被験者に対する教示 課題 いずれの「IF−THEN法」でも各課題は簡単な2選択肢の課題で、Tを選 ぶかUを選ぶかを被験者に選択させるだけのものである。1課題は10秒〜15秒 程度で反応させ、原則的には、被験者の自由なペースで反応を記入させてよい。 しかし、「応用型」の場合は課題数が多いので、集団検査の場合、1対象ごと に合図して実施した方が検査の雰囲気が散漫にならなくてよいと思われるが これは本検査に関しては絶対必要条件というわけではない。被験者には教示用 紙が用意されているので、条件の統制と時間効率のために反応を記入する課題 用紙に教示用紙を添付して配布することが望ましいが、単に教示用紙を配布す るだけでなく、検査の内容、実施手順、反応の記入方式に関しては口頭でも十 分に説明する必要がある。 教示の形態 被験者に対して与えるべき一般的注意事項は大要次の通りである。 @本検査は各個人の一般的反応傾向をみるのが目的の心理検査であること。 A標準型:課題は32課題あること。 応用型:課題は8対象各16課題であること。 B各課題とも2選択肢課題でIかUどちらかを選択すればよい簡単な課題で あること。 C本検査は一般的反応傾向をみるもので能力を調べるわけではないので、各課 題に正答や誤答があるわけではないこと。 Dどのように反応したらよいのかは自分で考えること。 E相互選択の反応事態は抽象的な場面であって、そのような事態におかれたと 仮定して、あるいは、想像して反応してほしいこと。 F各課題ともあまり深く考える必要はないが、でたらめに反応するとでたらめ であるという分析結果になるのでまじめに考えながらやってほしいこと。 G標準型:原則として1課題10−15秒程度で自由なペースでやってよいこと。 応用型:実施者の合図で1対象ずつ実施するが、1対象に対する16課題は自 由なペースでやってよいこと。 H飛ばさずに順序どおりやること。 I標準型:全体を10〜15分程度で終了させるようにすること。 応用型:全体を30〜40分程度で終了させるようにすること。 I隣の人とは順序が異なる課題用紙になっているはずなので、隣の人の反応を 見たり、話しあったりしないこと。必ず自分の判断で選択すること。 I次項に述べる反応の記入方式の具体的説明 反応方式 以下の内容を口頭で説明する。必要に応じて黒板などを用いてもよい。 @標準型:各課題は2x2型の四角のマス目に2つの数値が入っていること。 応用型:各課題は2行あって各行に2つの数値が並んでいること。 Aどのマス目も左側の数値は自分の利得で右側の数値は相手の利得であること。 Bこの数値は“お金"と考えてよく、たとえば1というのは1万円で5という のは5万円のことであると思ってよいこと。 C標準型:自分も相手も、共に選択肢が2つあり、自分の選択肢はTとUで示 されていて相手の選択肢はAとBで示されていること。 D標準型:マス目の数値は、2人がそれぞれその選択肢を選んだときの利得で あること。 E標準型:この課題が与えられたとき、実は相手のやり方はわかっていて、そ の相手のやり方が四角の下に記号で書いてあること。 F標準型:T−A、U−Aは、あなたがTを選んでもUを選んでも、相手は必ず Aを選ぶことを示していること。また、I−B、U−Bは、あなたがIを選ん でもUを選んでも、相手は必ずBを選ぶことを示していること。 Gここで判断を要求されていることは、以上の条件下で、あなたはTを選ぶか Uを選ぶかを決めることで、決めた結果を用紙に記入すること。 H標準型:決めた選択肢を相手のやり方が書いてある記号の右側にあるIとU のどちらかを丸で囲んで示すこと。 応用型:選択肢を決めたらその欄を丸で囲んで示すこと。 I相手がだれであるか、どんな人物になる可能性があるかを常に十分に考える こと。 I標準型[相手を特定しない条件のとき]:相手は32課題全部違う不特定の相 手でだれであるかまったくわからない事態であることを想定して反応すること。 標準型[相手を特定する条件のとき]:相手は指定したその特定の1人の人 物であることを想定して反応すること。 応用型:対象は8種あるので、対象ごとにその特定の1人の人物を想定して 反応すること。 I標準型:よく考えて飛ばさずに必ずどちらかに決めて記入しながら進むこと。 けっして戻らないこと。 応用型:対象ごとに合図をするので、それに従って反応していくこと。 I最初に課題用紙に氏名・性別、および、特に差し支えがなければ年齢を書かせる こと。 I検査結果は個人名を出して公表することはないこと。 Iやり方に関して質問があれば、開始前にすること。 一般的注意 実施担当者が被験者からの質問に対して言ってはならないことなどの一般的 注意事項をあげれば次のようになる。 @本検査は価値規準に関する検査であるから、判断の規準に関する質問、たと えぱ、どういう反応がよいのか、自分の点数が高くなる方がよいのかとかい うような質問に対しては、「自分で考えるように」というだけでヒントも与 えないこと。 A本来は、この選択事態は抽象的な表現であるので、事態に関する質問に対し ては、具体的な場面を示したりはしないこと。必要に応じて、被験者に「自 分で具体的に想像して判断するように」などといって自分で判断することを 要請すること。 B本来は、利得は抽象的な価値に対する数値であるので、利得の意味に関する 質問に対しては、たとえば、「わかりにくければ“お金”と思って反応して ほしい」などといって判断することを要請すること。この場合、単位は、い ちおう、1万円単位で統一すること。 Cなお、宗教的信念で競争場面には参加しない被験者がいることがあるが、こ の場合は検査を強要しないこと。 |