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「イノベーションと企業家精神」より、
"イノベーションの原理"
1.イノベーションの原理と条件
イノベーションの方法として提示し論ずるに値するものは、目的意識、体系、分析によるイノベーションだけである。目的意識をもち、体系を基礎として、かつそれを完全に身につけて、初めてイノベーションは成功する。
それでは、イノベーションの原理とは何か。イノベーションに必要な「なすべきこと」は何か。
第一に、イノベーションを行うには機会を分析することから始めなければならない。イノベーションのための七つの機会を徹底的に分析しなければならない。
第二に、イノベーションとは、理論的な分析であるとともに知覚的な認識である。イノベーションを行うにあたっては、外に出て、見て、問い、聞かなければならない。顧客や利用者を見て、彼らの期待、価値、ニーズを知覚をもって知る。
第三に、イノベーションに成功するには、焦点を絞り単純なものにしなければならない。一つのことに集中しなければならない。
第四に、イノベーションに成功するには、小さくスタートしなければならない。大がかりであってはならない。具体的なことだけに絞らなければならない。
第五に、イノベーションに成功するには、最初からトップの座を狙わなければならない。具体的な戦略としては、産業や市場において支配的な地位をねらうものから、プロセスや市場において小さなニッチをねらうものまで、いろいろありうる。しかし、トップの座を担うものでなければ、競争相手に機会を与えるだけに終わる。
2.イノベーションの三つの「べからず」
イノベーションには三つのやってはならないことがある。
第一に、凝りすぎてはならない。イノベーションの成果は普通の人間が利用できるものでなければならない。
第二に、多角化してはならない。散漫になってはならない。一度に多くのことを行おうとしてはならない。イノベーションには統一、すなわち共通の核となるものが必要である。多様化や分散はこの統一を妨げる。
第三に、イノベーションを未来のために行ってはならない。現在のために行わなければならない。現時点で直ちに利用できなければ、アイデアにとどまる。
3.イノベーションを成功させる三つの条件
イノベーションには三つの条件がある。
第一に、イノベーションは集中でなければならない。イノベーションとは意識的かつ集中的な仕事である。勤勉さと持続性、それに献身を必要とする。これらがなければいかなる知識も創造性も才能も無駄となる。
第二に、イノベーションは強みを基盤としなければならない。イノベーションにおいては、知識と能力の果たす役割が大きくしかもリスクを伴うからである。
第三に、イノベーションはつまるところ経済や社会を変えなければならない。消費行動、働き方、生産方法に変化をもたらさなければならない。
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