各国の教科書に見るソ連対日参戦


 第2次大戦末期、ソ連は日本に対して宣戦布告し、おもに中国東北部(満州)に駐留していた関東軍を攻略、中国東北部を解放した。この時の状況を関係各国の子供たちはどのように学習しているのか、中学校・高等学校の教科書を比較する。

  


デンマークの歴史教科書


(デンマークの高校生用教科書です)

蒋介石と毛沢東との同盟の試み
 この問題を解決するために、アメリカは蒋介石と峡西省の共産主義者とのあいだに同盟を結ばせようとした。蒋介石の政治体制の犯罪性を知ったアメリカの多くの観測筋は、共産主義体制に対してはそうでなくとも、共産主義者に対しては同情していた。
 紅軍派は農民から略奪していたのではなく、反対に手助けをしていた。そして彼らが支配していた地区は確実に人びとの支持を得ていた。紅軍派の地区では買収は行われず、少ない装備にもかかわらず、実戦をとおして日本帝国主義に対抗していたことを証明した。
 これに加えて、毛沢東は反日意識を集めるために大きな譲歩を覚悟していた。しかしそれはすぐに蒋介石の反対により失敗した。「私にとって大きな問題は日本ではなく、自国の統合である。東北の共産主義者と戦うために待機させている兵士の支援があってもなくても、あなたたちアメリカ人はいずれ日本を負かす、と私は確信している。しかし毛沢東のプロパガンダを国中に広げさせたら、私たちは、そしてあなたたちアメリカ人も無意味な勝利をするだけであろう」と、彼は一九四四年にいっている。

ソ連との協定
 中国にいる日本軍に圧力をかける最後の手段はソ連だった。踊躍しながらも、アメリカ政府はスターリンに、満州を通って日本を攻撃するよう要請した。スターリンは、満州におけるソ連の古くからの権利と戦略上重要な旅順港の権利と引き換えに、ヨーロッパでの戦争終結の三カ月後に日本に宣戦布告することを約束した。一九四五年にクリミアのヤルタ会談で、イギリスとアメリカはこれに同意した。ソ連は一九四五年八月八日、日本に宣戦布告することで協定を守った。ソ連は満州と朝鮮に進攻していった。


日本の和平工作、
 一九四五年春、日本の指導者たちのあいだに、戦争に負けたという意識が生まれつつあった。とくに、敗退を余儀なくされた海軍や空軍はそうだったが、ほとんど無傷だった陸軍にはその意識がなかった。しかし、財閥は降伏しようという意識が高まりつつあった。財閥には、完全な敗北による社会革命に対する恐怖があった。和平派の代表者は一九四五年、ヒロヒト天皇に「われわれは恐れなければならないのは敗北ではなく、敗北したときに起こりうる共産主義者による革命である」と、いった。一九四五年四月には和平主義者による内閣が成立した。それから数カ月後、日本が満州を占領してから獲得した占領地をすべて手放すなどと記された和平打診をアメリカに送った。しかしアメリカの指導者はこれを十分とせず、日本がドイツ同様無条件降伏することを主張した。それでも日本政府に、アメリカは将来の軍事占領を機に、大規模産業を乗っ取る意志のないことを悟らせた。

原子爆弾
 一九四一年以来、アメリカの科学者たちはいわゆるマンハッタン計画によって原子爆弾の開発を研究し続けてきた。一九四五年八月上旬に最初の原爆は完成し、八月五日に広島に投下された。七万五〇〇〇人以上の人が瞬時にして死を迎えた。八月九日、長崎も同じ運命をたどった。
 なぜアメリカが原爆を投下したかということについてはさまざまな憶測が飛び交った。たとえばアメリカの大統領や政府がとった行動が非人道的だという意見にひどくこだわる人がいた。しかし、死者の数は「通常」の手段に頼った場合のそれよりは多くなかった。東京に対して一回の焼夷弾による空襲での死者は十二万五〇〇〇人にものぼった。アメリカの指導者たちは、原爆を日本の降伏を速めるため使っても当然の新たなかつ有効な手段とみなしていた。一九四五年に死亡したルーズベルト大統領のあとを継いだトルーマン大統領も、原爆が完成し次第投下するよう命令していた。
 だがアメリカは、原爆がすぐに日本の降伏につながるとは思っていなかった。かえって戦争がさらに長引くのではないかと心配していた。したがって、原爆投下の予定のなかった満州や中国にいた日本軍を破るには、まだソ連の協力が必要だった。反対にアメリカは、ソ連軍の進撃が進まないうちに広島や長崎を破壊しておくことが軍部に対する守旧派の立場を強化し、降伏に導けるのではないか、と期待していた。スターリンはドイツでと同じように日本でもソ連の占領地域を要求しており、アメリカはなんとしてでもこれを避けたかった。
 日本の守旧派が八月十四日に全面降伏を押し通し、アメリカの政策は成功した。第二次世界大戦は終焉を迎えた。



引用文献

ヨーロッパの教科書に書かれた日本の戦争  越田稜編・著(1995/10) 梨の木舎


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