北方領土の範囲、北方領土をロシアが支配することは不当か否か



1956年(昭和31年の政府見解−国会答弁)

日ソ共同宣言の承認を審議した国会での政府見解

 昭和31年11月29日 、参議院外務委員会において、下田武三政府委員(条約局長)は梶原茂嘉議院の質問に対して、以下のように、ソ連が北方4島を占領し続ける事は、不法とはいえないと、答えている。


○政府委員(下田武三君) 従来は、これらの島々に対するソ連の占領は戦時占領でございましたことは仰せの通りでございまするが、しかし共同宣言が発効いたしますと、第一項の規定によりまして戦争状態は終了するわけでございますから、その後におきましては、もはや戦時占領でなくなるわけでございます。しからば戦争状態終了後、歯舞、色丹をソ連が引き続き占拠しておることが不法であるかと申しますと、これはこの第九項で、平和条約終了後に引き渡すと、現実の引き渡しが行われるということを日本が認めておるのでありまするから、一定の期限後に日本に返還されることを条件として、それまで事実上ソ連がそこを支配することを日本はまあ認めたわけでございまするから、ソ連の引き続き占拠することが不法なりとは、これまた言えない筋合いであると思います。
 それから国後、捉択等につきましては、これも日本はすぐ取り返すといろ主張をやめまして、継続審議で解決するという建前をとっております。従いまして、これにつきましても事実上ソ連が解決がつくまで押えてあるということを、日本は不問に付するという意味合いを持っておるのでありまするから、これもあながち不法占拠だということは言えません。要するに日本はあくまでも日本の領土だという建前を堅持しておりまして、実際上しばらくソ連による占拠を黙認するというのが現在の状態かと思います。


1968年(昭和43年、北海道総務部に対する外務省回答)

北方領土の範囲、北方領土をロシアが支配することは不当か否か


昭和43年北海道総務部にたいする外務省の回答



『帰れ北方領土』北海道百年記念刊行会/編集 北方領土問題部会/発行(昭和43年7月29日) P7

北方領土とは

 これまで必ずしも明確でなかった「北方領土」という用語の定義等について、道総務部ではかねてから外務省にその見解を質していたが5月28日、次に掲げる政府の回答をえた。



▽「北方領土」の定義

 一般に「北方領土」という語が使われる場合には、広義の北方領土と狭義の北方領土とがある。
 広義の北方領土は
1 わが国固有の領土としてソ連邦にその返還を要求している地域(国後島、択捉島)。
2 日ソ共同宣言第九項においてソ連邦が日ソ平和条約締結後にわが国に引き渡すことに同意した地域(歯舞群島、色丹島)。
3 わが国がサンフランシスコ平和条約第二条(C)において放棄し、その帰属が未決定の地域(千島列島、南樺太)をいい
 狭義の北方領土は
1 前記の1および2のみをさすものと解する。
※政府が固有の領土と考えているのは1および2である。


▽北方領土の「範囲」

前項のとおりに分けて考えるのが適当である。


▽ソ連が@歯舞群島、色丹島A国後島、択捉島B千島列島(得撫島以北占守島まで)南樺太を占拠しているのは不当かどうか。

@歯舞群島、色丹島=これらの島は日ソ共同宣言第九項により日ソ平和条約締結後わが国に引き渡されることになっているので、わが国としても、これら諸島が現実にわが国に引渡されるまでの間は、ソ連邦がこれらの島を現実の施政下においていることを黙認したものと解される。
A国後島、択捉島=両島はわが国固有の領土であり、サンフランシスコ条約においても放棄していない地域であるので、ソ連邦に対してその返還を強く求めているが、これらの返還問題は、日ソ共同宣言によりこんごソ連邦との平和条約締結交渉を行なうさいに継続審議されることになっている。
B千島列島・南樺太=千島列島および南樺太の領土権の最終的帰属は未定であるが、わが国としては、これら地域に対する一切の権利をサンフランシスコ平和条約において放棄しているので、ソ連邦によるこれら地域の占有の合法性の判断は、同条約の当事国たる連合国の態度によって決定されるべきものと考えられる。


▽北方領土に対する国の「公式見解」

 北方領土問題に関連しての国会(特別委員会、外務委員会等を含む)における政府答弁は、政府の公式見解を基礎として行なわれるものであるが個々の質問に対する答弁には答弁者により時として表現の差異もありうるので、政府答弁の全体を通じて共通に示されている見解をもって政府の公式見解と解されたい。