■ セイラムの風〜From Etsuko #004--アムトラック(Amtrak)に乗って
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今回は、乗り物シリーズの第二回目、アムトラック(Amtrak)です。

セイラム駅に入ってくる南行きアムトラック。 2階建てのものもあります。
セイラム駅に入ってくる南行きアムトラック。2階建てのものもあります。
アパートから、500メートルほど離れた所をアムトラック(列車)の線路が通っています。一日中、汽笛が聞こえ, とくに湿っぽい日には、よく聞こえます。 最初はなぜこんなに頻繁に鳴らすのかと思ったのですが、これがアメリカなのだと分かりました。アメリカは車社会。 踏み切りで、日本のように、車はいったん停車せず、そのまま通過します。 車が優先ですから、列車は「これから踏み切りにかかりますから、よろしくお願いしまーす」と、街に近づくと懸命に合図をしているのです。でも、なんとなく汽笛を鳴らすのを、運転手が楽しんでいて、それぞれ違った音、メロディーを出しているように聞こえます。列車、とくに貨物列車は長く、100輌程度引いているのもあり、出くわすと大変、通過待ち5分以上となってしまいます。

セイラム駅の夜景。プラットフォーム側より。こんなに小さくて可愛い。
セイラム駅の夜景。プラットフォーム側より。こんなに小さくて可愛い。
アムトラック「Amtrak」とは通称で、「AMERICA」と「TRACK」の合成語との事。正式名称:National Railroad Passenger Corporation、日本語訳:全米鉄道旅客輸送公社。
トラックという言葉から、車を連想する人が多いようですが、全米規模で走っている列車です。全米を走るといっても、アムトラックが持っている路線は北東の一部に過ぎず、大部分は各地方鉄道会社の路線を借りているのです。線路を賃借りして運行しているわけですから、自由がきかず、時間に遅れる事もしばしばとなります。 広いアメリカを移動するには効率からいえば飛行機が一番。広大な大地を感じ、安くアメリカを旅行するならバス。そして何より自由に動くなら車です。たとえば、テキサス州のフェニックスから何千キロも離れたポートランドに来るにも、選択肢の一番目は車を考える人が多いのがアメリカです。
そんななかで、なぜアムトラックに乗る人がいるのでしょうか。そうです、アムトラックはと言えば、単なる旅行手段だけに使うのではなく、古き良き時代を感じながら、のんびりと情緒を楽しむ。そんな乗り物なのです。(この部分は、あるWebsiteを参考に書きました。感謝。)

そんなこんなで、列車の時間は、まったく当てになりません。先日も、予約をするためセーラム駅に行くと、列車の時刻でもないのにに多くの人がいました。運行時間が45分も遅れていて、やっと列車が入って来たところでしたが、誰も文句を言うわけでもなく、焦った様子もなく、自然な感じでした。
乗客の乗り降りは、もちろん、乗客の荷物の積み下ろし(リムジン・バスと同じように車体の横に荷物入れがあります)が終わるまで、発車を待っています。
発車時間ですから早くやって下さい、などとは言いません。正確に時間を守る日本の列車とは違いますね。

ポートランド駅。
ポートランド駅。正式名称は "Union Station"ですが、"Amtrak Station"の方が通りがいいみたいです。レンガの趣のあるすてきな建物です。
先日、ポートランドに行った折には、車では行かず、行きはグレイファウンド(バス)、帰りはアムトラック(列車)でした。往復ともアムトラックの積もりだったのですが、丁度よい時間がなかったので。結果的には両方を楽しめて良かったです。発車予定時間の15分くらい前になったとき案内放送があり、広い待合ロビーの線路側のデスク(改札口)に集まりました。
駅員さんが切符を確かめ半券を切り取り、代わりに5cm×15cm程度の紙切れに、サインペンで、「S」と「2」と書き込んで、渡してくれました。裏には、「見れるように表示しなさい」と書いてありましたが、何かよく分からないまま受け取りました。列車は予約されているのですが、指定席ではなく、好きな所に席を取り、先ほど受け取った紙切れを頭上の荷物棚にあるスロットに差込み、それがここは私の席です、との表示になっているのでした。 乗客が降りる駅が近付くと、車掌さんが表示内容を見て、抜き取っていきます。乗り越しの心配なもく、とてもいいシステムだと思いました。
紙切れの「S」は「Salem」を、「2」は「二人」を表していたのでしょう。でも、やはり時間が問題で、私たちの列車も、「On Time」だとポートランドの駅員さんは言っていましたが、15分遅れの出発、セイラムまでの1時間の間にさらに15分遅れて、合わせて30分の遅れをだしながら、焦るでもなく、併走する一般道の車にもすいすい抜かれながら、ゆったりと走りました。贅沢な時間を感じながら。

ポートランド駅に入って来た私たちの乗った列車。プラットフォームが地面と同じ高さなので、踏み台が置いてあるのに、ご注目。
ポートランド駅に入って来た私たちの乗った列車。プラットフォームが地面と同じ高さなので、踏み台が置いてあるのに、ご注目。
長距離旅行手段として、代表的なのは、このアムトラックの他に、飛行機、バス(著名なのが日本でも知られた、グレイファウンド)がありますが、客層がかなり違うように感じます。ポートランドに行った折に乗ったのは、カリフォルニアの南端サンディエゴから、イチロウのシアトルまで行く超長距離のグレイファウンドだったのですが、乗客の多くは、中南米系の人たちでした。家財道具と毛布を抱えてバスを乗り継ぎ、乗り継ぎの長時間旅行で、生活の匂いが車内いっぱいで、懐かしいような、一抹のわびしさのあるような、感じでした。 アムトラックはと言えば、ゆとりを感じさせる車内と乗客が一般的で、したがって少々の時間遅れなど、気にしない、と、なるのでしょう。飛行機はバスとアムトラックの中間でしょうか。
私たちの乗った列車は、中距離のものでしたが、食堂車が付いていていて、丁寧な案内、予約受付の車内放送がありました。今回は残念ながら行きませんでしたが。長距離列車にも一度は乗ってみたいですね。アメリカ大陸を横断してポートランドからシカゴまで約48時間、どんな旅が待っていることでしょう。自分の時間と予定に合わせ、いろいろな乗り物の旅を楽しみたいものです。

2003/10/23-from etsuko
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