が決定する。中央管轄の企業・事業体に業務停止、閉鎖を命ずるときは、国務院の承諾を受けなければならない。

第34条 本法の規定に違反して、大気汚染を引き起こした企業・事業体については、環境保護部門が危害の程度に応じて罰金に処する。情状が比較的重い場合には、関係責任者に対し、所属組織はまたは上級の主管部門が行政処分をする。

第35条 当事者は行政処罰決定に不服がある場合、処罰決定の通知を受けた日から15日以内に、人民法院に訴えを提起することができる。期間が満了しても訴えを提起せず履行もしない場合には、処罰決定をした機関が人民法院に強制執行を申し立てる。

第36条 大気汚染の害を生じさせた組織は、危害を排除しかつ直接の損害を受けた組織または個人に対し損害賠償の責任を負う。

賠償責任および賠償金額をめぐる紛争は、当事者の請求にもとづき、環境保護部門が処理することができる。当事者は処理の決定に不服がある場合人民法院に訴えを提起することができる。当事者は人民法院に直接訴えを提起することもできる。

第37条 完全に不可抗力の自然災害により、かつ遅滞なく適正な措置を講じてもなお大気汚染による損害を回避できなかった場合には責任を免除する。

第38条 重大な大気汚染事故を引き起こし、公共・個人財産の重大な損害または、重大な死傷を招いた場合は、関係責任者について「中華人民共和国刑法」第115条または187条の規定に照らして、刑事責任を追及することができる。

第39条 環境保護の監督・管理者が職権を乱用し、職務をおろそかにした場合には、行政処分する。犯罪を構成するときは、法にしたがって刑事責任を追及する。

第6章 付則

第40条 国務院の環境保護部門は本法に基づいて実施細則を定め、国務院の承諾を受けて施行する。

第41条 本法は1988年6月1日から施行する。