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2002年夏の新作映画メモ


『スコーピオン・キング』 『少林サッカー』 『ファイナル・レジェンド』

『ウインドトーカーズ』 『トータル・フィアーズ』 『ブレイド2』

『ニューヨークの恋人』 『模倣犯』 『ゴースト・オブ・マーズ』

『SPY_N』 『タイムマシン』

『忍風戦隊ハリケンジャー』『仮面ライダー龍騎』 『バイオハザード』

『スリープレス』 『スターウォーズ エピソード2』


『スコーピオン・キング』

 監督:チャック・ラッセル
 出演:ザ・ロック マイケル・クラーク・ダンカン ケリー・ヒュー

 『ハムナプトラ』からスピンオフされた外伝。

 古代エジプト、戦乱に明け暮れる欲望の街ゴモラの主、覇王メムノーンは、巨大なる軍勢と予言者の力でもって全エジプトを支配せんとしていた。メムノーンに対抗する諸侯は結託し、メムノーン軍の勝利の源である予言者を殺すべく、最強の暗殺種族の生き残りマサイアス(ザ・ロック)を送り込む。

 さてさて『ハムナプトラ』と言えばド迫力CGで描かれるミイラやアヌビスなど、モンスター描写が売りの一つでした。が、が、が、その外伝である今作、なんとそういったモンスターや超自然現象が、ビタ一文登場しません! な、なぜ? 予算が少ないんでしょうかねえ。

 代わりに盛り込まれたのは、ザ・ロックの生身のアクション。なぜかいくぶん香港映画テイストがあり、まあまあ観られるぐらいの面白さはあります。ですが、どうも迫力不足な感は否めません。プロレス技とか出れば面白かったのに……。ザ・ロックの巨体に対抗できる強烈なキャラクターもいないので、盛り上がりに欠けます。サブキャラクターもオーソドックスすぎて描き込み不足でしょう。

 ケリー・ヒューはなかなかお美しいです(作中ほとんど裸なんですが)。が、他に観るべきとこがどっかにあるか……? とにかく過去のシリーズとのつながりが希薄すぎるのはもったいない。予告編にも前作の映像を突っ込むぐらいの仕掛けは欲しかったところです。

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『少林サッカー』

 監督:チャウ・シンチー リー・リクチー
 出演:チャウ・シンチー ン・マンタ ヴィッキー・チャオ ウォン・ヤッフェイ パトリック・ツェー

 香港ナンバーワンの記録を打ち立てた映画が、奇蹟の日本公開!

 かつて「黄金右脚」と呼ばれた名選手だったが、チームメイトのハン(パトリック・ツェー)の謀略によりその脚を折られ引退を余儀無くされたファン(ン・マンタ)。夢を失いハンの下働きをしていた彼は、ある日、少林寺拳法を操る謎の青年シン(チャウ・シンチー)と出会う。修行により凄まじい脚力を身に付けたシンに、ハンはサッカーチームを作ることを提案。シンは少林寺の兄弟弟子を集め、「少林チーム」を結成し、全国大会に挑む。

 実は公開前に輸入物のビデオCDで観ていました。日本公開はするだろうと思ってましたが、まさか全国でのロードショー公開になるとは……まさに奇蹟です。しかし、今作は多くの人に観てもらうにふさわしい、実に大変な映画なのですっ!

 チャウ・シンチーの監督・主演作は『食神』『喜劇王』などが細々とレイトショー公開されて来ましたが、日本での知名度は無きに等しく、ノワール作家馳星周のペンネームでパロられていることさえ、知っている人は少なかったでしょう。かくいう私も『喜劇王』で大泣きしてはまった、最近のファンなのですが。

 香港映画のお家芸たるワイヤーアクションと、最近どんどん技術的進歩を遂げているCGを組み合わせてアクションシーンを構成しているのですが、特筆すべきはそれらと生身のアクションとの組み合わせの妙味でしょう。火炎を伴って繰り出される殺人シュートを受け止めると、高熱で衣服は燃え腕は黒焦げになりますが。無茶な映像ですが、CGで描かれたボールとそれに合わせた生身の演技のタイミング、それを意図的に盛り上げるカメラワークが、荒唐無稽さにリアリティを与えています。現実にはありえない映像なので、作り物臭さはもちろんあるのですが、CGから生身へとアクションをつなげた部分が一度観たぐらいでは判然とせず、高い技術を感じさせます。

 少林寺で拳法を学びながらも、現実社会ではそんなものは何の役にも立ちません。その日暮らしの毎日を送る三十路以上の男たちが、サッカーに出会ったことで拳法を役立てる道を見つけ、夢を取り戻す。これをブルーカラーに夢を与える映画、と捉える解釈はもちろん正しいのですが、この現代社会、どんな人間だって挫折の経験を持つか、あるいは今まで挫折したことがなくとも未来への漠然とした不安を抱えているでしょう。一握りの人間だけでなく、そういった人全てに共通した何かを与える、そういった映画でもあります。

 非常に分かりやすい内容の、楽しいアクション大作ですが、チャウ・シンチー作品ならではのお約束も健在。特にヒロインのヴィッキー・チャオが、作中最後の最後まで素顔が不明なところなど。饅頭屋で働く太極拳の達人の少女という意味不明な設定、自分に自信を持てなかった彼女が主人公と出会ったことで徐々に変わっていき、ラストでは思わぬ大活躍を見せてしまい……つうか最強……。いやあ、たまりません。『食神』の叉焼丼、『喜劇王』の弁当に続き、饅頭という食い物へのこだわりも要注目です。

 香港映画といえば、映像やアクションばかりで非常に雑な作りという印象を持った方も多かろうと思いますが、今作は違います。ダイナミックながらも完成された映像、ベタながらも一つの伏線もないがしろにしない丁寧な脚本作り、マンガみたいな映像にリアリティを与える効果を備えた演出、基本的なことをきっちりと抑えた映画です。誰もが考え付きながらも決してやろうとしなかった企画を、正面切って映画化するには、やはりこれぐらいの地力が必要となってくるのは必定。

 あ〜なんかとてもじゃないですが、語り尽くせません。瑣末なことばかり書いてますね。とにかく一度、御覧になってみて下さい。ついでに旧作もぜひ! 『0061 北京より愛をこめて』もDVD化希望だっ!

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『ファイナル・レジェンド』

 監督:シェルドン・レティック
 出演:ジャン・クロード・ヴァン・ダム チャールトン・ヘストン

 なんと今年は二本目です。ヴァン・ダム主演映画!

 命知らずの美術品泥棒ルーディ(ジャン・クロード・ヴァン・ダム)は、失踪した考古学者である父を追って、エルサレムへやってきた。謎の教団「オーダー」の聖典を父が発見したことが、事件の鍵と考えたルーディは、やがて教団の狂信的一派の企てる陰謀を知る。ルーディは世界と父を救うため、戦いを挑むのだが……。

 今年はすでに『レプリカント』があったのに、もう一本公開してしまうなんて、まあなんともったいない……。これで来年は一本もなかったらどうしよ〜。……と言うぐらい、近作のヴァン・ダムは低迷しているきらいがありましたが、今作もまあ急上昇というではなし、またさらなる低迷とでもいうわけでもなし。物足りないとこはありながらも、まずまずまとまった作品です。

 最近はちょっとコメディづいているんでしょうかね。まあ笑えるほどではないにしろ、ヴァン・ダムもアクション・コメディっぽい演技をしています。特に中盤延々と続く聖地でのおっかけっこはなかなか楽しいですね。帽子かぶってヒゲで変装したヴァン・ダムが走る走る! 『コヨーテ』『レジョネア』でまったくなかった格闘アクションも、ここ二作では復活してます。特に今回は回し蹴りを連発! ちょっと難度の高いアクションは、ああ吹き替えてるなあ、というのがわかっちゃいますが、まあしようがないですね。髪の薄いスタントマンを使ったせいでバレバレだった『ユニバーサル・ソルジャー ザ・リターン』よりはましです。

 何の意味もなく登場したチャールトン・ヘストン、いったい彼は何だったのだろう……。まあまあヴァン・ダムファンなら楽しめる映画です。しかし公開規模がしょぼいね……。

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『ウインドトーカーズ』

 監督:ジョン・ウー
 出演:ニコラス・ケイジ アダム・ビーチ クリスチャン・スレーター ピーター・ストーメア

 『ミッション・インポッシブル2』から久々、ジョン・ウー監督。

 太平洋戦争の最中のサイパン。日本軍によって暗号を解読された米軍は、居留地出身のナヴァホ族の兵士を使い、彼等の言語を元にした暗号を完成させた。作戦中に無謀な命令で部下を失った過去を持つ兵士ジョー・エンダーズ(ニコラス・ケイジ)はナヴァホ族の通信兵ベン・ヤージー(アダム・ビーチ)の護衛を命じられる。だが、その特別任務には、暗号の流出を防ぐためいざとなればヤージーを抹殺することも含まれていた。激戦下のサイパンで、日本軍との壮絶な死闘が繰り広げられる中、男たちの友情と裏切りが交錯する。

 さてさてジョン・ウー監督と言えば、何の映画を撮っても二丁拳銃とハトをやってしまう困ったちゃんであることがハリウッド進出で証明されてしまいましたが、今作はどうだったかといいますと……。

 ついこないだ『ブラックホーク・ダウン』を観たところです。あれも全編戦闘シーンとでもいうべき映画でしたが、今作は数日間に渡る話とは言えほぼ同じ、全編戦闘シーン。しかしやはりジョン・ウーですからこだわりがすごいですね……何がって人が死ぬシーンの。とにかく全編死体の山です。しかも死体の半分はバラバラになってます。日本兵もアメリカ兵も区別も何もなくバラバラ、火だるま、蜂の巣になる樣は、壮絶なんて形容を通り越して地獄絵図です。はっきり言いまして、正気の沙汰とは思えません。ウー先生がまたもやってしまいました。シネスコサイズの画面で爆発が起きて兵士が画面右から左へ吹っ飛んでいくシーンは当然スロー!

 しかしとにもかくにも戦闘シーンを徹底的にリアルに描けば、それで「戦争映画」というジャンルは完成してしまうのですね。イデオロギーも利害も何もなく、ただ人が死ぬシーンを描写すればそれだけで圧倒的な現実が立ちはだかります。キャラクターも何もなく、ただ襲ってくる日本軍の兵士の描き方を批判する向きもあるかもしれませんが、それは単に主人公がアメリカ人であるという構成の問題に過ぎず、戦時中のドイツ映画のようなユダヤ人を悪に仕立て上げるようなそういった内容は一切含まれていません。実際の戦場において、敵と会話する機会があるはずなんてないのです。顔が見えないのは当然です。だからこそ想像力を持たなければならないのです。そして、想像をした瞬間に戦えなくなる事は、作中の会話でも暗示されます。また今作でも、「何のために?」という戦争それ自体の意味は示されません。

 と言いつつも同じ日本の民間人も巻き添えで撃ち殺したりしちゃって、さりげなく日本兵は極悪! まあアメリカ軍もあらすじの抹殺命令など、充分極悪です。イデオロギー的に一方ばかり持ち上げないというのは、実に気持ちの良い事であるなあ、と。

 二丁拳銃の代わりにナイフを投げ、ハトの代わりにカモメを飛ばしましたが、それでもウー先生、まさに完全燃焼です。面白いかと言われるとう〜んと唸ってしまう、内容の単純さに反して重い映画でした。しかしアダム・ビーチが途中から織田裕二に見えてしようがなかったんですが……。

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『トータル・フィアーズ』

 監督:フィル・アルデン・ロビンソン
 出演:ベン・アフレック モーガン・フリーマン ジェームズ・クロムウェル リーヴ・シュライバー

 ひさびさ! ジャック・ライアンシリーズ第四弾!

 CIAの若き情報分析官ジャック・ライアン(ベン・アフレック)は、ロシアに新大統領ネメロフが就任した日、ネメロフに対する長年の調査による知識をCIA長官のキャボット(モーガン・フリーマン)に見込まれ、共にロシアに飛ぶ。ロシアの核兵器解体工場を査察した二人は、そこで三人の科学者が行方不明になっていることを気付いた。核兵器を作る技術を持った人間の消息を重く見た二人は、工作員に科学者の行方を追わせることにする。だが、二人の行動は遅く、その時すでにネオ・ファシストによる最終戦争へ向けた恐るべき計画が進行していた。大統領も観戦に駆け付け、熱狂の渦に包まれたボルチモアのスーパーボール会場。人類の生み出した愚かな火は、その場所でまさに咆哮せんとしていた。

 というわけで、やってしまいました核爆発! 同時多発テロ以来、「たいがいの事には驚かなくなってしまった」とか言った奴に対して、これでもかとばかりにアメリカ映画はどんどんスケールアップしていきます! 20万人が死んだそうで、いやはや大変なエスカレートぶりですね。確かにこれぐらいしなきゃインパクトがない時代が来てしまったわけですが、そのうち大統領が暗殺されたりワシントンが丸ごと消えたりするんでしょうね、わはははは。

 アレック・ボールドウィン(『レッド・オクトーバーを追え!』)、ハリソン・フォード(『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』)と続いて来たトム・クランシー原作のジャック・ライアンシリーズですが、今作の主人公はベン・アフレック。なんで若返ってるかは謎。別に違うキャラでええやん……。あまり頭が良さそうな(失礼!)役者が出ていないところは共通してますけど。まあ家族のためにちまちまと自分ちでケンカしていたスケールの小さな映画(『パトリオット・ゲーム』)が、核戦争寸前の超大作になってしまったんですからイメージの一新は必要かもしれません。

 さてさて、急変する国際情勢と冷戦構造の崩壊などをにらみ、またしゃれにならん事件の続発もあって、中東やアフガンのテロリストを悪役に据えるのは、今作はやめてしまいました。代わりに出てきたのは……ファシスト! ネオナチ! いやあ、また手垢にまみれた悪役を引っ張り出して来ましたが、なるほどはっきり言ってなんの躊躇いもなく悪役にできる豚みたいな奴と言えば、今やこんな存在しかないでしょう。正しい判断です。他国をおとしめ、自国のイデオロギーとエゴを持ち上げすぎることほど嫌らしいことはないですからね。

 そんなネオナチの陰謀で、アメリカ本土で核爆発! あっちゅう間に一触即発状態のアメリカとロシア。ここらへん、国際情勢なんてな〜んも知らなくても楽しめる大変なわかりやすさ。そんでもって両軍最先端兵器の見本市。面白い。ただ単純に面白い。

 そして悪のネオナチを倒すべく、正義の味方CIAが立ち上がる(爆笑)! なんせ相手が豚同然の外道ですから、どんなせこい手だって全然OK! 正義のためなら暗殺さえ辞さないスパイ集団! よそ相手だったらやりすぎなんでしょうが、この映画に限って言えば相手が相手だから何しても許されてしまう。たまらん大人げなさです。

 冷戦構造崩壊後の現代という設定を受けて、今作は「ロシアとも今後は仲良くしましょう」というお話。しかし今作の何が斬新であったかというと、CIAとともにKGBをも善玉に設定したことでしょうか。これには度胆を抜かれました。かつてはCIAがKGBをやっつける話を散々やったくせに……。確かにCIAを「正義のスパイ」と位置付けた以上、似たようなことをやってるKGBだけが「悪のスパイ」と位置付けられるのは、理屈が通らない。わがまますぎ。だからといってCIAの悪行を悔いるのではなくどっちも善玉にしてしまうとは、まさに逆転の発想、アメリカ映画の底知れない図々しさと大人げなさに完敗です。

 とにかく最後の最後まで「スパイ」という職業を持ち上げまくったスパイ大絶賛映画。暗殺OKで敵はネオナチというと、う〜んこれはまるで『007』シリーズではないか。スパイの理想像が現代エンタメで実現。画期的なようなそうでもないような。

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『ブレイド2』

 監督:ギレルモ・デル・トロ
 出演:ウェズリー・スナイプス クリス・クリストファーソン ノーマン・リーダス ロン・パールマン ドニー・イェン

 あのヴァンパイアアクションの金字塔が、なんと武術指導にドニー・イェンを迎え、奇蹟の続編!

 血の神「マルガ」となったフロスト(スティーブン・ドーフ 注:今作には登場せず)との死闘から二年。ヴァンパイアと化し生き長らえてきたウィスラー(クリス・クリストファーソン)を追って、ブレイド(ウェズリー・スナイプス)はチェコへ飛んだ。レトロウィルスでウィスラーを救い出したブレイドの元に、現地のヴァンパイアの一族が接触してくる。大君主ダマスキノスは、ブレイドを倒すために組織された最強戦闘集団ブラッド・パックと共に、ブレイドにある敵と戦ってほしいともちかける。その敵とは「死神族(リーパーズ)」。銀もニンニクも効かないヴァンパイアの変種であり、悪夢の戦闘生命体だった。リーパーズの首領格ノーマックと対決するブレイド。だが、激闘の中、恐るべき陰謀が明るみに出る……。

 待ってましたというところでしょうか! バカ満載グラサンムービー、続編です! 今作もグラサンへのこだわりは健在、お馴染み意味なし装着シーンももちろんあり! 最高!

 前作とうってかわって、今回はブレイド本人の設定についてはほとんど触れず、ただただ強い人。まあ続編ですから当然だと思いますが、もうひとつエモーショナルな部分には欠けたかな? その代わりにアクション部分とVFXは手のかけ様も予算も数段パワーアップしてます。CGはもちろんですが、襲いくるリーパーズのメイクや死体のモデルなどの作り込みがいい。特にリーパーズ解剖シーン最高! グロい! しかもただグロいだけでなく、ちゃんと解剖が後のシーンへの伏線となっているのです。

 グロ趣味やホラーっぽい演出のテイストは『ミミック』のギレルモ・デル・トロらしく、統一感を出しています。脚本は出来がいいとはいいがたいですが、まあまあハッタリ充分でよろしいんではないでしょうか。

 ドニー・イェンのアクション担当部分はそれほど多くないですし、出番もあくまで特別出演です。ちょっと物足りない? ですがおなじみブレイド先生の大活躍を見る分にはそれでよし。最後のリーパーズとの対決もまた良し。黒幕は既に死に、復讐も陰謀もすべて終わったはずなのに、なぜか戦わねばならないブレイドとノーマック。戦う事によってしか生きる術を持たぬ二体の戦闘生命の悲哀です。熱いなあ。惜しむらくはそれが脚本にイマイチ表現されてないとこでしょうか(爆)。

 前作ファンはしかし必見。パート3に今から期待しよう!

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『ニューヨークの恋人』

 監督:ジェームズ・マンゴールド
 出演:ヒュー・ジャックマン メグ・ライアン リーヴ・シュライバー

 なぜかお気に入りです、ヒュ−・ジャックマン。快調なペースで新作登場。

 現代のニューヨーク。1867年からタイムスリップしてきた公爵レオポルド(ヒュー・ジャックマン)は、キャリアウーマンのケイト(メグ・ライアン)と出会い、恋に落ちる。

 え〜この鑑賞メモでも絶賛のヒュ−・ジャックマン、『X−MEN』『ソードフィッシュ』『恋する遺伝子』と主演作もめじろ押し。今回も演技派ぶりは絶好調。英国貴族ぶりはほとんど本物のようです。どこか浮き世離れした感じが良く出ています。正面から見ると愛嬌のあるのほほんとした顔なのですが、斜めの角度から見るとびびるぐらい男前っす。しかし他作品を見ればわかりますが、これは彼の表情の一つにすぎません。恐れ入ります。

 ストーリーがもう一つ面白くないのが残念ですね。タイムスリップとカルチャーギャップというネタもありふれてますし、キャリアを捨てて恋に生きる展開も、この現代ではいささか甘っちょろ過ぎ。メグ・ライアンのキャラクターがありきたりすぎてつまらないのですよ。まあ彼女の演技の幅ではこんなもんでしょうけど。

 コメディっぽいタッチを狙っているようですが、テンポがもう一つなのがもったいない。割と素材は揃ってたように思うんですが。食い物ネタと弟のキャラクターはちょっと面白かったですが、外してると言わないまでも笑えないギャグが多いのは惜しい。

 ジャックマンファンだけ見ればいい映画(『恋する遺伝子』もそうだったけど)。

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『模倣犯』

 監督:森田芳光
 出演:中居正広 藤井隆 木村佳乃 山崎努 津田寛治

 宮部みゆきベストセラーの映画化で〜す。

 公園のゴミ箱から発見された女の片腕とショルダーバッグ。豆腐屋を営む老人有馬(山崎努)はそれが失踪した娘の物ではないかと疑う。果たしてバッグは娘の所持品であったが、腕は別人のものだった。そして、事件を特集するワイドショーに、犯人と名乗る男が電話し、犯行声明を行う。ルポライターの前畑(木村佳乃)は事件の謎を追うが、やがて第二の死体が発見される。

 キャストを見ただけでまあ脱力もんです。中居君に藤井隆! さてその中居君ですが、テレビの親しみやすいイメージ(オレは嫌いですけど)と裏腹に、冷酷な殺人者を演じてます。オーバーな表情を抑え、おお、なかなか冷たそうな雰囲気を醸し出しているではないですか……メイクのおかげで。しかし撮影と演出次第でどうにかなる部分はあっても、口を開いた瞬間ぶち壊しに! う〜ん、やっぱり棒読みなんですねえ。まああんな長い台詞を噛まずに言えただけで、大した進歩だと思いますけど(笑)。

 原作は御存じえげつない長大さを誇る上下巻でしたが、はてさてそんなものが2時間やそこらの映画に収まるのかというのが一つの見所。結果としては、原作の大量の心理描写をはしょって単に筋ばかりを追い掛けたものになってしまいました。中居君演ずる「ピース」がテレビに登場した過程や、徐々に人気が出てカリスマを発揮していく経過などが描かれないのは致命的でしょう。登場人物が何も描かれず中居=「ピース」という記号にしかなっていない。これは映画でもなんでもないですね。

 ただ、意外と筋だけを取り出してみても展開としてはさほど違和感がない。これは原作も、むしろ大したストーリーや複雑な構成があったわけではないことを浮き彫りにしてしまいました。

 それにしてもひどい作品です。藤井隆の野球選手の物まね(いつ中居君が「八重樫」とかやりはじめるかと期待したんですけど)や中居君の相方(もう名前なんてどうでもいいや)の外国語の台詞(オウムの麻原か?)など、見に行った場内からは失笑が漏れてました。あまりの寒さに鳥肌が立ちましたけど、登場人物の人の良さや頭の悪さを表現するには、もっと違うやり方があるだろうに。あれは面白いつもりなんでしょうかね。

 突然犯人が幼稚な人になった原作とは変えたラストも、呆然。予算と映像作りのセンスのなさをCGで誤魔化すってのは、これは一昔前のアメリカ映画なんですよ。全然テーマと噛み合ってない伏線ゼロの意味不明エンディングにも、首をかしげるばかり。もういい加減にしてくれ。

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『ゴースト・オブ・マーズ』

 監督:ジョン・カーペンター
 出演:ナターシャ・ヘンストリッジ アイス・キューブ パム・グリア

 これまた久しぶり、カーペンターのおなじみ監督、製作、脚本、音楽担当作品!

 西暦2176年。テラフォーミングが進行し、地球の植民地と化しつつある火星。囚人ジェームズ・ウィリアムズ(アイス・キューブ)の護送のため仲間と共に辺境に向かった火星警察のメラニー・バラード警部補(ナターシャ・ヘンストリッジ)が、ただ一人自動操縦の列車で本部に帰還した。共に向かった刑事達はどこへ消えたのか。彼女はなぜただひとり生還したのか。そして辺境の地、シャイニング・キャニオンは、なぜ原因不明の大爆発で消滅しなければならなかったのか。聴問会で証言するメラニーの口からはやがて恐るべき真相が語られはじめる……。

 前作『ヴァンパイア 最期の聖戦』は出だし15分の異様なまでのテンションの高さに対して後半のだれ具合が痛すぎる、もったいない作品でした。今作も設定だけ聞いた時はめちゃめちゃ面白そうな気がしただけに、同じ心配を抱えて劇場に向かったのですが……。

 作品の内容と関係ないことで恐縮ですが、これを観た劇場「心斎橋シネマ・ドゥ」は脱力もののビデオシアター。しかも画面サイズはビスタ・ビジョン! ざけんな! カーペンターはシネマ・スコープと決まっておろう! ……とまあ別にカーペンターに強烈な思い入れがあるわけでもない私が言うのもなんですが、こういうオリジナルに唾するような代物で同じ金を取るのはいかがなものか(まあオレ金払ってないけど)。ついでに画面もフィルムじゃねえから奥行きねえ〜。

 相変わらずの自主映画ノリですが、今作は実にテンポが良く、意外と多めの登場人物の登場と退場(笑)のタイミングも絶妙で飽きさせませんし、気も抜かせません。特にビジュアル面でも『スリーピー・ホロウ』以来の生首ぶっ飛びが大量に観られて、まさに大満足でした。妙に凝ったメイク、安っぽくSF的センス皆無のセット、中堅と言うにはあまりにB級よりな出演陣、怒濤の銃撃戦と西部のアウトロー魂(火星なんですけど)、手放しで褒めるにはあまりに微妙、でも最高。

 核爆発でゴーストを倒せる?と錯覚とはいえ取りあえず発想するのは、ちょっぴりアメリカ的でしょうか。日本ならお祓いしかねないもんな。個人的にはもう少しプラスアルファが欲しかったのですが、こういう手作りの醍醐味を味わう機会はどんどん失われている。今作はそれだけでも貴重です。カーペンター好きは必見です。

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『SPY_N』

 監督:スタンリ−・トン
 出演:アーロン・クォック 藤原紀香 マーク・ダカスコス

 いったいどんだけお蔵入りになってたのか? 『チャイナ・ストライク・フォース』改題です。

 香港を舞台に謎の女スパイノリカ(藤原紀香)と香港マフィア、熱血刑事コンビが壮絶な追いかけっこ&肉弾戦を繰り広げる。

 ……思いっきり手を抜いてみました。まあこれだけの話ですんで。これだけの話といえば、思い出すのがいつもストーリーだいたい一緒のジャッキー映画。今作はアクションのテイストも展開も、香港の巨匠ジャッキー・チェンの作品を踏襲した内容に仕上がってました。

 ただまあ主人公たちの動きにジャッキーのような神業も間の取り方もないので、もう一つ面白みには欠けます。代わりにと言ってはなんですが、マーク・ダカスコスが得意のキックボクシングを見せていました。ただこれも旧作『DRIVE 破壊王』のような全てを見せ切った感はないですが……。他の役者も全員がほどほどのアクションを見せます。が、中途半端なコメディっぽい演出が災いし、途中の仲間の刑事が死ぬシリアスなシーンがめちゃ唐突に感じられるんですよね。そのぶん意表を突かれましたけど。

 ラストのガラスの上でのアクションはかなり凄い。ちょっと本気で高所恐怖症の人にはオススメできません。やべえ。しかしどうやって撮影したのか、観ただけじゃさっぱりわからん。

 しかしこの邦題、ひどいですね。NはノリカのNですよ? やめてくれっちゅうの。ただでさえK−1の放送前にちょろちょろされて苛ついてんだからよ〜。おまけに当人の台詞も寒い。棒読み。モー娘。と共にオレの視界に入らないところに消えてくれ。これをもってワースト級です。

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『タイムマシン』

 監督:サイモン・ウェルズ
 出演:ガイ・ピアース ジェレミ−・アイアンズ

 夏はジャリ向けでない映画が少なくて困ります。数少ない一本。

 暴漢によって恋人を殺された若き科学者アレクサンダ−(ガイ・ピアース)。その天才的な頭脳をもって彼はタイムマシンを開発。過去に戻って彼女を救おうとする。だが、いかなるパラドックスによってか恋人は必ず死を迎える結末を辿る。根本的な解決をさがし、彼ははるか未来に時間旅行するのだが……。

 退屈しないんですが、なんというか釈然としない首をひねる内容というか……。恋人を救う方法を見つけるために、過去、そして未来へ行く前半部分はいいのですが、後半の展開が物凄い。手動で動くタイムマシンは主人公が意識を失っている間に80万年後の未来へタイムスリップ。彼はそこで未来の人類と共に、彼等を脅かす謎の生物と戦う……って恋人の話はどうなってん!

 砕けた月やワンカットで見せるタイムスリップなど、映像面はかなり見せてくれます。後半の怪物「モ−ロック」のビジュアルも適度な人間っぽさが無気味さをだし、いい造型です。タイムマシン自体のデザインもグッド。レトロさと複雑さの同居が最高。ただ、どう見てもこれで時間旅行できるとは思えないのですが……。

 美しい映像と破綻したストーリー。まあバカでいいんですがね。ところで今回はガイ・ピアースに驚かされました。冒頭の幸せいっぱいのシーンではっきり言いましてとてつもないマヌケ面を披露! こ、これが『LAコンフィデンシャル』でかっこよかったあのガイ・ピアース? まじっすか?と思いましたね。ところが恋人を失い、彼女を救うべく決然とタイムマシンを発進させるシーン……………か、かっこええ……造り的には変な顔なのにとてつもなく男前に見えるではないか……なぜ?

 意味不明な映画ですが、短いし退屈しのぎには充分です。

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『忍風戦隊ハリケンジャー』

 監督:渡辺勝也
 出演:塩谷瞬 長澤奈央 山本康平

『仮面ライダー龍騎』

 監督:田崎竜太
 出演:須賀貴匡 松田悟志 加藤夏希 杉山彩乃

 たまに観るには面白かろう、特撮二本立て。

 ミラーワールドから出現するモンスターと戦いながら、最後に残った一人にのみ与えられる力を求め死闘を繰り広げるライダーたち。死闘を生き残った龍騎、ナイト、王蛇、ゾルダ、ファムは、突如三日以内にライダー同士の戦いに決着をつけることを強いられる。戦いの影に潜む真相とは。そして鏡の向こうから出現する、もう一人のライダー「リュウガ」とは? 

 昨年の『仮面ライダーアギト』に続き、今年も観てしまいました。『Gガンダム』を思わせる内容に、これは来年は宇宙からきた五人のテロリストがライダーに変身するんだろうな、と妄想も膨らみます。冗談はさておき今年はどうだったかと言いますと……。

 近年の作品は設定を細かく作って物語性を高め、ある意味高い年齢層の鑑賞に耐えるように作ろうとしているようです。が、今作の場合、斬新な設定は買いますがいかんせん脚本がついていっていない感じ。特に最後に明らかになるなぜライダー同士は戦うのか、という真相には愕然。ここまで迂遠なことをわざわざやる必要があるの?

 しかしまあ多少強引でも、キャラクターをきっちり描いてエモーショナルな面を高めていけば、そういった事も別に許せてしまうはず。むしろこういう特撮系の作品はそういった面で勝負していくべき……なんでしょうが、これもなあ……。どっかよその少年マンガ、少女マンガ、やおいっぽいテイストの作品で見たような見ないようなそんな台詞が多すぎるように思うんですけど……。特に相方をちゃん付けで呼ぶ弁護士! やめろ! 寒い! どうも通り一遍になりすぎでは?

 しかしまあ多少台詞がベタでも上手くてかっこいい人が言えばけっこう様になるはず。むしろこういう美形キャラ多数登場という作品はそういった面で勝負していくべき……なんでしょうが、これもねえ……。主役の子と悪役っぽい奴はわりと良かったですが、あとはどうもいまいち。特に一番かっこいいキャラであるべき黒幕のお兄さんが棒読みくさいのは致命的ではないか……? もうちょっとまともに台詞読める人はいないの? ベタベタな台詞をしゃべらされてちょっと可哀想な加藤夏希は、しかしどことなく漂う無気味さが最高で、これは演出を超えた役者の個性とでも言うべきものでしょうか。これはこれで大したものですが、欠点はどう見てもライダーなんかに変身しそうにないところかな……。

 落ちがそのまんま某映画を想起させるとこなど、もう一つオリジナリティに欠ける作品であったなあ、と。期待外れでしたね。

 『ハリケンジャー』は低予算ながら去年よりはましだったかも。とりあえずワイヤーは見えなかったし、巨大ロボの剣は曲がらなかったし……。

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『バイオハザード』

 監督:ポール・アンダーソン
 出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ ミシェル・ロドリゲス

 大ヒットしたカプコンの同名ゲームの映画化作品。

 アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は不可思議な洋館で目覚めた。目覚めた時、彼女にはそれ以前の記憶は何も残っていなかった。突如、洋館に侵入してきた特殊部隊は、彼女がアンブレラ社の特殊工作員であり、ラクーンシティの地下にある秘密研究所「ハイブ」の入り口である洋館の警備役であると告げる。連絡を断った「ハイブ」に潜入しようとする特殊部隊に、なりゆきから同行するアリス。だが、「ハイブ」の内部は何者かによってまき散らされた悪夢の生体兵器「T−ウイルス」によって全滅していた。研究所員全てがアンデッドと化した地獄から、アリスは生還することができるのだろうか?

 元になったゲームも大好きですが、私が日頃からリスぺクトし続けている若き天才監督ポール・アンダーソンの新作ということで、これは超注目作品! 宇宙版『シャイニング』こと『イベント・ホライゾン』にカート・ラッセルの裏の代表作『ソルジャー』、どっちも傑作だった! まあ『モータル・コンバット』はこんな安い作品がアメリカで大ヒットとはなぜ?という事実以外は評価できませんでしたが……。

 しかしカプコンと言えばかつて『ストリートファイター』の映画化で壮絶に失敗した過去がありますが、今回の映画化にあたって『モータル・コンバット』を監督したアンダーソンに任せてしまうとは、果たして正気なのか? 最近でも『ファイナルファンタジー』がゲーム感覚を前面に出さずにボロコケしましたし、『トゥームレイダー』も出来の面で大いにぱっとしませんでした。成功しにくいゲームの映画化という面で、果たして今作は?

 アメリカではすでに大ヒットを記録し、続編も製作決定済み。日本でも初日……並んだ並んだ! 興行的には文句無しのスマッシュヒット。

 『イベント・ホライゾン』『ソルジャー』の二作はセットや美術のオリジナリティが大変素晴らしかったのですが……今作で度胆を抜かれたのもやはりセット! なにが驚いたってゲームの雰囲気まったくそのまんまではないか。冒頭の洋館、女神像の飾られた部屋で、おいおいこのどっかで見たようなカメラアングルはいったい!? 地下を爆走する輸送列車のデザインは!? 秘密工場内部、このゾンビが登れずにひっかかりそうなこの段差は……! すごい! まさにファンによるファンのためのビジュアルではないか。来日記者会見で大学生のにーちゃんにしか見えなかったアンダーソンは、やはり果てしなくオタクだったのだ。

 そしてジョヴォヴィッチの前に立ちはだかるおなじみクリーチャーの群れ……これも「おなじみ」としか表現しようのない、ゲームそのまんまの奴らではないか! どこかチープなゾンビもそうだが、ケルベロスのデザインと躍動感の再現度には驚きを通り越して感動さえ覚えました。終盤にはあのリッカーまでも出た。そして映画オリジナルのスーパーリッカーへ変貌! 最高すぎるではないか。

 PGー12指定の基準を疑わせるミラ・ジョヴォヴィッチの「体当たり」なんてケチな表現の似合わない、あのみせっぷりにも驚きました。せいぜいチラリズム程度にとどめるのかと思いきや……すいません……全部見えてるんですが……。古くからの伝統でしょうが、ヨーロッパの女優ってほんとに気前よく脱ぐんですねえ……。さすがに自ら主演を買って出ただけあって、アクション面でも奮闘。記憶喪失の特殊部隊員という設定を生かし、ケルベロスの群れを全て初弾で射殺! 素手でゾンビを叩き伏せ、予告でも散々やったあの三角飛びを披露! ゲームの主人公はこんなに強くないのですが……。三角飛びも荒唐無稽な描写ながら、編集のタイミングがよくて流れの中で見ていられます。

 映画オリジナルの設定も設定と噛み合い、テンポを少しも損ないません。つうか、こんなに上手かったか?この監督は……。やや多いかと思われた登場人物も、いい感じに消えていきます。そしてラスト。一瞬ハッピーエンドを期待させつつ、どん底へ叩き込むホラー映画おなじみの趣向に加え、最後は……う〜む、これこそ『バイオハザード』! オレは本当に感動しました。今から続編が楽しみだったら。

 唯一の不満は、チラシとポスターで見せてた二丁拳銃をやらなかったとこかな……。

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『スリープレス』

 監督:ダリオ・アルジェント
 出演:マックス・フォン・シドー

 ダリオ・アルジェント最新作登場。初めて劇場で見ました(感涙)。

 十数年前に起き迷宮入りとなった童謡を見立てた連続殺人。犯人と思われた男の自殺で解決をみたはずの事件が、時を経て新たな展開を見せ始める……。童謡の歌詞をなぞる形で、再び始まる殺人。事件を担当していた引退した老刑事(マックス・フォン・シドー)は、かつて母親を殺された青年とともに事件の謎に挑むのだが……?

 冒頭、犯人(顔は見えず)に買われた娼婦が、うっかり犯人の殺しの道具を見てしまった事から電車の中を追い回され惨殺されるところから映画は幕を開けます。顔アップの大写し、勝手にヘア解禁、おなじみ殺しの手袋堂々復活など、アルジェント演出がこれでもかこれでもかとばかりに炸裂! しかしビデオで見る分には結構笑っちゃうようなものもあったのですが、真面目に劇場でみるとやっぱり迫力が違います。結構、怖い。

 なんか『フェノミナ』など、きっちり伏線らしき伏線を張りつつも、どっかで破綻して強引な展開に持って行っている印象がありましたが、今作には驚いた! むしろこまめに伏線を張り過ぎて展開と犯人がわかってしまうぐらいの、非常に細やかな作り。あらゆる伏線がちゃんと生きている、まさに本格ミステリとさえ呼べそうな作品に仕上がっています。

 しかし本格ミステリというと、なんか古典的名作であるある作品を思い出してしまったのですが……。似てるよな……この展開……パクリってわけじゃないんでしょうが、意識してないわけがないよな……。私的には許容範囲ですが、怒る人はいるでしょうね、やっぱり。

 犯人像も怖いし、小道具も演出もどこまでもおなじみのアルジェント。こういうのを見るとホッとしますね。ファンはやはり必見です。今回もまた再結成させられたゴブリンの音楽も最高。延々と廊下をワンカットで映して殺人シーンにつなげる演出、ずーっとゴブリンがかかりっぱなし。ヒロインがなんか三輪ひとみに似てたのもちょっと気になるなあ。ホラー映画ウケする顔なんでしょうか。

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『スターウォーズ エピソード2』

 監督:ジョージ・ルーカス
 出演:ナタリー・ポートマン ヘイデン・クリステンセン ユアン・マクレガー サミュエル・L・ジャクソン クリストファー・リー

 説明不要の大ヒットシリーズ、続編です。

 かつての少年から逞しく成長し、ジェダイ騎士となったアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)。師のオビ・ワン(ユアン・マクレガー)とともにアミダラ(ナタリー・ポートマン)の警護についた彼は、やがて彼女と恋に落ちる。だが、アミダラを狙う暗殺者の魔の手の影には、銀河を揺るがす巨大な陰謀があった。凄絶なるクローン戦争の幕開けに、銀河は激震する。

 『エピソード1』はまあまあ面白かったんですが、その要因の一つとしてあったのが、旧シリーズとの関連性の薄さ。エピソード4から遥か以前の話だけあって、関係ないところで新鮮な気持ちで楽しめました。ところが今作は次のエピソード3で4につなげるための伏線づくりに終始。要はアミダラとアナキンが結婚してルークとレイアが生まれるというのはわかってるので、結局のところファンでもない人間が観ても退屈するのです。

 前作のラストで見せ場だった魔人ダース・モールとの死闘。ですが今回は最後にライトセーバーでの決着がつかなかったのも、大きな不満材料。せっかくのチャンバラなんですからねえ……。ドンパチの映像はまあいいんですけど、ちょっと中身が無さすぎじゃあ……。

 もうこんなもんにして、次のエピソード3を待つ事にします。繋ぎとして今作がどうであったか、それで評価できるでしょう。

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