■ セイラムの風〜From Etsuko #018--私のお気に入りの散歩道(Mill Creek)
セイラムの風 目次
-- ミル クリークに秋鮭(Fall Chinook Salmon)が帰ってくる? --

産卵のための川床
産卵のための川床が、川岸に沿って細長く、石、砂利で作ってある。
我が家の前に、小さな川ミルクリーク(Mill Creek)が流れています。幅10m程ですが、四季折々、いろんな変化を見せつつ、蛇行しながらセイラムの街を横切っています。大抵、川岸は家々の庭に接していますが、ダウンタウンにあるお役所の近くは、クリークの両岸が綺麗な遊歩道になっていて、人々の憩いの場所になっています。川辺をさっさと歩くと、10分程で一周出来るくらいの短い距離ですが、私の大好きな散歩道です。この道をゆっくり歩き、所々に置いてあるベンチに座り、穏やかに、ときには雨の後の、激しく流れる川を眺め、鳥の声を聞き、周りの木々や草花を見ていると、時間の経つのを忘れてしまいます。ベンチに座って静かに本を読んでいる人もあり、至福のひとときです。

ミルクリークはウィラメット川の支流になります。ミルクリークの流れはセイラムの街の近くを南北に流れるその川につながり、ウィラメット川は、北隣のワシントン州との州境を東西に流れるコロンビア川と、ポートランドの辺りで合流し、西に向かって太平洋に注ぎ込みます。

鮭を観察するためのデッキ
鮭を観察するためのデッキ。川の設計図のプレートがあり、流れの様子がよく分かる。
この散歩道にはいくつかのプレートがあります。それにはミルクリークに鮭が来ることを通して、自然の大切さを子供にも分るように、絵入りで書いてあります。

かつては、ミルクリークは鮭、鱒系の魚の生息地でしたが一時期、その姿が見られなくなりました。ウィラメット滝の脇に、効果的な鮭の階段状の通り道を作り、そして、汚染された川の清浄化のための公の大きな努力により、1968年、ミルクリークにFall Chinook Salmonの最初の姿を認めることが出来ました。オレゴン魚野生生物局はその年、1.7百万匹の鮭の稚魚を放流し、それはその後、毎年続けられました。

多くの人々、組織などがこの事に賛同し、また、それに関して市民が意識を持つよう、下記のような、様々なプレートが散歩道に沿って設けられてあります。

遊歩道の入り口にあるプレート
遊歩道の入り口にあるプレート。「人と動物の共存地域」
その中の一枚、「ミルクリーク 人と動物の共存地域」には、このように書かれています。
「魚野生生物局は、街の中のこの小さな川ミルクリークをより良い川にする活動を通して、魚や野生生物、そして人々のために、私たちに何が出来るか示したいと思っています。

かつて、ミルクリークにかなりの化学物質が誤って流された不測の事故がありました。当局はその賠償金により、下記の事を行いました。
*鮭が産卵、成育し海に行き、帰ってくるために小川を改善する。
*鮭を観察する場所を設置する。
*野生生物を川辺に惹きつけ、また、流れを改善するのに良い植物を川岸に植える。
*学校の教材として、川の大切さを体験できる地域を作る。
*人と小川がどのようにそれぞれ依存しているか、自覚を促す。

典型的な街の小川として、ミルクリークは、多くの問題を抱えています。
*不測の、又、汚れた雨水からの汚染。
*タイヤ、プラスチック、家庭用品などのごみ。
*川岸の植物による日陰の不足。
*自然の構成(砂利、岩、倒木など)の不足。
*人工の護岸などによる不自然さ。

一方、これらの問題の改善方法の多くは、まったくシンプルに、費用がかからなくて出来ます。地域の人々が集って、川をきれいにすることで、誰もがその結果として、川からの恩恵をうけることが出来ます。

どうぞ、少しの間この掲示板を読んで、私達がここで行った事を考察してください。そうすれば、この友達のような近所の小川を、どの様にしたら助けることが出来るかについて、より多く知ることができます。

ミルクリークの流域に住み、また、働いている人々は、あなた方の行いが、水の質に影響することに気づいて下さい。街の共有地や草地はミルクリークを綺麗に保ち、鮭が帰ってくるのを助けます。鮭のために良い水は、人々のためにも良い水なのです。皆でちょっとの時間と労力をかければ、川はいきいきと活動をします。 皆さんの参加をお待ちしています。」

鮭の回遊の様子を書いたプレート
鮭の回遊の様子を書いたプレート。絵が描いてあり、子供にも親しみやすく、分りやすい。
また、鮭の一生を描いたプレートには、このように書かれています。
「鮭に適した綺麗な水、丁度良い速度の流れには、若い鮭が食べる小さな生物が生育します。多すぎる沈殿物は鮭の鰓を詰まらせ、卵を窒息させ、そして彼らの体力を減少させます。生物が少なすぎると、多くの若い鮭を長生させることが出来ません。成魚は産卵の時は食べることが出来ないのですから、それまでに充分に栄養をつけていることが必要なのを忘れないで下さい。もし、流れが速すぎると、魚も他の生物もその生命を保持することが出来ないのです。

産卵のためにミルクリークに帰ってくるFall Chinook Salmonは卵、幼魚のために良い状態の水を探します。鮭は冷たい良い水を好みます。冷たい水は温かい水より、より多くの酸素を含み、また、藻が繁殖しすぎるのを防ぎます。でも、冷たすぎる水は幼魚の食物の育ちを妨げます。鮭は充分に酸素の溶けた冷たい水を好むのです。

回遊性の鮭はユニークなライフスタイルを持っています。彼らは生まれた場所から海への道を見つけ、そして、また帰ってきます。真水から海水へ、海水から真水へと、その変化に適応しなければなりません。この図はミルクリークに展開する鮭の生命の循環を表しています。養魚場の鮭も同じサイクルを完成させるため、川に放流されます。8月後半、Fall Chinook Salmonの成魚は、ミルクリーク、シェルトン水路などの産卵場所へと、海からコロンビア川に入っていき、体の色や形が変化し始めます。9月か10月、産卵場所の川の浅瀬の砂利に卵を産み、成魚はその一生を終えます。

1月か2月、川床に産みつけられた卵が孵化します。その後、3〜4ヶ月間、その場所辺りの流れの中で成長します。5月か6月、水嵩が増し、水温の上昇などの刺激により、幼魚は下流へ移動します。そして体が銀色に変化して、太平洋に入っていきます。その後、海の中で充分成長した鮭は八月に生まれた場所へと移動を始め、再びライフ・サイクルを始めます。」

春のミルクリーク
春のミルクリーク。流れの中央にV字の堰が見える。
川辺の散歩道を歩いていると、短い距離の間に、この様な鮭のための仕組みが作られていることを見る事ができます。V字形に並べ積まれた石、流れに作られた岸に沿う小さな浅瀬は産卵の場所、川岸には木々が適度な日陰を作り、流れに横たわっている朽ちた木の幹は、小さな生物の格好の住み家となっています。プレートを読みながら歩いていると、セイラムの人々がどんなにこの川ミルクリークを大切にし、鮭や小動物を育成し、自然を助けているかがよくわかります。

日本では北海道の秋鮭が有名ですが、こちらでは春鮭、秋鮭とあり、この4月、春鮭(Spring Chinook Salmon)がコロンビア川に帰ってきた、とのニュースがテレビで放映されていました。ただ、現時点では、ウィラメット川は普通ですが、コロンビア川はなぜか例年より非常に少ないそうです。

また、釣り好きの友人の話によると、Summer Steelhead, Winter Steelheadと言う、釣り人の狙いとなる大型の鱒がいます。味はとても美味ですが、釣りの数量を厳しく制限されているとのことです。この魚は鮭ぐらいの大きさがあり、同じように川と海を回遊していますが、形は鱒であり、産卵を終えても死なないのが、鮭と違うところだそうです。このように季節ごとにいろんな魚がいて、オレゴンのアウト・ドアの一つとして、スポーツ・フィッシングがとても盛んです。

これから夏になり、窓を開ける機会がふえますが、緑の木々をとおしてミルクリークのせせらぎか聞こえる季節となります。雨の後はやや大きめに、普段はやや静かに、心を落ち着かせる川音を聞かせてくれます。残念ながら、私はまだこのミルクリークで鮭を見た事がありません。以前、見かけた事がある、と言う人もあり、セイラム近郊のウィラメット川では帰ってくる鮭が見られるそうなのですが。今年の秋にはミルクリークに、Fall Chinook Salmonが帰って来る姿を見たいと願っています。散歩に楽しみが一つふえました。

2005/04/25-from etsuko
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