■ セイラムの風〜From Etsuko #016--ニューオリンズの料理・クレオール(Creole)/ケイジャン(Cajun)
セイラムの風 目次
私たち二人はこのクリスマス休暇に、ジョージア州 アトランタ(Atlanta)、ルイジアナ州 ニューオリンズ(New Orleans)を旅行してきました。南部は歴史と食の街、ニューオリンズを選んだ大きな理由は、ジャズの発祥の地であることに加え、特に、美味しい料理が食べられることです。

ニューオリンズには二つの代表的な料理の流れがあります。それはクレオール(Creole)、ケイジャン(Cajun)と言われていますが、それらはどのように違い、どのように同じなのかよく分からないまま、ニューオリンズにやって来ました。スパイスのきいた南部の料理で、アメリカの一般とは異なり、美味しい料理がたくさんあると言った程度の知識しかありませんでしたが、砂糖キビ大農場(Sugar Cane Plantation)を訪れる地元のツアーに参加(小型ワゴンにアメリカ人 5人、日本人 2人)した時の、案内者兼ドライバーの説明で、二つの違い、共通点を初めて知ることが出来ました。

彼はこのように説明してくれました。大半の旅行者は、クレオールとケイジャンは同じものであると思っていたり、あるいは、混同して使っています。また、地元ニューオリンズでも、近頃は、二つが混じりあって、区別がつき難くなっているのも事実です。しかし、元来は明らかな違いがあったのです。

ナッチェス号
ナッチェス号。ミシシッピー・クルーズの中心となっている船。何隻かあるクルーズ船の中で、唯一、蒸気機関で動く外輪船。スチーム・ボートと呼ばれて親しまれている。
アメリカは巨大なメルティング・ポット(Great Melting Pot)と言われていますが、その中で、ニューオリンズは特別な、極めて混じりあった独自の世界を作っています。複雑で、豊か、そして多様な歴史は、フランスの影響を二つの流れで受けてきました。それが、クレオールとケイジャンです。そして、それは、カリビアン(Caribbean)、アフリカ(Africa)、スペイン(Spanish)、ネイティーヴ・アメリカン(Native American)などの文化の影響も受けています。ニューオリンズの人にとって、料理をすることは、喜びであり、さらには、神聖な行為とさえ思われ、大切にされてきたのです。

スペイン語、ポルトガル語を語源とするクレオール:植民地生まれの白人料理、は都会的なクラシックなフランス料理から生まれてきたものです。18世紀に入植し、裕福になったフランス人は、母国からシェフを呼び寄せ、その下で、解放された黒人奴隷をコックとして雇いました。彼らはチャクト・インディアン(Choctaw Indians)から地元の料理を学び、自分の母国アフリカ、カリビアンの食材と料理方法も持ち込みました。18世紀後半、ニューオリンズを支配していたスペインも、さらには、イタリア、ドイツ、オランダ移民も影響を与え、世界に例を見ない料理を生み出しました。

一方、ケイジャン料理はクレオールほど多くの国々は影響してはいませんが、同様に興味深い歴史を持っています。18世紀の後半、イギリス人プロテスタントは、カナダのアカディア(Acadia)(あるいはノヴァ・スコシア(Nova Scotia)。すなわち、New Scotland)からフランス人カソリックを追放し、フランス語が話されているニューオリンズに移住させました。彼らアカディアン(Acadians)は ケイジャン(Cajun)とやや蔑んで呼ばれました。

田舎風生活様式の彼らは都会生活に馴染めず、バイユー(Bayous)と呼ばれるミシシッピー川沿いの湿地帯に住み、農民、猟師、あるいは漁師として、都会とは離れて生活をし、野趣豊かな、そしてシンプルな料理を生み出しました。それは、野生の動物、ザリガニなどの魚介類、スッポン、ソーセイジ、米、唐辛子などを使った、ホットでスパイシーな料理となりました。

ガンボ・スープ
ガンボ・スープ。200年以上の歴史を持つパティオの美しいレストラン「Gambo Shop」のが一番有名。スープ類は、ボールかカップで量が選べるようになっている。ご飯が中に入っていて、混ぜて食べる。
クローフィッシュ・オコーナーと魚のムニエル
クローフィッシュ・オコーナーと魚のムニエル。クローフィッシュの料理も、数多く種類があり、これは、その中の一つ。レッド・フィシュ、トラウト、など魚も多く、ムニエルやスープが美味しい。
私たちがトライした、代表的なニューオリンズ料理について書いてみます。

■ガンボ(Gumbo)
ルイジアナ料理の中で一番良く知られているは、濃厚なスープ「ガンボ」です。店によって、いろんな種類がありますが、ほとんどに「オクラ」が入っています。ガンボという言葉はアフリカでオクラのことで、それが広まったと言われています。このスープの中に、ホワイト・ライスを入れて食べることが多いです。フレンチ・ルー・ベース、スパニッシュ・ペッパー、アフリカン・オクラを基本に使い、それに、鶏肉、ケイジャン・ソーセイジ、たまねぎ、グリーン・オニオン、セロリ、などをタイム、ベイリーブ、カイエン・ペッパー、塩、胡椒などのスパイスと一緒に煮込んだものが、良く知られています。また、肉を使わない、セロリ、グリーン・オニオン、キャベツ、ほうれん草など緑の野菜のガンボもあります。これはもともと、次の年の幸運のため、また友情の始まる素敵な金曜日に作られていました。そして、このスープに加えられたすべての緑は、あなたに新しい友達をもたらす、と言われています。

■ザリガニ(Crawfish)
ミシシッピーの大河口に沿い、湿地帯の多いこのあたりはザリガニが多いのでしょう。シンボルになっているのでしょうか、お土産品の中にも、Tシャツやエプロン、オーナメント、調味料のラベル、置物などいろんな所で見かけます。お料理にもよく使われ、独特の野性味を楽しむ事が出来ます。代表的なものは、スパイスを利かせたザリガニの蒸し煮、濃厚なスープ クローフィッシュ・ビスク、グリーンベル・ペッパーやセロリなどと煮込んだスープをライスにかけて食べる クローフィッシュ・エトフェという料理などがあります。

■ポー ボーイ(Po'Boy)
ニューオリンズ流大型サブ、すなわち、サブマリン型大サンドイッチ。中身が多いほど、ジューシーなほど、いいと言われていて、ナプキンが何枚あっても足りないくらい、ボタボタ汁をたらしながら食べます。Po'boyとは、Poor Boyから来ていて、捨てられたパンに、食べられるものなら何でも挟み込んで食べたのが始まりのようです。 蛎、えび、ハム、ロースト・ビーフ、トマトなどの野菜、いろいろなものを挟みます。カフェテリア、レストラン、などで売られたていました。

■レッド・ビーンズ・アンド・ライス(Red Beans and Rice)
この料理は伝統的に月曜日に作られていました。なぜなら、月曜日は洗濯をする日でしたから。赤い豆と骨付きハムを一日中火に掛け、洗濯が終わる頃には柔らかく美味しい豆のシチューができあがりました。労働した後、ライスにかけて食べるシチューはどんなにか美味しかったことでしょう。

■ジャンバラヤ(Jambalaya)
もともと、残り物の肉、魚、ソーセイジと沢山あった米を使ったこの料理は、貧しい人々のための、貧しい食事として始まりました。でも今日、これは、ルイジアナのもっとも尊敬される料理の一つとなりました。そして、ケイジャン、クレオール料理の双方が、自分自身の料理だと、誇らしく主張しています。
肉、魚、ソーセイジ、たまねぎ、グリーン・ペッパー、セロリなどを米と一緒に大きなフライパンがダッチ・オーブンに入れて蒸し焼きにします。スペインのパエリヤのようで、スパイスが利いていて美味しいです。

オイスター・ロックフェラー
オイスター・ロックフェラー。見た目、味より、名前が勝っているように思いましたが、有名な料理としてアメリカの案内書にも、日本のにも書かれている。ほうれん草、セロリなどの野菜の筋、繊維を除き繊細に料理されているのが特徴のようです。
ハリケーン・ミックス
ハリケーン・ミックス。ハリケーン・カクテルの素。手軽に美味しい飲み物が出来る。この素を使って、自分流の飲み物を作るのも楽しい。美味しかったので、インターネットで追加注文しました。$3.00/パック。
■オイスター・ロックフェラー(Oyster Rockefeller)
焼いた蛎の上に「ロックフェラーのように裕福」と名づけられたトッピングが乗っているこの贅沢なお料理は、ニューオリンズの有名なレストラン「Antoine's」の二代目オーナーによって発案されました。注文した時、「これは、当店が発明しました、元祖です」とウエイターが自慢していました。殻に載った蛎の身の上にトッピング(グリーン・オニオン、パセリ、セロリ、トマト、パン粉、スパイス、等をとろ火で蒸し焼きにしたもの)をのせ、オーブンで焼いたもの。皿の上に6個/1人ほど載せて饗されます。

■タートル・スープ(Turtle Soup)
ウエイターの話だと、甲羅の差し渡しが60cmほどの、食いついたら離れない、亀とか。 大型のスッポンと言ったところでしょうね。あまり、しつっこくなく、だけれど、結構濃密なスープで、とても美味しい。これもニューオリンズの代表的な料理です。

■バナナ・フォスター(Bananas Foster)
多分これはニューオリンズで最も良く知られたデザートでしょう。私たちがブランチを食べた、レストランBreakfast at "Brennan's"で考案され、大抵テーブルの脇でパフォーマンスされます。細長く薄く切ったバナナをバター、砂糖、シナモンのソースで煮ます。一方、小さいソースパンにラム酒をいれ、火をつけ注意深くバナナとソースに注ぎます。そして、その上にアイスクリームをのせ、温かいソースをかけていただきます。

■ハリケーン(Hurricane)・・・カクテル(Cocktail)
ニューオリンズの最初の夕食時、隣のテーブルの地元の家族との楽しい会話をしたのですが、その時、これは絶対に、と勧められたのがパット・オブライエン(Pat O'Brien's)の カクテル「ハリケーン」でした。 美味しいが、アルコールが強いので、二人一杯でちょうどよい、との助言つきした。オブライエンは時間が合わなくて、別の店で飲みましたが、パッション・フルーツとラム酒の真っ赤なカクテルはとても美味しかったので、ハリケーン・カクテル・ミックス(Cocktail Mix)を買って来ました。自宅での、ニューイアー・パーティーに、このハリケーン・ミックスに水を加え、アルコールは入れず、小さく切ったベリー類、リンゴ に、アイスを入れた、フルーツ・パンチ風にしたら、大変好評でした。

フレンチ・クオーターの夜
フレンチ・クオーターの夜。最後の夜、雨になった。雨に濡れたバーボン・ストリートが良い雰囲気。この通りは、ミシシッピー川に平行し、フレンチ・クオーターの真ん中にあり、最も賑やか。小雨に濡れながら、ニューオリンズの最後の夜を満喫。
これらの料理に加えて、うれしかったのは、どの店でも、出されるパンが素晴らしく美味しい。外側はカッリとして、中身はフッワとしています。フランスの伝統的なパン作り技術とニューオリンズの気候が、独特の美味しいパンを作り出しているからとのことでした。これが、真っ白のナプキンに包まれて饗されます。

アメリカ、ヨーロッパなどを旅して、一週間もすると、美味しくたべられる料理が思いつかなく、困ることが多いですが、ここニューオリンズでは逆で、食べたいい料理の種類が多すぎて、困る感じでした。新鮮な魚介類が主な食材であることに加えて、米を使った料理が多いことが、私たち日本人には馴染みやすいのでしょう。

これらの美味しい料理が食べられるレストランが多くあるのは、フレンチ・クオーターと呼ばれるジャズと食が有名なニューオリンズの観光の中心地、ミシシッピー川に沿い、歩いて廻れるくらいの小さな旧市街です。アメリカで、面積当たり一番レストランの多い街と聞いています。18世紀始めに入植したフランス人が築いた建物が、後の大火によって焼失し、その時この街を統治していたスペイン人によって築かれましたが、今でもフレンチ・クオーターと呼ばれています。鉄レース細工をしたフェンス、道に張り出したバルコニーが美しい街並み。入り口は小さくても、パティオのあるアンティークなホテルやレストランは結構広く、エキゾチックな雰囲気を漂わせています。第一印象は、これがアメリカの街!!と言った感じでした。いたる所でジャズが聞こえ、大道芸人が観光客を楽しませてくれます。バーボンストリートを中心に、レストラン、バー、ライブハウスが多く並び、ジャズを聞きながら食事をし、路に流れるジャズを聞き、気に入ったら店に入り・・・夜のフレンチ・クオーターはとても魅力的です。昼間はお土産物屋や、200年近い歴史をもつフレンチ・マーケットでの買い物も楽しいもの。クレオール、ケイジャン料理に使うスパイスを沢山買ったので、これらの料理を、私流に作ってみようと思っています。

2005/01/04-from etsuko
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