project3(かけっこで一等賞をとれ)


肥満体の男にとって、体育の授業ほど嫌な物はない。男は、跳び箱も跳べず、鉄棒では逆上がりもできず、走るのはもちろん苦手であった。小学校4年生のときは運動会のクラス対抗リレーのアンカーとして奇跡の逆転勝ちの立て役者?となった。つまりリードを守れずに抜かれたのである。男の父親は、こんな息子に檄をとばし、毎朝ランニングを強いた。しかし男の足はいっこうに速くならなかった。それもそのはず、途中で手を抜いて近道をしていたのである。また巻藁で正拳突きの練習をさせたが、男は痛いので適当にやっていたので全く上達しなかった。そのくせ間食は人三倍食べた。
「増えない練習量」
「減らない食事量」
「絶体絶命のピンチ」

男のかけっこは一生遅いままと誰もが思った。しかし・・・。
「意外な救世主」
「早すぎた成長期」
男は小学校の6年生で身長が急激に伸びて、なんと身長が170cmを越えた。こうなると他の小学生とコンパスが違う。
「そして奇跡がおこった」
なんと50m走が7秒7でクラスで一番になってしまった。男は小学校を代表して、リレーの選手に選ばれた。100m走では一等賞でゴールした。
「鈍足の肥満体」と陰口をたたかれた男の晴れ舞台であった。
その後の物語です。男が足が速かったのは中学3年までで、中3の100m走の13秒9のタイムが最高記録である。
高校生になり皆の身長が170cmを越えた頃、男はすっかりもとの鈍足に戻ってしまった。
100m走が11秒台の同級生が増える中、男のタイムは伸びず、男は2度とリレーの選手に選ばれることはなかった。
男がかけっこで一等賞になったのは後にも先にも小学校6年生の一回だけである。


project4(好きな女性に告白せよ)

中学生にもなれば、男にも人並みに思春期はやってくる。小学校のときは、時にはうざったかった女性の存在が別のものになる。
男は小学校のときも好きな女性がいたが、それはまだ恋以前のものにすぎなかった。
男が恋をしたのは中学校2年生の時である。
相手は、たまたま同じクラスになった、一緒にクラス委員をしていた、しっかりとした勝ち気な女の子である。
その女の子は、何事も自分が前に出て引っ張るタイプで、男はいつしか、その姿に惹かれていった。
そんな中、夏に、彼女から、暑中見舞いがきた。
「わき上がる感動」
「つのる恋心」
男はうれしくなって、返事を2通も書いた。
中3になっても男は彼女と同じクラスになった。確率1/9である。
男は幸せであった。毎日彼女に会うのが楽しみであった。
しかし卒業するとき志望校こそ同じであったが、高校が別々になる危険性があった。もう会えないかもしれない。
「絶体絶命のピンチが男を襲う」
男はこれで会えなくなったら、一生後悔すると思い、女性に告白した。
告白の仕方は遠回しで、数字の1番から4番までに4人の女性の名前を書いた紙を彼女に渡した。
そして「僕の好きな人の番号は、素数奇数です。」と言った。
男にとっては精一杯の告白だった。
さて彼女の番号は何番だったかわかりますね。
男は彼女の反応を待った。
「そして奇跡は・・・・・・・・・おこらなかった」
彼女とはそれっきりだった。
その後、彼女とは、高校はおろか大学まで一緒になり、現在は同業者だったりするが、もはやどうでも良かった。
その後の物語です。風の噂では彼女も結婚したらしい。私の女性の好みも変わったので特にどうということはない。
でも、あのときは意志を伝えておいて良かったと思う。
男の中学時代の唯一の甘酸っぱい思い出であった。
「プロジェクトはいつも成功するとは限らない」