中華人民共和国環境保護法

 

第1章 総則

第1条 本法律は、社会主義の近代化建設の発展を推進するために、人間の健康を保護し、生活環境及び生態環境を保護・改善し、汚染や公害を防止・抑制することを目的とする。

第2条 本法律による「環境」とは、人類の生存・進化において影響を与えた多くの自然及び人類が創造を加えた自然要素の総体を意味し、大気、陸水、海洋、陸地、鉱物資源、森林、草原、野生生物、歴史的景観、歴史的遺跡、自然保護地域、景勝地、都市、農村を含んでいる。

第3条 本法律は、中華人民共和国内、および中華人民共和国の主権の及ぶ海域において適用される。

第4条 国家により作成される環境保護計画は、国家の経済・社会発展計画に組み込まれる。また国家は、経済建設や社会発展と環境保護を強調させるべく、環境保護に有効な経済・技術政策や手段を講じる。

第5条 国家は、環境科学教育の発展、科学・技術研究の推進、環境保護の発展、環境保護における科学技術レベルの向上に努め、そして環境科学に関する知識の公表に際してはこれを保護する。

第6条 すべての団体及び個人は、環境を保護する義務を負い、また環境を汚染し影響を与えた団体や個人に対して、裁判所に訴訟を起こす権利を有する。

第7条 国務院において環境保護に責任を持つ行政部局は、国家の環境保護のために、統一的な管理、監督を行う。

県級及びそれ以上において環境保護に責任のある行政部局はそれぞれの管轄区において、環境保護の管理、監督を実施するための組織である。

海事、港湾監督、漁場管理に責任のある国の行政部局、軍隊の環境保護部局、及び各級の公安、運輸、鉄道、民間航空部局はそれぞれの関連する法律の規定に従い、環境汚染防止対策に対する管理、監督を行う。

県級及びそれ以上の土地、鉱山、森林、農地や水質保護の行政機関は関連する法律の規定により、自然保護の管理監督を実施する。

第8条 明らかに環境を保護し、改善を行った個人・団体は、人民政府により報酬が受けられる。

第2章 環境監督管理

第9条 国務院において、環境保護に責任のある行政部局は、国の環境基準を定める。省、自治区、直轄市の人民政府は、国の環境基準に明記されていない各々の項目に対する環境基準を定め、それを国務院において環境保護に責任のある行政部局に報告する。

第10条 国務院において、環境保護に責任のある行政部局は、環境基準及び国の経済・技術状況を考慮し、国の汚染物質排出基準を制定する。

省、自治区、直轄市の人民政府は、国の汚染質排出基準に定められていない各々の項目に対する地方独自の汚染質排出基準を定める。また、国の汚染質排出基準に決められた項目について、より厳しい地方独自の汚染質排出基準を定める。すべての地方の汚染質排出基準は、国務院において環境保護に責任のある行政部局に報告され記録保存される。地方の汚染質排出基準の存在する排出汚染質は、地方の基準を守る。

第11条 国務院において環境保護に責任のある行政部局は、観測システムの制度、観測規範の制定、他の関連部局と協力して観測網の組織化および環境環境観測管理の強化を図る。国務院、省、自治区、直轄市の環境保護・責任のある行政部局は、定期的に所轄の環境状況公報を発行する。

第12条 県級及びそれ以上の環境保護に責任のある行政部局は、他の関連部局と共同で所轄の環境状況の測定および評価を実施し、また、環境計画の作成を行い、および計画部局の調整後同レベルの人民政府に提出し、承認を受け実施する。

第13条 環境汚染を起こす恐れのある事業は、関連する環境保護管理の規定を守る。事業を推進する上で、環境に影響を与える計画書は汚染に対する評価および事業の環境影響、汚染防止および管理の規定された方法を含むものである。

建設プロジェクトの環境影響報告書は、汚染に対するアセスメント、建設プロジェクトの環境に対する影響および汚染防止と管理に関わる規定された方法に対する記述を含む。この報告書は、規定の手続きに従いプロジェクト管轄機関に予備審査のため提出され、承認のため環境保護に責任のある部局へ提出する。環境影響報告書が承認されるまで、計画部門は建設項目設計任務書を承認しない。

第14条 県級以上の環境保護に責任のある部局、あるいは法律により環境管理・監督を遂行している部門は、管轄内の汚染質を排出している団体に対する現地検査を行う権限を持つ。検査される団体は正確な状況および必要な情報を提出する。検査部局は、検査対象団体の技術的、業務秘密を漏らしてはならない。

第15条 複数の行政区域に関わる環境汚染および破壊の防止および管理は関係する地方人民政府の協定により、または、上級レベルの人民政府の調整により処理される。

第3章 環境の保護と改善

第16条 全てのレベルの人民政府は、所轄内においての環境質に対して責任を負う。そして環境質を改善するための措置を講じる。

第17条 全てのレベルの人民政府は、様々な種類の典型的特質を備えた自然生態系区域、珍しくまた危機の状態にある野生動植物分布地区、重要水源保護地区、高い科学的・文化的価値のある地質構造を持った地区、著名な鍾乳洞および化石分布地区、氷河、火山・温泉などの自然遺跡、人的遺跡、名木等の破壊に対して防止するための手段を講じる。

第18条 環境汚染を起こす恐れのある工業生産設備は、国務院や国務院における関係する行政部局、省・自治区・直轄市の人民政府により定められた景勝地や自然保護地区内では建設を行わない。他の工場の建設は汚染・排出基準を越えて汚染質を排出しない。汚染排出基準を越える汚染質を排出する設備は、汚染除去および制御のためのガイドラインを設ける。

第19条 自然資源を開発・利用するにあたっては、生態環境を保護するために、何らかの措置が講じられる。

第20条 全てのレベルの人民政府は、農業環境保護を促進し、土壌汚染、砂漠化、土壌塩化、沼化、水質悪化、地滑りを防ぎ、森林破壊、土壌浸食、水源枯渇および他の生態学的不均衡を防止し、植物病害虫の合理的防止及び合理的な化学肥料、農薬や他の生物成長ホルモンの使用の普及を行う。

第21条 国務院及び沿岸地域の地方人民政府は、海洋の環境保護に務める。海への廃棄物の投棄、沿岸建設事業や沖合調査、開発における海への汚染物の排出は、汚染や海洋環境の汚染損害を防止しなければならない。

第22条 都市の計画、目標、事業の作成にあたっては環境を守り改善をするべく実施される。

第23条 都市及び農村での建設においては、植生、水域、自然の景観を守り、都市庭園、緑地、景勝地の建設を強化するために地方の自然の特性を考慮に入れる。

第4章 環境汚染と公害の防止

第24条 環境汚染及び他の公害をもたらす団体は、生産計画の中に環境保護の項目を示し、環境保護義務を負う。そして生産及び建設家庭又は他の活動により生じた環境に影響をあるいは傷害を与える騒音、振動、電磁放射線、排出ガス、排水、廃棄物、粉塵、悪臭、放射性物質を防ぎ管理するための効果的な施策を実施する。

第25条 新しい工業企業の設立及び存在している企業の変革においては、高い資源の利用率及び少ない汚染質の排出を備えた装置及び技術を取り入れ、廃棄物利用及び汚染物処理の合理的・経済的かつ広汎な技術が適用される。

第26条 いかなる建設事業においても、汚染防止及び管理のための施設が計画、建設され、主要な事業と同時に操業される。

汚染と防止、管理する施設はむやみに取り除いたり放置しない。取り除いたり放置してもよろしい施設は、環境保護に責任のある行政部門により許可される。

第27条 汚染質を排出している企業か団体は、国務院において環境保護に責任のある行政部門の規定も従って報告及び登録を行う。

第28条 国あるいは地方の汚染質排出基準を越えている企業・団体は、国の規定に従い超過排出量に対して罰金を支払う。また汚染の減少及び管理に責任を負う。水質汚濁防止及び中華人民共和国環境保護法が適用される地域において、以上の規定は履行される。

第29条 重大な汚染を引き起こす企業や団体に対しては、汚染質の減少及び管理に対して期限を定めて処理する。

国、省、自治区、直轄市の人民政府の所轄かの企業や団体に対する処理期限は省、自治区、直轄市の人民政府により設定される。、あるいはそれ以下のレベルの所轄の団体に対する処理期限は、市、県の人民政府により設定される。汚染質を最低級以下に減少あるいは管理するように命じられた企業や団体は、期限までに除去及び管理目標を遂行する。

第30条 国家により指定された環境保護に関する国家基準に適合しない技術及び装置の輸入は禁じられる。

第31条 偶発及び緊急の事故により、重大な汚染事故を起こし、あるいは起こす恐れのある団体は、それを防止するための手段を講じる。すぐに影響を受ける団体・個人にお知らせ、環境保護に責任のある地方行政部局及び他の関わりのある部門に報告する。そして調査を及び処置のための準備をする。

重大な事故を起こす恐れのある団体は、可能性のある事故に備えて対策を行う

第32条 環境がはなはだしく汚染し、住民の生活や財産を脅かしている地域は、県級あるいはそれ以上の環境保護に責任のある行政部局が人民政府に速やかに報告しなければならない。そしてこれらの人民政府は除去あるいは軽減のための効果的な手段を講じる。

第33条 有害化学物質や放射性物質を含む物質の製造、貯蔵、移動、売買、使用においては国家により指定された関連基準を守り、環境への汚染を防止する。

第34条 団体に重大な汚染をもたらし、汚染を防止あるいは管理することのできない生産施設はどのような団体でも変化させてはならない。

第5章 法律責任

第35条 この法律の規程に違反し、次のような行為があった場合、環境保護に責任のある行政部門又は環境管理・監督を遂行している行政部門及び他の部局は、状況に応じて法律に従い、警告し、罰金を科す。

(1) 環境管理及び監督を遂行している行政部門及び他の部門の法律に基づく現況報告を拒むこと、また故意にごまかす行為を行うこと。

(2) 汚染質排出について、国務院に属し、環境保護に責任のある行政部門が必要とする登録項目について報告を拒み、また偽りの報告を行う。

(3) 汚染質の排出過剰に対する我が国の規定をしたがって罰金を支払うことを怠ること

(4) 環境保護に対して国の必要条件を満たしていない技術及び装置を輸入すること。

(5) 汚染を防止・管理能力のない団体に、重大な汚染をもたらす生産施設を移転・使用すること。

第36条 汚染防止・管理装置を備えておらず、また国家の基準に適合してない装置で操業あるいは使用中である建設事業は、環境保護に責任のある行政部門により生産及び操業を中止するよう命じられ、また罰金を科せられる。

第37条 環境保護に責任のある行政部門の認可なく、汚染防止及び管理設備をむやみに撤去あるいは稼動させない団体は、環境保護に責任のある行政部門により再設置あるいは使用の用に足るように命令される。

第38条 この法律に違反し、その結果重大な環境汚染事故を起こした企業は、その結果生じた被害に応じて、環境保護に責任のある行政部門あるいは他の法律により環境、管理、監督を遂行している部門により罰金を科せられる。最も重大な場合は、責任者は属する団体あるいは管轄環境官庁により懲戒罰を受ける。

第39条 汚染を排除し管理することを要求され、定められた期限内に仕事を遂行できなかった企業や団体は国の規定に従いに対し、汚染不課税を支払う。引き続き起こる損害に対して罰金を科せられ、また中止あるいは閉鎖を命じられることがある。

前項に示した罰金については、環境保護に責任のある部局が決定すると。生産停止、閉鎖の命令は、汚染削減と処理に対する期限を設けた人民政府が決定する。もしこの企業や団体が、国務院の部局に属している場合

第40条 行政裁可の決定の受け入れに不服な当事者は、決定が告げられてから15日以内に上級の管理機関に再審の申し立てを行う。再審の決定を拒否する当事者は、この決定を告げられてから15日以内に人民裁判所に対して訴訟を起こす。

当事者は、また再審を待たずに直接人民裁判所に対して訴訟を起こすことができる。再審に対しての申請、および裁判所への訴えを行っていない場合は、裁定を行った機関は、人民裁判所に対して、強制執行を要請する。

第41条 環境汚染や影響を起こした団体は、影響を削減する責任を持ち、また直接的に被害を受けた団体や個人に対して補償を行う。補償責任あるいは金額に関する当事者の要求による紛争は、環境保護に責任のある行政部門あるいは法律に従い、環境管理、監督を進行している他の部門により処理される。決定を不服とする当事者は、訴訟を管轄する人民裁判所へ起こす。また、当事者は直接裁判所に訴訟を起こす。

もし環境汚染の影響が人の管理の届かない自然災害によるものであったり、また合理的な施策が取られていたにもかかわらず避けることができなかった場合、当事者は責任を免れる。

第42条 環境汚染の影響を受けたことによる裁判所への訴訟の期限は3年である。こういった汚染による影響が知らされるか又は知った日付が開始日とみなされる。

第43条 本法律違反により、重大な公的および私的財産の損失あるいは重大な障害あるいは死亡をともなう重大な環境汚染事故を引き起こした場合、直接責任者は刑法に従い起訴される。

第44条 本法律違反により、本法律違反により土地、森林、草原、水源、鉱物、漁業、野生動物、そして植物などの自然資源に影響を及ぼした場合は、指定された相当法により

第45条 もし環境保護管理・監督者が義務を怠ったり、個人的な目的のために法律を曲げた場合は懲戒罪を科する。また、犯罪を犯した場合には、刑法により起訴される。

第6章 付則

第46条 中華人民共和国が締結あるいは加盟した国際間の環境保護に関する条約に、中華人民共和国の法律と異なるどのような規定も、中華人民共和国が留保している保護条約を除き国際間の条約は適用される。

第47条 この法律は公布したその日より施行する。同時に中華人民共和国環境保護法(試行)は効力を失う。