1.束縛しない
『人これを操るも従わざる者あり。これを縦(はな)たばあるいは自ずから化(か)せん。操ること切にしてもってその頑を益すなかれ。』(前集一五三)
(訳)人を束縛しようとしても従わない者がある。こういう人を自由にさせてあげれば、自発的にこちらの思うように動くようになることもある。無理に束縛しようとして、相手を益々頑固にしてはいけない。
人に命令をして自分の意のままに動かそうとしても、思う通りに動いてくれることはほとんどないでしょう。逆に方針さえ間違えないようにしながら、人に裁量を与えて自由にやらせてあげれば、自発的に責任ある行動をとれるようにもなれます。
真のリーダーは、人を動かすときにでも、自分の都合で相手を操るようなことはせずに、相手の人格と主体性を尊重したうえで、期待する行動を促すことにより、相手の能力も最大限に引き出すことができ、自らも周囲の尊敬を集めることができるのでしょう。
2.徳は事業の基(もとい)なり
『徳は事業の基なり。未だ基固(かた)からずして棟宇(とうう)の堅久(けんきゅう)なるものあらず。心は後裔(こうえい)の根なり。未だ根植えられずして枝葉の栄茂するものあらず。』(前集一五八)
(訳)人徳は事業発展の基礎である。基礎が固まっていないのに、家屋が堅固であったためしがない。志は後世が繁栄する根本である。根が十分に張っていないのに、枝葉が盛んに生い茂ったためしがない。
ビジネスを成功させるために最も大切なものはリーダーの人徳でしょう。顧客や従業員をはじめ、あらゆる関係者との共存共栄を図り、彼らから尊敬を集めることで、ビジネスに必要な多くの協力を得ることができるのでしょう。そして、その志を代々受け継いでいくことが、世代を超えて永続的にビジネスを発展し続ける根源となるのでしょう。
3.誠実
『人を信ずる者は、人未だ必ずしも尽(ことごと)くは誠ならざるも、己はすなわち独り誠なり。人を疑う者は、人未だ必ずしも皆は詐(いつわ)らざるも、己はすなわち独り詐れり。』(前集一六二)
(訳)人を信用する者は、人は全てにおいて誠実であるとは限らないが、少なくとも自分は誠実であることになる。人を疑う者は、人は全てにおいて偽っているとは限らないが、少なくとも自分は偽っていることになる。
ビジネスにおいてリーダーは、様々な人間関係を築いていく必要がありますが、全ての人がいつも誠実であるとは限りません。かといっていつも人を疑っていれば、信頼関係を築くこともできません。
真のリーダーには、まずは自分が誠実であること、そして、相手の真偽を見極める冷静な眼を持つことが求められるのでしょう。
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