RIMS(Recirculating Infusion Mashing System)


[RIMSとは何]
RIMS(Recirculating Infusion Mashing System)は、ビール醸造の為の麦芽の糖化を効率良く行う為の設備のひとつです。RIMSという名前はそのしくみからきており、次のような構造を持っています。
RIMSの構造図
糖化漕から出たワートはポンプによってヒータへと進み、そのヒータで暖められたワートは、再び糖化漕の上に戻り循環(Recirculating)します。コントローはサーミスタプルーブで温度を検知し、その値によってヒータの電力を制御してワートの温度を制御します。もっともRIMSがすべてこの構成でなければいけないわけではなく、コントローラの代わりに目と温度計とスイッチで手動で制御してもかまわないのですし、多くのRIMSで用いられている電気ヒータの代わりに、ガスコンロで温度を上げても良いのです。
要はマッシュ液を循環させるという仕組みが肝心なのです。では、この循環させるということによって得られる利点は何なのでしょうか。また短所は無いのでしょうか。それらは次のようなことだと思います。
[ワートを循環させることの利点]
・ポンプでワートが循環しますので、ワート(マッシュ)をいちいち攪拌する必要がなくなります。
・循環中に自然にグレイベッドによるフィルトレイションが為されるので、Lautering無しでクリアーなワートを得ることができます。
・糖化の効率が良くなり歩留まりが向上します。また糖化時間は早くなります。
・ポンプを使ってのワートの別容器への移し替えができます。 ・以上から醸造時間が短くなります。
[電気ヒータをコントローラで自動制御する利点]
・ダイアルを回すだけで温度設定が至極簡単にできるので、レシピを再現するのが簡単になります。
・ヒータが電熱式でガスコンロを占拠しないため、家人の嫌な顔が少し減ります。
[短所]
特に無いと思うのですが、HBD(Home-Brew-Digest)等の記事を見ると、オーバースパージになるとか、ヒータのマニフォルドの銅がワートに溶け込み易く、その結果どうたらこうたら等、と指摘されています。もっとも、私は気にていません。
[構築例(私のRIMS)]
RIMS制御装置 RIMS全景
1.糖化漕
糖化漕はPhils-Lauter-Tunという、米国の自家醸造Shopから買えるものを流用しています。保温の為アルミ蒸着マットを2重に巻いています。
2.ポンプ
Graingerというアメリカの店からかった、TEEL-1P677というポンプを使用しています。このポンプは マグネットドライブポンプというタイプの物です。この種のポンプは駆動部と液が流れる部分が完全に分離しており、磁気的に結合することでプーラーを回す構造になっています。そのため液がモータの軸などに触れることが無いため、汚染の危険やモータの軸油が液に混じるなどといったことが無くなっています。さらに80℃程度の温水でも使用可能なものを用いる必要がありますので、安易な物を使うことは出来ません。なお、日本国内でも理化学用に同様のポンプを売っており、2−3万円前後で手に入ります。
3.ヒータとマニフォルド
ヒータは湯沸し用のヒータを用いています。容量は5000W/240Vの物を100Vで使用していますから、約1キロワットです。240V用のヒータを使うのは、100V用のヒータに比べて熱の密度が低いため、 ワートの焦げ付きの危険性を減らせるからです。ヒータは銅管を半田付けして作ったマニフォルドに格納しています。
4.コントローラ
サーミスタでマッシュの温度を検出し、設定温度より高ければヒータの電力を押さえ、低ければ電力をあげる様になっています。焦げ付きとオーバーシュートを避けるために、単純なオン・オフでは無く、比例制御式でヒータの電力量を制御しています。
5.配管
ヒータからの出口にボールバルブを付けて、流量を制限出来るようになっています。あまりに流量が多いとポンプの吸い込みが激しく、その結果グレインベッドが詰まってしまいワートの流れが滞ってしまいます。 こうなるとヒータによってワートが焦げてしまいますので、適正な流量に抑えるために、ボールバルブを用意しています。なお、ポンプの入り口側で流量を制限するのは、ポンプに過剰な負担がかかりますので、やってはいけません。
[所感]
1.全自動ではない
全自動と思っていたが、それなりに面倒を見る必要はあるようです。例えば循環させていると途中でグレインベッドが詰まり、流量が減ることがありますが、こういうときはかき混ぜて再度流量を確保する必要があります。
2.いいかげんに作ると駄目みたい
ポンプで循環ということは、吸い込みや押し出しなど、配管にそれなりに圧力がかかります。そのためホースの接続部分等、かなりの気遣いが必要です。何といっても電気系に漏水は禁物ですので、漏電ブレイカを装置のAC電源に付けるべきです。
3.作るのは大変?
私はポンプやコントローラーの部品を米国から買いました。また、コントローラーも自作しました。電子工作の素養はある程度あった方が良いでしょう。もっともコントローラやマニフォルドは既製品も売っていますので、それを利用するのも手です。
[最後に]
所詮は道具です。これを使ったからおいしいビールが出来るという保証はどこにもございません。

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