project7(絶体絶命の大手術)
男の異変は就職した年に始まっていた。毎年9月になると、きりきりと胃が痛む。
当時、体重100kgをゆうに越えていた男には容赦ない罵声が浴びせられた。
「食べ過ぎじゃ」、「ちーたー痩せー」
事実、そのアドバイスは的を射たような気もする。
そして就職して7年目の春、男は結婚もして、3つ目の職場に転勤していた。
転勤先は男に様々なカルチャーショックを与えた。男の体調は思わしくなかった。
そして、運命の平成6年の秋を迎えた。
男は、いつもの胃痛で倒れた。近所の病院では、例によって「食べ過ぎ」と診断された。
男は、胃薬をもらって、飲んで寝たが、その夜、男の背中に激痛が走った。
男の妻は、男を車にのせて、救急病院へと走った。
「今考えると、これが奇跡への第一歩であった」
男は、応急処置をうけ、やはり「食べ過ぎ」という診断で痛み止めの注射をしてもらい家に帰された。
そして男は翌日、その病院の院長に診察を受けた。
これが運命の出逢いになった
院長は男を見ると一目で「胆石」の可能性が高いことを伝えた。
こうなったら話は早い。男は、胆石の治療で有名な病院で診察を受けた。
そして、おとこは「胆石症」で手術が必要であると告げられた。
胆石の手術は、虫垂炎なみの簡単な手術で、1時間程度で終わる物らしい。
また「ラパコレ」という内視鏡を用いた手術であるので、腹に小さな穴をあけるだけですむ。
「手術は1時間、入院は1週間」と言われ、男は安堵した。
主治医は男に言った。「万が一、胆嚢が内臓と癒着していたら大手術になります」
男は特に気にせず手術台に向かった。ところが
男は絶体絶命のピンチになっていた。
男の胆嚢はきっちり内臓と癒着しており。あけび大に腫れあがっていた。
男の病気は「胆石症」から「慢性胆嚢炎」に格上げになった。
男の手術は、急遽、開腹手術に変更になり、手術は5時間にもおよんだ
そして奇跡がおこった
男の身体は無事、大手術に耐え、男は無事生還した。
男が目をさましたとき、男の家族と男の妻の家族が、まわりを囲んでいた。
男は「何をおおげさに」と思っていたが、事情がわかるうちに顔が青ざめた。
担当医は、「手術があと1ヶ月遅かったら、死んでいたでしょう」と言った。
男は、冷や汗を流した。
そして、手術をしてくださった医師に感謝したと同時に、胆石を見抜いてくれた医師に感謝した。
「もし、あの夜、救急病院に行かなければ、はたしてどうなったであろう」
人は数々の偶然や、見えない力によって生かされている
男は少なくともそう思った。
その数年後、男の家の近所で、男性が31才の若さでなくなられた。
死因は「胆石症」である。男はその話を聞いて、他人事とは思えなかった。
もう1年早ければ、助かっただろう
男の腹は、31針縫われ、結局職場復帰まで1週間ならぬ5週間もかかった。
職場に復帰したとき、男は何かが吹っ切れた。
たぶん、もやもやは胆石とともに拠出されたのであろう。
「男の中で何かが変わった」
その後の物語です。
男は、その後、順調に回復した。現在にも腹に大きな傷があるが、それは仕方がない。
前回の「筋ジストロフィー」といい今回の「胆石症」といい、病を克服するたびに、
生きる意味が少しずつわかるようになった気がする。
最後に
原因不明の胃痛に悩まされている人、病院へ行きましょう!!