個人的に注目してましたが、どうも音沙汰ない、というか新作の発表のないあの作家さんたち。いったい、今、何をされてるのでしょうか?
情報を求めつつ、著作の簡単なレビューをやってみようというコーナーです。
1.山本亜紀子
1968年京都生まれ。『穴』で2001年第四回四谷ラウンド文学賞受賞。
他、『恋風吹く京』という作品が1996年に出版されてますが、それ以外の著作は一切無し。
とにかく『穴』のインパクトが強烈だっただけに、今、私が最も次作を切望している作家。
- 『穴』
- 角川ホラー文庫 2004.7
- 安アパートに住む作家。締め切りが迫る中、部屋の壁に開いた穴を覗くと、そこには美しい女の寝姿が……。
- 新人のデビュー作というのは、とかく粗が多く、選者が買ったであろう「粋の良さ」を差し引いても読むのが辛いものが多い。
だが、今作は一読仰天、ぐいぐいと引きずり込まれるような濃密さ、こちらに現実と異界の狭間をポンと飛び越えさせてしまうような軽妙さ、ラストに向けてむらなく張り巡らされた伏線、オーソドックスながらストーリーテリングのツボを押さえた展開、めちゃ面白かった。
いったい何者?と思って調べてみたが、他の著作は96年に一冊あったきりで、他には一切なし! もったいねえ〜もっと読みてえ〜。どういう人か知りませんが、ホラー文庫進出をきっかけに、次作を書く事希望。
2.佐々木禎子
1964年札幌市生まれ。1992年雑誌『JUNE』にてデビュー。
参考→『たららん商会』 ご本人運営の公式サイト
あの人は今、とか言うと失礼(笑)。本業はホラー小説じゃないので、ボーイズもので順調に活動中のご様子。
とは言え、またそのうち書かないものだろうか。いつか掲示板にリクエストしてみよう。
- 『鬼石』
- ハルキホラー文庫 2000.8
- 中学生になって初めての夏を迎えたえりか。自分の住む「鬼石町」のルーツと、襲い来る女の妄執とは……?
- 『くくり姫』
3.図子慧
1986年、第8回コバルト・ノベル大賞入選。
参考→『あ・ら・Cult』 kamoさんの運営されるファンサイト
『閉じたる男の抱く花は』以来 、新作はなし。
隠れた実力派という印象の作家。
書いてる物を読む限り、男の趣味は悪そうだが……(汗)。
- 『媚薬』
- 角川ホラー文庫 2000.3
- マレーシアの蘭園にいた謎の男。異様に太った男が現れた時、謎の媚薬が媒介され、街に死が振りまかれる。
- いささか散漫な印象の話なのだが、ビジュアル的不気味さは最高レベル。白々とした生理的嫌悪感を感じる逸品。
キャラクターの無駄な美形ぶりは、この作家のお家芸か。
- 『蘭月闇の契り』
- 『閉じたる男の抱く花は』
- 『イノセント 沈む少年』
- 『桃色珊瑚』
- 角川書店 1993.6
- 九歳の頃、兄の親友と関係を持った透子。十数年後、父の危篤の報を、透子は海外で働く兄に知らせるのだが……。
- いわゆる筋らしき筋の存在しない展開は、この当時から健在。そして、痛々しいセックス絡みの描写も健在。でもって、男の趣味の最悪さ加減も健在。
とにかくメインの男性キャラのダメさ加減が異常。社会的にはまあまあ成功しているのだが、人格に欠陥があり性的嗜好もデンジャラス。そしてなぜかヒロインはその男にベタ惚れするのだ……。まさに恐怖。
- 『晩夏』
- 集英社 1991.7
- 病弱な従兄弟を愛する想子。従兄弟の母親が殺されたことをきっかけに、その夏は悪夢のようなものへと変わっていく。
- 初単行本らしいのですが、うーむ、またもや美形。この作者の書く美形キャラは、破滅的志向ゆえの美しさ、傲慢と繊細を合わせ持ち、危険なのに女が惹かれてしまう説得力を出している。そしてヒロインの側にも、その二面性を感じ取る感受性、同じ繊細と傲慢を必ず描いている。故に、全編アンモラルな匂いを発しつつも、どうしようもなく美しい物語が完成するのだ。これは、上記の他作品に関しても同じ事が言える。