〜「イノベーションと企業家精神」より、"ギャップを探す(第二の機会)"〜
1.ギャップ
ギャップとは、現実にあるものと、あるべきものとの乖離、あるいは誰もがそうあるべきとしているものとの乖離であり、不一致である。原因はわからないことがある。見当さえつかないことがある。
2.業績ギャップ
製品やサービスに対する需要が伸びているならば、業績も伸びていなければならない。利益を上げることは容易なはずである。上げ潮に乗っているはずである。そのような状況にありながら業績が上がっていないのであれば、何らかのギャップが存在すると見るべきである。
この業績ギャップをイノベーションの機会として利用するためにはどうすべきか、何がそれを機会に変えてくれるか、何ができるかを問えばよい。まず、解決すべき問題を明確にしなければならない。そして、既知の技術と既存の資源を利用してイノベーションを実現しなければならない。
3.認識ギャップ
産業内部の者が物事を見誤り、現実について誤った認識をもつとき、その努力は間違った方向に向かう。成果を期待できない分野に集中する。そのとき、それに気づき利用する者にとっては、イノベーションの機会となる認識ギャップが生まれる。
真剣な努力が事態を改善せず、むしろ悪化させるとき、そもそも努力の方向性が間違っていることが多い。そのようなときには、単に成果の上がることに力を入れるだけで大きな成果が簡単に得られる。事実、認識ギャップを利用するために華々しいイノベーションを必要とすることはあまりない。認識ギャップの解決策は通常、的を絞った単純で小さなイノベーションである。
4.価値観ギャップ
生産者や販売者は、ほとんど常といってよいほど、顧客が本当に買っているものが何であるかを誤解している。もちろん彼らは、自分たちにとっての価値が顧客にとっての価値であるという信念をもたなければならない。いかなるものであれ、一つの仕事に成功するには、その仕事の価値を信じ、真剣に取り組む必要がある。
しかし、生産者や販売者が提供していると思っているものを買っている顧客はほとんどいないのである。顧客にとっての価値や期待はほとんど常に供給者の考えているものとは異なる。
5.プロセスギャップ
プロセスギャップ(顧客が製品やサービスを利用する過程に存在するギャップ)は、なかなか見つけられないような代物ではない。消費者がすでに感じていることである。
欠けているのは、その声に耳を傾けることであり、真剣に取り上げることである。製品やサービスの目的は、消費者の満足にある。この当然のことを理解していれば、プロセスギャップをイノベーションの機会として利用することは容易であり、効果的である。
しかし、それでも深刻な限界がある。プロセスギャップをイノベーションの機会として利用できるのは、その世界の中にいる者だけだということである。決して、外部の者が容易に見つけ、理解しイノベーションの機会として利用できるものではないのである。
|