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ガタ岬:スペイン最南東端をめざして・・・(つづき)

Cabo de Gata (Part 2)

gata12ロス・ヘノベセス・ビーチ

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ロス・ヘノベセス岬南方
 

翌日は前日にやり過ごした、もっと手前にある岬や入り江を目指すことにしました。昨日と同じ道を30分ほど行き、風車のある所で今日は左に折れて山道をたどるとロス・ヘノベセス・ビーチに出ます。長さ1.5kmくらいのこの辺りで最大の砂浜には、朝なので人影は全くありません。朝日をまぶしいほどに照り返す海面を左手に長いビーチを歩き、南に砂浜が尽きるところまで来てみると前方に大きな岩山のようなロス・ヘノベセス岬が突き出ています。眼前にそびえるこの岬を登ってさらにその先へ行ってみることにしました。やっとのことで岬の頂上に登りつくとあっと息を飲むような大パノラマ。北はサンホセの向こう側の岬から南ははるかに連なる山々や岬、東側は地中海の海原が私の目の中まで青く染まってしまいそうなほどひたすらに広がっています。

 ここから先には行けるのだろうか、と思って南方に目をやると、切り立った黒っぽい岩の崖がいくつもの岬をつくって続いていく中腹あたりに、細い道の跡らしきものが見えます。岩を手につかみながら進んでいくといつしか自分が眼下の海に向かって切り立った崖の真ん中に立っているということに気付き、足がすくみそうになるのですが、靴に触れる岩肌が堅固で全く足が滑ることがないので、普通のウォーキングシューズをはいている私でも困難なく先へ進めます。日本の岩山と違って極端に雨の少ないこの土地では、岩が風化してもろくなることがほとんどないのでしょう。


gata08ボロナル入江
 

gata11ボロナル入江
 

gata09ボロナル入江
海から見たところ
 

 

切り立った崖の下にいくつかのちっぽけな砂浜を見て過ぎた後、少し大きめの岬を越えるとその下には静かな入り江が広がっていました。もちろん人は誰もいませんし、砂浜には足跡さえありません。「ここにきめた!」と思って転がるように岩だらけの山を下り、砂浜に到達しました。このあたりのビーチの名前ははっきりしません。手持ちの地図の一つににボロナル入江と記されているのがここなのかもしれません。

 長さ100m弱ほどで少し奥行きのある、黄土色の砂浜を処女地に足を踏みいれるような気分でゆっくりと波打ち際まで歩き、そこで服を脱いで横になりました。砂は粒が極めて細かくさらさらとして、何も敷かずに直接体に触れたほうがかえって気持ち良く感じます。海の水のあまりにも透き通った青さに惹き付けられ、私は水温の低さも気にせず海に入っては泳ぎ、冷たさに耐えられなくなったところで砂浜に上がって澄んだ日差しで体を暖めることを何度も繰り返していました。海はかなり遠浅でたった一人で泳いでいても波にさらわれる危険性は感じられません。

 2時間ほど裸でここで過した間にたった一度だけ、この浜を囲む岩山をトレッキングのいでたちで通り過ぎていく男性を見かけましたが、このあたりは観光案内所でもらった地図にもNaturistビーチと書いてある所なので、彼も私も何ら気にすることなく手を振って挨拶をかわしました。

さて、来たときと同じ山道を戻っていくとさらに2組ほどトレッキングの人たちに出会い、そして再びロス・ヘノベセス・ビーチに帰り着きました。昼過ぎの砂浜には、歩いているとぽつりぽつりと数組の水着の人たちを見かけました。このビーチはどこにもNaturistとは書いてなかったのですが、ふと見ると向こうから裸の若いカップルがやってきます。サンホセへ着いて以来初めて見る私以外の裸です。出会いがしらの挨拶につい野暮にも「ここはヌードOKなの?」と訊いてしまったのですが、屈託なく「ええ。」との答え。私がつられて服を脱ぎ終えた時には、彼らはもうはるかかなたへ歩み去っていました。このほとんど人影のない広い砂浜で、遠くに裸で無邪気にふざけあっている恋人達を見ていると、ほんとうにうらやましい気持ちになってきます。

gata10ロス・ヘノベセス・ビーチ

 

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ロス・ヘノベセス・ビーチと岬を望む

 

 このようにサンホセ周辺は自然のほかはほとんど何もないのですが、この自然そのものをいやというほど満喫できるところです。夏にはこの何倍もの観光客が押し寄せてくるとしても、この広大な土地ですから人間の占める割合なんてたかがしれたものでしょう。将来リゾート地として発展し俗化していくのが少し心配ではありますが、今のところは宿の娘さんが「日本人に会ったのは生まれて初めて」と言うくらいですから(彼女の祖父は十数年前までここで山羊飼いをして暮らしていたそうです)、まだまだ静かな異郷です。

 

ガタ岬周辺へのアクセス

 この地域へのアクセスは前述のようにアルメリアからサンホセまでのバスが最適。ハイシーズンには増便されるとの事、オフシーズンには日曜日のバス運行はないので注意。もちろん車があればさらに行動範囲が広がるが、オフロード走行に適した車でないと不便。

 

周辺の見どころ

ガタ岬・ニハール自然公園

 サンホセやガタ岬さらに内陸の荒野を含む広大な地域がこの自然公園に含まれます。独特の地形と野生動物の宝庫です。

 ガタ岬の西側でバスの便がいいのはサンミゲル・デ・カボ・デ・ガタという村で、こちらには広大な砂浜とフラミンゴなど野生の鳥たちが集まる湿地帯が広がっているそうです。

 またサンホセの観光案内所にはさまざまな陶器や藁カゴなど、素朴で味のある民芸品が展示されていましたが、訊いてみるとこれらは全て少し内陸に入ったニハールの町で作られているそうです。日本の百貨店でも時おり見かけるグラナダやバレンシア周辺の民芸品とはまた少し違った味わいの魅力(たぶん大量生産されていないからでしょう)は、機会があればこの町を訪ねてみたいという気にさせてくれました。

 サンホセの北方の海岸線にもガタ岬方面と同様な海岸線が続き、いくつかのNaturistビーチがありますが、交通の便があまりにも悪く、車でないかぎりアクセスが困難です。

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アルメリアのアルカサバ
 

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アルメリアのアルカサバ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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メディアルナ・ビーチ(?)
ここが映画「Las Huellas Que Devuelve el Mar」のストーリーの要として幾度も出てきます。

 

アルメリア

 アンダルシアの都市の中で私が最も好きな町。人口20万弱の港町で、明るい解放感とともに地方の素朴さと都会の洗練を合わせ持っています。日本人観光客を全く見かけない街ですが(日本語でアルメリアを紹介しているガイドブックはほとんど見当たりません)、いわゆるジブシーと呼ばれる人たちやアフリカから働きに来ている人たちがたくさんいて、国際色は豊かです。こう言うとなにやら物騒な町、というイメージを持たれるかもしれませんが、観光客目当てにお金をせびる人や所持品を狙っていそうな人はほとんどいません。

 最大の見どころはアルカサバ。10世紀にムーア人によって建てられた城で、二つの丘にまたがったその雄大さは町の多くの場所から見上げることが出来、城に登れば地中海とともにこの地域の野趣に富んだ風景を眼下に見渡せます。

 市街地の魅力は建ち並ぶ建物に統一性がとれていることです。私が思い当たったその理由は2つあるのですが、一つはビルや家々がアンダルシア特有の白壁かもしくはこの地方の岩や土を使った黄土色をしていることで、それ以外の色がほとんど見当たらないことが街の景観に落ち着きを与えています。もう一つは、この地が16世紀に大地震により大きな打撃を被ったことにより、その後になされた集中的な再建工事が建築物に統一された様式を与えてくれたのだと思います(これはリスボンの街の魅力とも同様です)。

 さらに付け加えますと、私の美意識の観点からではありますが、街ゆく女性達の美しさはアンダルシアでもここが一番です。

ミニ・ハリウッド

 アルメリアから内陸部へ北に20km強ほど行ったたところに、いわゆるマカロニ・ウエスタンの撮影が行なわれたセットがそのまま残されたテーマパークがあります。西部劇ファンの方には興味深いのでは?

 

cine映画に見るガタ岬周辺

 アルメリア周辺が数々のマカロニウエスタンのロケ地として「聖地」ともいうべき場所であることは、Yoshi 'garringo' Yasudaさんのサイトをご参照いただくとして、ここでは私にとって印象深い最近のスペイン映画をひとつ・・・

Las Huellas Que Devuelve el Mar(英題:Lost Footprints)
 スペインの新進ガビ・ベネロソ監督(脚本も)による2004年の作品。題名は映画の内容を加味して意訳すれば「引潮が戻してくれる足跡」とでもなるでしょうか。アンダルシアの海辺の、夏の間だけリゾートとして若干の観光客たちでにぎわう小さな村へスーツケースを抱えた一人の少女がやってくるところから物語は始まります。同じ夏にこの地を訪れる2組のカップル、妻に先立たれた悲しみから立ち直れない画家、そしてこの地でバルを営む夫婦とその息子。皆それぞれにジレンマを抱えこれからの生き方にとまどう彼等ですが、毎朝パンを配達しに来る青年の助力でもつれた糸がほぐされていきます。現実的なようでいてどこかリアリティに欠けたようなセリフやストーリー展開に最初は戸惑いますが、見終えた後はひとつの「真夏の
の夢」から覚めたような不思議な感動を覚えることができます。それはなんといっても映画の中にひんぱんに登場するいくつもの幻想的なビーチの風景の力が大きいでしょう。内陸のシーンの大半はマラガ近郊で撮られているようですが、実はビーチとその周辺のシーンのほとんどはガタ岬周辺の、本項でも紹介した私にも思い出深い場所ばかりなのです。とくに私が初日に訪れて最も印象深かったビーチが、この映画の主役とでも言っていいような存在として描かれています。

 

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Viaje por las Playas Naturistas

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