■ セイラムの風〜From Etsuko #015--ドゥリーム・キャッチャー(Dream Catcher)
セイラムの風 目次
1621年、プリマス(ピルグリムス・ファーザーズの最初の入植地)で、植民開拓者によって最初の収穫祭が行われ、開拓者とネイティーヴ・アメリカン(インディアン)が喜びを分かち合ったのが、先日11月25日(木)に終わったばかりの感謝祭(サンクスギヴィング)の始まりと言われています。
これでも分かるとおり、アメリカはネイティーヴ・アメリカンの影響を、今でも色濃く残しているのを改めて感じます。身近な所では、地名など、ネイティーヴの呼び名をそのまま使っているのが多くあります。例えば、私の学校の名前、チェメケタ(Chemeketa)、ヨセミテ(Yosemite)国立公園、など日本語と同じように子音+母音の組み合わせです。

ふとしたきっかけでその存在を知ったドゥリーム・キャッチャー(Dream Catcher)は、ネイティーヴ・アメリカンの伝統的なお守りですが、それについては、いくつかの異なった言い伝えがあります。

ドゥリーム・キャッチャー
ドゥリーム・キャッチャー
その一つは、この様に言い伝えられています。
ドゥリーム・キャッチャーは、枕元にこれを吊るしている人の夢を、全部捕まえます。悪い夢は、次の日、朝日にさらされて壊されてしまうまで、網目から放しません。良い夢は、しばらく網目に留めておき、夢を見た人の人生に現れる、いいタイミングを見つけて実現させます。

また別の伝説によると、夢は、良い夢、悪い夢、共にその行く先を探して、一日中、昼も夜も空中を漂っています。ドゥリーム・キャッチャーの下に寝ていると、悪い夢は網の中に捉えられ、一日の最初の光と共に消滅します。良い夢は、網の中心の穴から入り、網の道を通って、石や飾りの良いエネルギーをキャッチして、飾りの羽の中を漂い降り、夢を見ている人の頭の中へと滑り込んで行きます。人々はドゥリーム・キャッチャーの下で寝ていると、悪い夢を見る心配をしないですむことでしょう。

また、別の伝説ではこんな風に言っています。
遠い昔、地球がまだ若かった頃、高い山に霊感を持ったロコタ(Lakota)族の長老がいた。彼はヴィジョンを持っていて、それによると、偉大で、英知の指導者であるイクトミ(Ikutomi)と呼ばれる霊魂がいて、それは蜘蛛の姿をしていた。霊魂イクトミは長老だけが分る神聖な言葉で、彼に話しかけながら、長老が持っていた羽、馬の毛、ビーズで飾られた柳の輪を受け取って、蜘蛛の糸をかけ始めた。

イクトミは人生の輪廻について長老に話した。「我々は赤ん坊として人生を始め、子供になり、大人になり、そして、老人になると赤ん坊のように世話を受けなければならない。と言う完全な輪廻である。」
イクトミは輪に網をかけ続けながら言った。「しかし、人生には様々な多くの霊力が現れる。良い霊力、悪い霊力。もし、あなたが良い霊力に耳を傾けるならば、それはあなたを正しい道へと導くでしょう。しかし、もし悪い霊力を聞き入れたならば、それはあなたを傷つけ、そして、あなたを悪い方向に向けるでしょう。」彼は続けた。「自然の調和、そして偉大な精霊--それら精霊の全ての教え--によって、多くの霊の力が人を助けたり、違った方向に向かわせたりします。」

話している間ずっと、イクトミは輪の外側からスタートして、中央に向かって蜘蛛の糸を編み続けた。イクトミは話し終わった時、ラコタの長老に出来上がった蜘蛛の巣を渡して、そして言った。
「見なさい。この網は完全な円です。しかし中央には穴があります。」彼は言った。「あなた自身、そして人々がその目的を達成するため、また、人々の目的、夢、未来のための良い機会を作るためにこの網を使いなさい。もし、あなた方が偉大な霊を信じるなら、この網があなた方の良いアイデアを捕えるでしょう。そして、悪いものは穴を通り抜けて出て行くでしょう。」

ラコタの長老は人々に彼のヴィジョンを伝えた。そして今、スー族(Sioux Indians)は、彼らの人生の蜘蛛の巣として、ドゥリーム・キャッチャーを使っている。それは人々のベッドの上、また、夢や未来を話し合う家の中に吊り下げられている。彼らの夢の良いものは人生の網に支えられ、人生を発展させる。けれども悪い夢は、網の中央の穴を通り抜けて出て行き永遠に戻らない。
人々は信じる。「ドゥリーム・キャッチャーは人々の運命を決める」と。

ドゥリーム・キャッチャー
これらは、私達がベッド・サイドに掛けているのと、ほぼ同じ種類のものですが、羽、ビーズ、糸、デザイン、色などそれぞれ違いがあります。直径が8cm程度の大きさです。
このような伝説もあります。
蜘蛛は自分のスペースの中に網を静かにかけている。それはノコミスおばあさん(Nokomis)の寝ている場所の近くに。いつもノコミスおばあさんは、そばで静かに糸をかけている蜘蛛の仕事を見ていた。
ある日、孫息子が入ってきたことに彼女が気がついたとき、蜘蛛をみながら、少年は大きな声で、「ノコミスおばあさん、危ない!」と叫び、靴を持ち、それを打ち付け蜘蛛を殺そうとした。「だめよ、イコミス(Icomis)、蜘蛛を傷つけないで。」と老女は小声で言った。「ノコミスあばあさん、なぜ蜘蛛を守るの。」小さな少年はたずねた。老女は微笑むだけで、何も答えなかった。

少年が去った時、蜘蛛は老女の所に行き、命を守ってくれたことにお礼をいった。蜘蛛は老女に言った。「いつもあなたは私が網をかけているのを見てくれていました。あなたは私の仕事を褒めてくれました。私の命が安全にもどったので、私はあなたに贈り物をしましょう。」彼はその素晴らしい蜘蛛の微笑みでほほえんで、そして、糸をかけながら言った。

まもなく、静かに動いている不思議な銀の網の上に、月が美しく輝いた。「見て!私がどのように糸をかけたか。」蜘蛛は言った。「見ると分るでしょ。網の糸が悪い夢を捕らえます。良い夢だけは中央の小さな穴を通り抜けて、あなたの所へいくでしょう。これが私の贈り物です。使いなさい。蜘蛛の網は良い夢だけを覚えています。悪い夢は網の中にどうしようもなく巻き込まれ決して出ることはないでしょう。」

ドゥリーム・キャッチャー
これらは、同じような羽、ビーズを使っていますが、デザイン、色、大きさなどが違っています。小さいのは、8cm、大きいので、12cm程度です
ドゥリーム・キャッチャーには大きさ、色、飾り、デザインがいろいろあります。大きい物では、網の直径が1メートル以上のもあります。外側のフープの部分は色つきのバック・スキンの紐で巻いてあります。写真にある直径10センチ程度のものが、最もポピュラーなようです。私たちもこの大きさのものを、それぞれ枕元の壁に飾って、いい夢を育て、悪い夢を壊してもらって、安眠しています。以前はネイティーヴ・アメリカン以外の目に触れることはあまりなかったのですが、最近、テレビ・ドラマなどで使われたりして、かなり知られるようになったようです。全て、ネイティーヴ・アメリカンの手作りで、製作者もそれほど多くいるのではなく、作られる数も限られているようです。そのこともあってか、観光地のお土産屋さんなどでは、あまり見かけないように思います。私たちは、セイラムの土曜市(Saturday Market:近隣の農家などが自分の生産物を直売しています)で、ネイティーヴ・アメリカンからこれを求めました。

終わりに、ドゥリーム・キャッチャにちなんだ、ネイティーヴ・アメリカンの子守唄を贈ります。

ビヨンド(Beyond)

眠りなさい 愛し子よ こわがらないで
あなたのベッドの上には ドゥリーム・キャッチャーが 吊るしてあります

聞きなさい 静かに 知っています あなたは聞くことができると
向こうの音を あなたの耳の近くに

愛は生き生きと あなたの中にいます
あなたの悩みの向こうには 偽りのない 素晴らしい夢があります

皆さん、やすらかに、いい夢を見て、お休みください。

2004/11/29-from etsuko
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