琥珀の望遠鏡

フィリップ・プルマン  大久保寛=訳
2002年  新潮社

ウィルと天使のバスサモスは、オーソリティの摂政であるメタトロンの追跡を逃れながら、コールター夫人によって眠らされ続けているライラを救出するために、ヒマラヤ山脈の氷河の近くの洞窟へ向かう。氷が消え始めたスバールバルを出て南へ行こうとしてるイオレク・バーニソンは、セラフィナ・ペカーラからリー・スコーズビーの死を知らされ、彼の敵を討つことを決意。やがて、ウィルとイオレクはホロドノイエの波止場で出会う。そんな中、アスリエル卿のジャイロコプター飛行隊と、規律監督法院の飛行船団も洞窟を目指して進んでいた。

パラレルワールドを舞台にした冒険ファンタジー小説として純粋に楽しめると同時に、無神論的な考えや、生き物の生死や意識などのテーマの深さも堪能できる素晴らしい作品。過酷な状況の中で成長し、お互いを助け合い、かけがえのない存在となっていくウィルとライラの運命が、アダムとイヴの物語の新解釈のような展開となっていく終盤の穏やかさと、それぞれの世界で生きることになる2人の別れという哀しみがある一方で、果てしない希望も感じさせるラストには感動した。SF的な乗り物が登場し、人間、天使、魔女、クマ、ガリベスピアン、幽霊など、あらゆる世界の住民たちが繰り広げるアクション映画さながらの戦闘場面、アスリエル卿とコールター夫人の情熱的な夫婦愛と、ライラに対する偏屈的な愛情、不思議な生き物であるミュレファが住む世界で暮らし、ダストを見ることができる琥珀の望遠鏡を作ったメアリー・マローン、死者の国へ行くことを決意したウィルとライラの力になる、勇敢なレディ・サルマキアとシュバリエ・ティアリスも強く印象に残る。これから公開される映画にも期待したいし(特にコールター夫人役のニコールの悪女ぶりが楽しみ!)、続編?の「Lyra's Oxford」も読んでみたい。

ライラの冒険シリーズ III