■膝蓋骨脱臼について■
2000年の夏、ナツが1歳になる前でした。 KENが約一ヶ月間、スペインへ行っていて留守でした。 毎日1人でお散歩と仕事の繰り返しの日々に(笑)、河川敷のお友達が 川遊びを計画してくれ、誘ってくれました。 と、そのときナツの左後足の運び方の異常に気づきました。 その後のお散歩では普通に歩いているので、そのときは深く考えず、 KENが帰国してからの8月21日、なにげにレントゲンを撮りに行きました。 診断は『膝蓋骨脱臼』でした。 |
膝蓋骨脱臼とは |
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犬の膝蓋骨脱臼とは、後肢のひざのおさらが正常な位置から逸脱した状態を いいます。 内側にはずれる内方脱臼と外側にはずれる外方脱臼とがあり、ナツのばあいは 『内方脱臼』です。 |
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【原因】 |
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膝蓋骨脱臼の原因は、先天性と後天性に分けられます。 先天性のばあいは膝関節周囲の筋肉や骨の形成異常やじん帯の付着部の 異常などが存在し、発症します。 後天性では打撲や落下などによる外傷性の原因により、膝蓋骨周囲の組織に 損傷が生じたり、骨に関する栄養障害などによって骨の変形が生じ 発生したりするものです。 ナツのばあいは、大腿骨の滑車溝がないためにひざのおさらがはずれてしまう 先天性が原因です。 |
グレードについて |
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膝蓋骨脱臼の症状はグレードによって、分類されます。 【グレードT】 膝蓋骨は正常な位置にあり、足を伸展させて膝蓋骨を指で押すと脱臼するが、 放すと自然に整復される。 このレベルだと無症状のばあいが多いが、ときにスキップ様の歩行をすることがある。 【グレードU】 膝関節は不安定で、寝起き時のように膝関節を屈曲していると脱臼し跛行したり するが、指で膝蓋骨を押すと整復できる。 このレベルでは数年間、日常生活に支障はないが、さまざまな症状を呈しながらも 骨の変形が進み、膝蓋骨を支えるじん帯が伸びてグレードVに移行してしまう。 【グレードV】 膝蓋骨はつねに脱臼状態にあり、指で押せば整復できるがすぐに脱臼してしまう。 多くは膝関節を屈曲させたまま歩行するので顕著な跛行がみられる。 大腿骨や頸骨の変形もあきらかになってくる。 【グレードW】 膝蓋骨はつねに脱臼し、指で整復できない。大腿骨や頸骨の変形もさらに重度となり 犬は患肢を屈曲させ、うずくまった姿勢で歩行するか前肢に体重をのせ、 患肢を浮かせて歩行する。 各グレードに共通して疼痛、腫脹、跛行、患肢の挙上などがみられ、 先天性のばあい、習慣的に脱臼し、疼痛はほとんどない例もある。 病態が長期化すると膝蓋骨に関連する筋肉の萎縮を呈する場合もある。 +++ 以上の文章を読んで、KENとアタシの観察ではナツはグレードT〜Uだと思います。 |
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■正常な膝関節のレントゲン■ |
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■ナツの膝関節のレントゲン■ |
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++ へたな図解で説明すると ++ |
ちなみにナツの股関節のレントゲンはというと |
拡大すると きれいにはまってまする。 |
原因と予防 |
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先天性のものは遺伝的疾患のひとつと考えられている。 子犬を飼育する際は、できるだけ血縁関係のある犬の本症発症について調査し、 本症重症犬を発症させぬよう注意する。 本症にかかった犬を飼育する際は、床などの足の裏に接地する環境を すべりにくいものにする、などの工夫が必要である。 軽症の習慣性脱臼のばあい、老齢時にはみずから整復できる犬でも老齢化により、 前十字じん帯が弱くなり急激な動作によってかかる負担が正常犬より大きいので、 同じん帯が断裂してしまうことがある。 神経のゆきとどいた飼育管理をするか、若い元気な時期に整復手術をうけるとよいと 思われる。 |
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ということで、ナツはフラットコーテッドレトリバーとしての繁殖にはむかない犬 であったということがいえます(その前に避妊手術を受けていたけどね)。 そして、我が家はナツのための床材を工夫した家を建築することを決意すること になります。 健康面としては肢に負担のかからない体重管理(約22〜3キロ)のため、 ナツはず〜と腹が減っています^^; グルコサミン&コンドロイチンのサプリ(人用のもの)や食事と一緒に加えたり、 正常犬(チャコ)で大丈夫な場所でも、ナツが遊ぶには負担となるので 気をくばる必要があります。 河川敷のみんなとおでかけする場所も少なくなったのはとてもさみしいことでした。 KENとアタシや河川敷のお友達がみていても、膝がカッコンカッコンして歩いて いるときがあります。 日によっては、アタシ達より先輩のママたちが心配をして、『きょうはボールは 止めとき』と言ってくれることもあります。 特にフラットは痛みに対して強く、活発に動き回ることが大好きな犬種です。 ただ、いまナツがボールを追いかけたいこと、泳ぎたいことが、無理をさせて いることなのか、などいつも考えないときはないくらい考えています。 こうしてまとめみると、重大な決意としての【手術】を考えてしまいます。 難度の高い手術だけれど、いま元気なときに必要なのか! いまの元気なナツか将来のナツを考えるのか。 近い将来、また結論を出さねばならない、ことだと思っています。 |
ブリーディング(繁殖)について考えて欲しいこと |
やはり、股関節形成不全と同様に遺伝性疾患である膝蓋骨脱臼の フラットが増えていると聞きます。 両親が大丈夫でもこどもたちは大丈夫とは限りません。 繁殖しようとするならば、"こどもの顔がみたいから〜"など安易な考えではなく、 血統を守るという意味でも、血縁関係である里親さんたちとも連絡を取り、 疾患がでていないかきちんと確認してくださったうえ、OFAなどの検査を受け 繁殖すること(命を産み出すこと)の重大な責任を 再考されることを切望します。 今回、ナツの膝蓋骨脱臼についてお話したことを、ワンのことを不勉強なくせに 生意気なことだと思われるかもしれません。 繁殖を否定しているわけではありません。 多くのブリーダーさんはきちんとした豊富な知識と責任をもって 繁殖を考えていると思っています。 が、ナツのようなワンがいることも現状なのです。 このようなワンたちが1頭でも減っていくことを願うとともに、 ナツからの代弁をすることは、アタシの責任であると考えたからです。 |
++ 参考文献 ++
『イラストで見る犬の病気』講談社