中華人民共和国水汚染防止法

(1984年5月11日第8回全国人民代表大会常務委員会第5次会議にて通過、1984年5月11日 公布、1984年11月1日施行)

第1章 総則

第1条 水汚染を防止し、環境の保護と改善をして人民の健康を保証し、水資源を有功的に活 用し、あわせて現代社会主義者会建設と発展のためにとくに本法を制定する。

第2条 本法は中華人民共和国内の河川、湖沼、運河、水路、ダムなどの地表水、および地下 水源の汚染防止のために適用するものである。

第3条 国務院の各関係部門と地方各級人民政府は、必ず環境保護事業を計画に入れて、水汚 染防止のための対策を取らなければならない。

第4条 各級人民政府の環境部門は水汚染防止対策を実施する統一管理機関である。また、各 級交通部門の船舶行政部門は船舶からの汚染防止を監視する機関である。

なお、各級人民政府の水利管理部門、衛生行政部門、地質鉱産部門、市政管理部門、 主要な河川の水源保護機構は、各職責によって環境保護部門と協力し、水汚染防止改 善法を実施する。

第5条 各村、個人はそれぞれ水環境を保護する責任があり、同時に水環境を汚染し損害を与 える行為に対しては監督し告発する責任がある。

また、水汚染によって直接被害を受けた事業所や個人は、加害者に対して被害を排除 し、賠償損失を要求する権利を持っている。

第2章 水環境基準と汚染物質の放流基準

第6条 国務院環境部門において環境基準を制定する。省、自治区、直轄市の人民政府は国で 決めた環境基準以外の項目と、補充基準を決めることができる。この場合、国務院環 境保護部門に報告しなければならない。

第7条 国務院環境保護部門では、水環境と国の経済、技術条件を考慮して汚染物の放流基準 を決める。省、自治区、直轄市の人民政府は決められた放流基準を施行する場合、あ る地方の水源水が環境基準に達していないときには、国で決めた基準よりさらに厳し い基準を決めることができる。この場合国務院環境保護部門に報告しなければならな い。

また、汚染物質の放流基準が決められている水源に汚染物質を放流する場合はその基 準を適用する。

第8条 国務院環境保護部門と省、自治区、直轄市の人民政府では、水汚染防止改善要求と国 家経済、技術条件によって適当な時に、環境基準と汚染物質の放流基準を改正するこ とができる。

第3章 水質汚染防止の管理・監督

第9条 国務院関係部門と地方各級人民政府は、水源の開発や利用と調節を計画するにあたっ ては、河川流量、湖、ダム及び地下水位、水源の持つ自然浄化能力等について配慮し なければならない。

第10条 国務院関係部門と地方人民政府は必ず都市用水源の保護と汚染防止、改善などについ て都市建設計画の中で下水道、汚水処理の計画を組み込まなければならない。

第11条 国務院関係部門と地方各級人民政府をおいては工業立地計画を合理的に行わなけれ ばならない。また、汚染源となっている工場に対しては技術的な改善や再配置などに よって総合的な防止対策をしなければならない。同時に、水の再利用を高め、水資源 の合理的な利用を行うとともに、汚水量、汚濁物質量を減少させるようにする。

第12条 県級以上の人民政府では、生活飲料水源、風景名勝地水源、重要漁業用水源とその他 の価値のある重要な経済文化の水源などについて保護区を設けて特別措置をとるこ とができる。この場合の保護区の水源は、その用途にかなう水質基準にならなければ ならない。

第13条 新設、増設、改築した施設あるいはその他の水上施設から直接、あるいは間接的に水 源に汚染物を放流する場合は、必ず国が定めた関係建設事業の環境保護管理規定を守 らなければならない。

建設事業の環境影響報告書には、必ずその事業が水汚染と生態環境に対しての影響を 評価する以外に、防止措置を定め、規定の手続きにしたがって関係環境部門の審査、 承認を受けなればならない。

運河、水路、ダムなどの水利工事に伴う廃吸い口の設置にあたっては、関係すいる工 事管理部門の許可を取らなければならない。

建設物が生産あるいは供用を開始する場合には、その水質汚濁防止施設について環境 保護部門の検査を受けなければならない。もし規定に達していない場合建物を使用す ることはできない。

第14条 水源水域に汚染物を直接あるいは間接的に放流しようとする企業、事業所では国務 院環境保護部門の規定により、所在地の環境保護部門に、通常の状態での汚染物の 種類、量と濃度、汚染物処理施設及び放流施設について登録申請する以外に、水汚 染防止に関する技術資料を提出しなければならない。

また、排出汚染物の種類、量と濃度が大きく変わった場合、直ちに報告しなければ ならない。なお、汚染物の処理施設の撤去ないし使用を中止する場合は、事前に申 告して環境部門の許可をとらなければならない。

第15条 工場事業所が水源水域に汚染物を放流する場合は、国の規定によって汚染物の放流 費を払わなければならない。もし、放流する汚染物が国あるいは地方政府の決めた 基準値を超えた場合には、その超過排出料を納付すると同時に、責任を持って処理 をしなければならない。

第16条 水源を著しく汚染させた工場事業所では、期限を限って改善措置をとらなければな らない。中央、または省、自治区、直轄市の人民政府が直接管理している工業事業 所の改善期限については省、自治区、直轄市の人民政府の環境保護部門で処理対策 を提出して、同級人民政府が決定する。汚染物を放流する工場事業所では期限内に 責任を持って処理を行わなければならない。

第17条 生活飲料水源が著しく汚染され、水の供給が緊迫して緊急事態が生じた場合、環境 保護部門では同級人民政府の承認を受けて関係企業、工場事業所に対して、汚染物 放流量の減少、あるいは放流停止を含めて強制措置を講じなければならない。

第18条 各級の人民政府の環境保護部門および関係の監督管理部門では、管轄範囲内の工場 事業所に対して立入検査を行う権限を有する。同時に検査を受ける工場事業所では、 状況に応じた説明を行うことはもちろん、必要に応じた資料を提出しなければなら ない。検査する機関では、検査した工場事業所の技術上、業務上の秘密を守らなけ ればならない。

第4章 地表水の汚染防止

第19条 生活飲料用水源、風景名勝地区の水源、重要漁業水源とその他の特殊経済文化的価 値のある水源保護区内には、新しい汚染物排出口を設置してはならない。もし、保 護区内の近くに新しい排出口を設置する場合には、保護区内の水源が汚染されない よう保証されなければならない。この法律が公布される前に設置している排出口に 対しても、国あるいは地方が決めた新しい基準を守らなければならないし、基準を 超えた場合は改善措置をとらなければならない。もし、排出された汚染物が飲用水 に影響を与えるような場合は、その排出口を移動させなければならない。

第20条 工場事業所では事故その他の突発的な事件を起こし、排水基準を超えて水源を汚し、 あるいは汚す恐れが生じた場合には、直ちに緊急対策を講じると同時に、被害が起 こる恐れのある関係機関に連絡する。また、地元の環境保護部門まで報告しなけれ ばならない。船舶による汚染事故の場合には、近くの航運機関に報告し、調査、処 分を受けなければならない。

第21条 水域に油類、酸液、アルカリ液または劇毒廃液を排出してはならない。

第22条 水域で油類、または有毒汚染物を入れた車両や容器を洗浄してはならない。

第23条 水銀、カドミウム、ひ素、クロム、鉛、シアン化合物、黄リンなどの可溶性劇毒廃 棄物を水域に排出、投棄、または直接に地中に埋め立てすることはできない。また、 可溶性劇毒廃棄物の保管場所は必ず防水、滲漏栄防止、流失防止の措置をとらなけ ればならない。

第24条 水域に工業廃棄物、都市ごみとその他の廃棄物を投棄したり、放流したりしてはな らない。

第25条 河川、湖、運河、水路、ダムなどの高水位線以下の川辺、岸辺に固体廃棄物やその 他の汚染物を堆積、保存してはならない。

第26条 水域に放射性固体廃棄物を投棄したり、高放射性あるいは中放射性物質を含む排水 を放流してはならない。

また、水域に低放射性物質を含む排水を放流する場合には、必ず国の定めた関係放 射能防護規定と基準を守らなければならない。

第27条 水域に熱排水を放流する場合には、必ず処理をして熱汚染防止策をとらなければな らない。

第28条 病原体を含む汚水を放流する場合には、必ず消毒処理を行い、国が定めた関係基準 以下にして放流しなければならない。

第29条 農業用水路に工場排水や都市排水を放流する場合は、下流の農業用水の水質基準以 下でなければならない。

工場排水と都市排水で灌漑する場合は、土壌や地下水、農産物が汚染されてはなら ない。

第30条 農業を使用する場合には、国の農薬安全仕様に関する規定と基準を守らなければな らない。

農薬の運搬、保存あるいは有効期間を過ぎた農薬は、管理を強化して水汚染になら ないように注意しなければならない。

第31条 船舶から油を含んだ汚水や生活排水を放流する場合には、船舶汚染物放流基準を守 らなければならない。海運に従事する船舶が内水面および港湾に入る場合は、そこ の船舶汚染物排出基準を守らなければならない。

船舶の廃油は必ず回収して水域の汚染防止を行わなければならない。また、水域に 船舶ごみを投棄してはならない。

船舶で油あるいは毒物を運搬する場合は、滲流および滲漏の防止措置を行うととも に、貨物の落下による水質汚濁を防止しなければならない。

第5章 地下水の汚染防止

第32条 工場事業所では井戸、穴による浸透、割れ目、鍾乳洞を利用して有毒汚染物、病原 体を含む汚水とその他の廃棄物を放流したり、投棄したりすることを禁止する。

第33条 工場、事業所は、よい不透水層がなかった場合、また浸透、漏水防止措置のない用 水路、穴、池などで、有毒汚染物を含んだ排水、病原体を含んだ汚水とその他の廃 棄物を輸送したり、保存してはならない。

第34条 多層の地下水を揚水する場合、多層の水質に大きな差があるときは各層ごとに揚水 しなければならない。汚染された浅層水と被圧地下水の混合揚水はできない。

第35条 地下工事、ボーリング探査、採鉱等の場合は、防護措置をとって地下水の汚染防止 を行なわなければならない。

第36条 地下水の人工涵養を行う時には、地下水の汚染防止に努めなければならない。

第6章 法的責任

第37条 この法律の規定に違反して次の行為があった場合には、環境保護部門あるいは交通 部門の航運行政機関では、それぞれの状況に応じて警告あるいは罰金を科すること ができる。

(1) 国務院環境保護部門で規定された関係汚染物質の排出に関する登録事項を拒否したり、あ るいは虚偽の報告を提出した場合。

(2) 建設物に水質汚染防止のための施設ができていない、あるいは建設不潔の環境保全管理に 関する国が規定した要求に達していないのに生産もしくは使用を開始した場合。

(3) 環境保護部門あるいは関係の監督管理部門の現場検査を拒否したり、あるいは虚偽の申し 立てたりした場合。

(4) この法律の第4章、第5章の関係規定に違反して、汚染物、廃棄物を貯蔵、遺棄、投棄し て排出した場合。

(5) 国の規定による汚染物排出料、または基準超過排出料を納入しなかった場合。

罰金の方法と金額については、この法律の実施細目により規定される。

第38条 水域を著しく汚染させた工場、事業所に期限を定めて改善させる場合、期限までに 改善されない時は、国の規定に従い2倍以上の超過排出料を支払わせることができ る。その被害と損害に応じ罰金に処し、または操業停止もしくは業務停止を命じる ことができる。

罰金については環境保護部門で決定する。地方人民政府は期限付きの改善命令を決 定すると同時に、工場事業所に対して操業停止あるいは業務停止を命じることがで きる。中央政府が直接管理している工場事業所に対して操業停止あるいは業務停止 を命じる場合には、国務院の承認を受けなければならない。

第39条 この法律の規定に違反して水質汚染事故を起こした工場事業所に対しては、環境保 護部門あるいは交通部門の航運行政機関で、その被害と損害に応じて罰金に処する。 情状が比較的重い場合には、関係責任者に対しては所属事務所あるいは上級の主務 機関から行政処分を行う。

第40条 当事者が行政処分に対して不服がある時は、通知を受けたその日から15日以内に、 人民法院に訴えを提起することができる。期間内に提訴もせず、また履行もしない 場合には、処罰決定を行った機関から人民法院に強制執行を申し立てる。

第41条 水質汚染の被害を生じた事業所は、被害を除去する責任を持つと同時に直接損害を 受けた事業所または個人の損害を賠償する責任を有する。

賠償責任と賠償金額をめぐる紛争は、当事者の要請に基づき、環境保護部門または 交通部門の航運行政機関で処理することができる。当事者が処罰の決定に不服があ る場合は、人民法院に提訴することができる。また、当事者は人民法院に直接訴え を提起することもできる。水質汚染による損害が第三者の故意あるいは過失によっ て起こった場合には、第三者は責任を負わなければならない。

水質汚染による損害が被害者自身の責任によって生じた場合は、汚染物放流事業所 では責任を負わない。

第42条 完全に不可抗力的な自然災害によるもので、合理的な対策を講じてもなお水質汚染 による損害を回避できない場合には、その責任は免除する。

第43条 この法律の規定に違反して重大な水質汚染事故を起こし、公共、個人財産の重大な 損害を与えたり、人身死傷など深刻な結果を招いた場合には、刑法第115条あるい は187条の規定により関係責任者に対して刑事責任を追及する。

第7章 附則

第44条 この法律中の用語説明(省略)。

第45条 国務院環境保護部門ではこの法律に基づいて、実施細目を国務院の承認を受けた後施 行する。

第46条 この法律は1984年11月1により施行する。