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【ビジネスリーダーのための菜根譚講座 その十五】

1.生きとし生けるものへの慈しみ

『「鼠(ねずみ)のために常に飯を留め、蛾(が)を憐れみて燈(ともしび)をともさず。」古人のこれらの念頭は、これ吾人の一点の生々の機なり。これなければすなわちいわゆる、土木の形骸のみ。』(前集一七三)

 

(訳)「ネズミが飢えないよう常に飯つぶを残してやり、蛾が飛び込んで死なないよう明かりを灯さないでおく。」古人の歌にもあるが、このような慈しみの心こそ、生きとし生けるものを育む働きを生み出すのである。これがなければ、魂のない土や木でできた人形と同じである。

 

 自然界は人知を超えた叡知により、無数の生きとし生けるものが織りなす生態系を創造し、その恩恵なくして人類も生存することはできません。だから、共に生きるものへの慈しみ、弱きものへの思いやりを持つことが、我々が、いつの時代にも豊かに繁栄するために大切となるでしょう。

 しかし、現代社会では、多くの人たちが、ビジネスにおいて利益を優先したり、ビジネスを弱肉強食の世界と考えたりしているように見受けられます。

 目先の利益だけを求めたり、弱者を犠牲にしたりすれば、ビジネスの裾野も広がらず、周囲の信用や協力も得ることができず、永続的な繁栄は困難となるのではないでしょうか。

 

2.要職者の心得

『士君子、権門要路(けんもんようろ)におれば、操履(そうり)は厳明なるを要し、心気は和易(わい)なるを要す。少しもしたがいて暒羶(せいせん)の党に近づくなかれ。また、過激にして、蜂蠆(ほうたい)の毒を犯すなかれ。』(前集一七七)

 

(訳)君子たる者、要職に就き権限を与えられたならば、言動を厳しく公明正大なものとするとともに、心を穏やか優しいものとすべきである。うっかり、腹黒い輩に近づいてはならず、また、つい過激になって、ハチやサソリのような小悪党の毒に刺されてはならない。

 

 要職者に与えられる権限は、組織のミッションを遂行するための手段にしか過ぎず、その地位権限には責任が伴います。

 手段である地位や権限を目的と錯覚すれば、そこに利己的な執着が生まれ、権限を権力と勘違いして使い方を誤ってしまいます。そうなれば、部下の信頼も失い、権限が機能しなくなります。

 そうならないよう、権限のある要職者には、自らを厳しく律し公明正大な行動が求められるとともに、部下には穏やか親切に接して組織全体の調和を図るよう、リーダーシップを発揮することが重要になるでしょう。

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