樽でビールを飲むのは楽しいし楽ですが、ビンに比べて明らかな欠点がひとつあります。それは友人や知人に分けたり、パーティー等に持ってゆくのが樽のままだと困難だということです。そう、そのためには樽からビールをビンにつめ直さなくてはいけません。2.原理・構造
樽の中のビールは既に炭酸が入っていますから、これを逃さずにビンに移すことができれば、新たにプライミングする必要はありません。しかし薄情なもので、タップからそのままビンにビールを移しても、大方の炭酸は飛んでいってしまいます。せっかく瓶詰めして友人のところへ持っていっても、こんなビールでは威張ることができません。
そんな問題を解決するための道具がカウンタプレッシャーボトルフィラーです。この装置を使うことによって、ある程度の炭酸量を保持したまま、樽からビンにビールを移すことができます。
以下がこの記事で使った材料です。3.2 組み立て(1) 1/4"−3方ニップル (1/4"FNPT-MNPT-FNPT) * 2個 (2) 1/4" MNPT-Barb 真鍮タケノコ 3個 (3) 1/4" MNPT-Barb 真鍮タケノコ(90度曲がったもの) 1個 (4) 外径7φステンレスパイプ(真鍮でも可) 300mm (5) 外径9.5φ(3/8")ステンレスパイプ(真鍮や銅でも可) 100mm (6) 1/4" MNPT-FNPT 真鍮ボールバルブ 2個 (7) 1/4" FNPT-FNPT ニードルバルブ * 1個 (フローコントロールバルブでも可) (8) 配管用シールテープ*NPT(National Pipe Thread)配管用標準のネジ規格。テーパネジになっている。
FNPTはメネジ、MNPTはオネジ。
PT以外にPFというのがあるが、これはストレートネジで、今回は使わない。
*ボールバルブでは微調整が効かないため、微細なガス抜きが必要なこの用途には向きません。そこでニードルバルブやフローコントロールバルブ、スピードコントロールバルブ等を使います。
4.使用方法(3)7φステンレスパイプを付けていない方の三方ニップルに、上記パイプをねじ込む。
(4)三方ニップルと9.5φのパイプの中を通過するように7φのパイプを差し込み、オスネジを一方のメネジにねじ込む。
(5)上部の三方ニップルの両端にボールバルブを取り付け、双方のボールバルブの 端にタケノコを付ける。
(6)下部の三方ニップルのオスネジにニードルバルブをねじ込み、ニードルバルブの片端に90度タケノコを取り付ける。このタケノコにはビニールホースを付けて、ガスとともに出てくるビールをきれいに排出できるようにする。
(7)9.5φのパイプにゴム栓を付ける。
(8)瓶詰め予定のビンの中で、一番短いビンに合わせて7φのパイプを切断する。長いビンに瓶詰めするときは、パイプの先に適当な長さに切ったビニールチューブを付けて使う。
5.参考資料他まず第一にしないといけないのは、樽のビールとビンを冷やすことです。ビールは氷点、ビンは凍るくらいに冷やしてください。ビールが暖かいと、いかにこのフィラーを使っても炭酸が逃げてしまいます。またビンもしかりです。
続いて、原理・構造の章の図の様にラインをつなぎます。タケノコに差したホースは皆クランプでかしめてください。その後樽と同じ圧力にレギュレイタを調整してください。フィラーのバルブはすべて閉めておきます。
ビンにフィラーを通し、ゴム栓をきっちりはめます。次にフィラーのガスラインのバルブを開きます。ビンにガスが流れ込み、しばらくするとそれが停止します。そうなったらニードルバルブをゆっくり開いて、中の空気やガスを追い出します。そのまま10秒ほど保ってください。これでビン内の空気が炭酸ガスと入れ替わります。空気抜きが終ったらニードルバルブを閉じ、ガスをビンに溜めてビン内の圧を樽の圧と平衡させます。ガス圧が平衡したらガスラインのバルブを閉じ、ビールラインのバルブを開けます。ビン内の圧は平衡しているため、ビールはビンに入りません。その後ニードルバルブを少し開き、ビールを少しずつビンに移します。この時急ぐとたくさんの泡がでて、炭酸が抜けてしまいます。最低でも1分/本はかけてください。ビールがゴム栓のほんの少し下まで達したら、ニードルバルブを閉じ、ビールラインのバルブも閉じます。続いてニードルバルブをごくわずか開放し、ビンの上部のガスを抜きます。ガスが抜けたらフィラーを抜き、速やかに蓋をしてください。
4月5日にこのフィラーを試用しました。その結果ですが殆どガスの損失無く瓶詰めが可能です。ニードルバルブの性能が良いためか、ガスの抜け具合を微妙に調整できて非常に楽でした。ニードルバルブの性能がチラー自体の性能に大きく関与する様ですので、自作する場合は良いバルブを使いましょう。
冷たいビールが通るためフィラーも冷たくなりますので、ゴム手袋などをして作業した方が良いでしょう。また万が一のビンの破裂の備えて、防護眼鏡などをしてください。それと力を抜いた拍子にガス圧でボトルからチラーが外れることがありました。そういう時は天井をモップがけするはめになるかも知れません。
本記事の作成にあたり、以下の記事を参考にしました。6.あとがき
Marty Tippin さんの Marty's Counter-Pressure Bottle Filler は、市販の部品を用いて、売っている物と遜色の無いフィラーを作成しています。
Ken Schwartz さんの Poor Man's Real Counterpressure Bottler は、タイヤバルブとピクニックフォーセットを使用した、安価なで性能の良いフィラーの作成記事です。
また、市販のフィラーを買うのであれば、Zymurgy Vol.18 No.3 (Fall 1995) での評価記事が参考になります。なお、この記事中のFOXXの製品は、Zymurgyの評価を受けて後、改訂があった様です。
この記事のフィラーの制作には4−5千円は必要かも知れません。道具類を含めるともっとでしょう。鉛無し半田だけで数千円は必要です。市販のフィラーが$50程度で買えることを考えると、非常に意味の薄いことかも知れません。しかし私としてはこのフィラーの見栄えと性能に、醸造道具制作オタクとして非常に満足しております。ホームページに戻る