「イノベーションと企業家精神」より、
"新しい知識を活用する(第七の機会)"
1.知識によるイノベーションのリードタイム
発明発見という新しい知識によるイノベーションは、いわば企業家精神のスーパースターであり、たちまち有名になり金にもなる。これが一般にイノベーションといわれているものである。
イノベーションのもとになる知識は、必ずしも技術的なものである必要はない。社会的な知識も同じかそれ以上に大きな影響をもたらす。
知識によるイノベーションは、その基本的な性格、すなわち実を結ぶまでのリードタイム(所要時間)の長さ、失敗の確率、不確実性、附随する問題などが他のイノベーションと大きく異なり、気まぐれでマネジメントが難しい。
知識によるイノベーションの第一の特徴は、リードタイムが長いことである。新しい知識が出現してから技術として応用できるようになるには長いリードタイムを必要とする。市場において製品やサービスとするにはさらに長いリードタイムを必要とする。
2.知識の結合
知識によるイノベーションの第二の特徴は、科学や技術以外の知識を含め、いくつかの異なる知識の結合によって行われることである。
知識によるイノベーションはそのために必要な知識のすべてが出そろうまでは行われない。
3.知識によるイノベーションの条件
(1) 分析の必要性
知識によるイノベーションは、三つの固有の条件を伴う。しかもそれは、他のいかなるイノベーションの条件とも異なる。
第一に、知識によるイノベーションに成功するには、知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化などすべての要因を分析する必要がある。
企業家たる者は、その分析によっていかなる要因が欠落しているかを明らかにしなければならない。分析を行わなければ、欠落している知識が何かはわからない
(2) 戦略の必要性
第二に、知識によるイノベーションを成功させるには、戦略をもつ必要がある。
知識によるイノベーションには三つの戦略しかない。
@ システム全体を自ら開発し、それをすべて手に入れる戦略
A システム全体ではなく、市場だけを確保しようとする戦略
B 戦略的に重要な能力に力を集中し、重点を占拠する戦略
(3) マネジメントの必要性
第三に、知識によるイノベーション、特に科学や技術によるイノベーションに成功するには、マネジメントを学び実践する必要がある。
リスクが大きいだけに、マネジメントと財務についての先見性をもち、市場中心、市場志向であることが大きな意味をもつ。
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