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【行動経済学に学ぶビジネス戦略】

V.経営意思決定

1.現在バイアス

 現在バイアスとは、将来得られるより大きな利得よりも、目先で得られるより小さな利得を不合理に高く評価してしまう心理的傾向のことです。

 経営者が現在バイアスに囚われると、目先の数値目標の達成ばかりに追われ、研究開発や人材育成といった「将来の持続的成長に必要な投資」を後回しにしがちになります。結果として、会社の長期的発展は覚束なくなります。

 これを防ぐには、目先の利益を優先したくなる心理傾向を自覚し、数年先の持続可能な成長と競争力構築に投資し続ける「長期的視点」に基づいた意思決定プロセスをあらかじめ組織に組み込むことが不可欠です。

 

2.プレコミットメント

 プレコミットメントとは、将来の自分の行動をあらかじめ決定宣言することで、目先の誘惑を断ち切り、初志貫徹できるようにする仕組みや行動のことです。

 経営者が将来のビジョン目標を社内外に向けて明確に宣言(コミット)することで、途中で目標を放棄したり、先延ばししたりすることが防げます。

 経営者自らが不退転の決意を示し、実行せざるを得ない状況を作ることで、全社的な行動力を強力に促す手立てとなります。

 

3.同調効果

 同調効果とは、周囲の意見や行動に自分の判断や行動を合わせてしまう心理的傾向のことです。

 経営においても、同調効果を社内エンゲージメントの向上に活かすことが可能です。企業理念ビジョンを浸透させ、社員の大多数が理念に沿って生き生きと働く文化を構築すると、他の社員もそのポジティブな姿勢に引き込まれるようになります。

 全社員で理念を深く共有することで、会社に対する誇りと強い連帯感が生まれ、組織が一丸となって同じ目標へと突き進む推進力を生み出せます。

 

4.サンクコスト効果

 サンクコスト効果とは、すでに回収不能となっている過去コストに執着するあまり、今後の損失が明らかであっても投資や継続をやめられなくなるような合理的な行動をゆがめてしまう心理的傾向のことです。

 「これまで多額の資金と時間を投じたから」という理由で不採算事業から撤退できない状態は、典型的なサンクコストの罠です。過去の投資に執着して回収を図ろうとすると、赤字が膨らみ更なる損失を引き起こします。

 意思決定においては「過去のコスト」を完全に切り離し、「これから追加で投じるコストと今後のリターン」のみを冷静に比較して撤退基準を明確にすることが重要になります。

 

5.即決型思考と熟考型思考

 人間が持つ2つの思考モードのことです。即決型思考は無意識・直感的で迅速な判断を、熟考型思考は意識的・論理的で慎重な判断を指します。

 経営意思決定においては、局面に応じた思考モードの使い分けが成功の鍵を握ります。

 大規模な設備投資や新事業への参入など、会社の命運を左右する「大きな決断」においては、直感に頼らず熟考型思考で論理的かつ慎重に検討すべきです。

 一方で、現場の日々のオペレーションや迅速な対応が求められる局面では、これまでの経験則に基づく即決型思考で決断していくことで、経営のスピード柔軟性を発揮することができます。

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