business forum kobe 21
トップページ >経営  >【韓非子に学ぶ組織運営術 その七】

【韓非子に学ぶ組織運営術 その七】

1.説得の難しさ

『およそ説(ぜい)の難(かた)きは、説(と)く所の心を知りて、吾が説をもってこれに当つべきにあり。説く所、名高をなすに出づる者なり、しかるにこれに説くに厚利をもってすれば、すなわち下節(かせつ)にして卑賤(ひせん)に遇(ぐう)すとみなして、必ず棄てて遠ざけん。説く所、厚利に出づる者なり、しかるにこれに説くに名高をもってすれば、すなわち無心にして事情に遠しとみなして、必ず収めざらん。』

 

(訳) 説得することの難しさは、相手を読み、こちらの主張をそれに合わせることができるかというところにある。名声を欲しがっている相手に、こうすれば大きな利益があがるなどと説いたら、下品なやつに自分のことを卑しい奴だと思われていると考え、見捨てて遠ざけるだろう。反対に、大きな利益を得たいと思っている相手に、こうすれば名声が得られるなどと説いたら、考えが足りなく、現実に疎い奴だと思い、採用しないだろう。

 

 組織において人々を一つの方向に向けるためには、人を説得しなければならない状況が多々生じます。説得することの難しさは、その内容を理解し巧みに弁舌をふるうことにあるのではなく、相手心情を察して、その気持ちに逆らうことなく、こちらの主張を聞き入れてもらうことにあるのでしょう。

 相手の欲しているものをよく理解した上で、こちらの主張が相手の願望と合致できることを理解してもらう努力が必要になるでしょう。利益が動機の相手に名誉で説得はできませんし、名誉が動機の相手に利益で説得はできません。相手を理解してから相手から理解される。この順序を間違えれば、人を説得することはできないのでしょう。

 

2.説得する上で

『およそ説の務めは、説く所の矜(ほこ)る所を飾りて、その恥ずる所を滅するを知るにあり。・・・大意払悟(ふつご)する所なく、辞言繋縻(じげんけいび)する所なく、しかる後に智弁を極め馳せよ。それ道(よ)りて親近して疑われず、しかして辞を尽くすを得る所なり。』

 

(訳) 説得する上で心がけるべきことは、相手が誇りとしている事は褒め称え、相手がずかしいと思っている事は触れずに忘れさせることである。・・・相手の意向に逆らわず、言葉使いも相手の気持ちに逆らわず、その上で知恵と弁舌をぞんぶんにふるうのだ。これが君主と親しい関係になり、疑われることなく、言いたいことを存分に言うための方法である。

 

 説得する上で大切なことは、相手立てることでしょう。相手が自分の長所として誇りに思っていることを称えてあげ、短所としてコンプレックスを感じていることをことさら問題にしないようにして、相手の自尊心を満たしてあげる心配りを普段から心がけていれば、相手との信頼関係が醸成されて、いざ説得が必要な時でも、こちらの主張を聞き入れやすくなるでしょう。特に目上の人が相手のときは、プライドが邪魔して聞く耳を持ってもらえないことが往々にしてありますが、説得する時だけのテクニックではなく、常日頃からの尊敬に基づく信頼関係の構築が、言うべきことを言える状況を作り出し、ひいては、円滑な意思疎通ができる組織環境を育むことにもつながるのでしょう。

経営のトップページへ
トップページへ
copyright (c) 2006 business forum kobe21 all rights reserved.