戯言其の壱
こんなを買いました
先日、一冊の本を購入しました。
タイトルは「The Legendary 2.3」といいます。著者はSimon Moore(サイモン・ムーア)という方です。
名前を見て「あ〜、あの人!」と解った方は、相当のアルファ・ロメオのファン(特に戦前の)でしょう。
彼は1986年に「The Immortal 2.9 Alfa Romeo8C2900 A&B」という本を出版されました。上の写真の右に写っているのがそうです。
この本は、1935年から39年の間に製作されたアルファ・ロメオ8C2900シリーズ全車の素性を纏めたものでした。世界中に点在する該当車
(約40台)の詳細を全て自身で調べ上げ、仕上げるのは並大抵の事ではないでしょう。
日本を代表する自動車ジャーナリストの某氏は、「アマチュアにもかかわらず長年の研究・調査により、生涯にただ一冊の素晴らしい本を作る人がいる」と云う様な事を書かれた際に、その一例として「The
Immortal 2.9 Alfa Romeo8C2900 A&B」を紹介されていた記憶があります。
8C2900には、当時のGPカーのTipo C(8C 1935)シャシーに、一代前のGPカーのTipo
B(P3)エンジンをディチューンした2.9リッターの心臓を抱くスポーツ・カー(A)とグランツーリスモ(B)が有ります。
2900AにはGPカー譲りのハイパフォーマンスが、2900Bには当時のカロッツェリアの手による素晴らしいボディが備わっており、ヨーロッパの人々を魅了した事でしょう。
そのSimon Moore氏が今年、さらに凄い事を成し遂げたのです。「The Legendary
2.3」を完成させたのです。
そうすると、彼は既にプロの研究家になられたのでしょうか? はたまたアマチュアにもかかわらず、素晴らしい本を二冊完成させたと云う事なのでしょうか・・・?
今回は、1930年代はじめに大活躍したAlfa Romeo 8C2300シリーズ全車の素性を纏めたのでした。
前回の40台から188台へと対象台数が増加した為か、この本は三冊に分かれており、頑丈な箱に入っておりました。上の写真の赤い本と、その上の黒い箱がそうです。
中を見てみると8C2900の時と同様な作りで構成されています。シャシー番号順にその車の履歴を詳細に記載されています。有名な車に関しては大きな写真を含め、10ページ以上使っている所も有ります。尤も
"I know nothing about this chassis number" の一行で終わっている
箇所もありますが、当時はどこのメーカーでもC/Nの管理は今ほどしっかりしていませんでしたから、番号の空打ち(番号飛ばし)が不可抗力
若しくは作為的に行われた可能性は否定できませんし、この事でこの本の評価が下がる事は無いでしょう。
沢山掲載されている写真も、当時のレース・シーンやちょっとしたスナップ・ショット的なもの、近年の姿等々盛沢山。ラジエータ・グリルの前で
お座りしている赤ちゃんの写真もあります。こんな若いうちから8C2300を尻に敷くとは羨ましい限りです。
また、三巻の最後の方には Triumph Dolomite の事が載っています。何故トライアンフ?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、この車メカニズムが8C2300にそっくりなんです。排気量は2000ccなんですが、エンジンの眺めは瓜二つ。
誇り高き英国人にも真似されてしまうくらい素晴らしい車だったわけです、8C2300は。
では8C2300のどこが凄いのでしょう。
一言で云えば「1930年代を代表するスポーツ/レーシングカー」となるでしょうか。
1920年代後半にロードレースで大活躍した、6C1500/1750の発展進化版の8C2300は6C1750と同じボアXストローク(65mm
X 88mm)の
直列8気筒エンジンを搭載(6Cは6気筒)。6Cではスティール製のブロック/ヘッドをアルミ合金製へ、潤滑系ではオイルパンのウエットサンプからドライサンプへの変更、DOHCと加給機の標準化(6CではSOHCや自然吸気仕様のグレードもありました)等々ヴァージョンアップが図られ
レースに出られるスポーツカーからスポーツカーとしても使えるレーシングカーへの変更がうかがえます。
シャシー構造は基本的に6C1750を踏襲、ホイールベースは3.1m/2.75m/2.65mの三種類。標準仕様は2.75mで、これはほぼ6C系と同じ。
3.1mは4人乗り仕様。これは当時のル・マン24時間レースの為に作られたタイプで、2リッターを超える排気量の車には4人乗りを規則で要求していた為です。この二種類のホイールベースの車を使い分け、ミッレ・ミリアやル・マン、TTレース等で大活躍をしました。
これだけでも凄いのに、もう一つ2.65mのホイールベース仕様を作成。これはヘッドライトやフェンダーを取っ払い、グランプリレースに打って出るべく作られ、成功を収めたモデルです。
この三種類はホイールベースの長い方から「ルンゴ」「コルト(コルサ)」「モンザ」と呼ばれ、「モンザ」はスクーデリア・フェラーリにより2.6リッターに拡大された8C2600も有ります。
1931年から35年頃まで8C2300/2600は数多くのレースを総なめにしてきました。現代のラリーに匹敵する過酷なロードレースのミッレ・ミリア、現代のF1に相当するグランプリレース、今も昔も耐久レースの華であるル・マン。これらを同時進行で、同一車種で制覇を成し遂げたのです。
ライバルだったブガッティもメルセデスもベントレーも真似出来なかったのです。
現代ではレギュレーションの関係でこんな事は出来ませんが、たとえ全種目!?に出場出来る車を作ったとしても優勝は出来ないでしょう。
私の稚拙な文では魅力の100分の1も表現出来ませんでしたが、もしもこの本に興味をお持ちならばこちらへアクセスしてみて下さい。
決して安い本ではありませんが、支払った金額に見合う内容だと云えます。
但し、この本を見て本物が欲しくなっても私に責任を追及しないで下さい。