1.地位と報酬
『明主の官職爵禄(しゃくろく)をつくるは、賢材を進めて有功を勧むるゆえんなり。ゆえに曰く、賢材なる者は厚禄におりて大官に任じ、功大なる者は尊爵ありて重賞を受くと。賢を官するにはその能を量り、禄をわかつにはその功を称(はか)る。これをもって賢者は能をしいてその主につかえず、功ある者はその業を進むるを楽しむ。ゆえに事成りて功立つ。』
(訳) 賢明な君主が官職や爵位・俸禄を設けているのは、優れた人材を引き上げて、功労のある者を励ますためである。だから「優れた人材は厚い俸禄を受けて大官として任用され、大きな功績を上げた者は高い爵位について重い賞を受ける」と言われている。人材を官に就けるのにはその能力をよく考え、俸禄を与えるのにはその功績をよく見比べる。その結果、人材は自分の能力を偽って君主に仕えることはせず、功績のある者は業績を前進させることを楽しみとする。だから事業は成功して功績も上がるのである。
経営者が部下の貢献度を高め、より大きなやりがいを与えるためには、部下を正しく評価し、それに見合った地位と報酬を与える必要があるでしょう。部下の功績・能力・人格を適正に評価し、それにふさわしい地位と報酬を適切に与え、部下の信用を得ることができれば、部下は進んで功績を上げようとし、自らの功績を偽ることがなくなるでしょう。そうすれば、事業の成功と部下の成長が同時に達成できるのでしょう。
2.先見性と正義
『智術の士は、必ず遠見にして明察なり。明察ならざれば、私を照らすあたわず。能法の士は、必ず強毅にして勁直(けいちょく)なり。勁直ならざれば、姦を矯(ただ)すあたわず。』
(訳) 術を知る士は、必ず遠い先を見通してはっきりと見抜くものである。はっきりと見抜けなければ、人の私的な企みを暴くことはできない。法をよく実行する士は、必ず強い気性で正義をつらぬくものである。正義をつらぬくのでなければ、人の邪悪を矯正することはできない。
経営者は、経営の現状を正しく分析し、部下の資質・能力・適性等を見極めた上で、事業の動向と部下の行動を絶えず先読みして、部下が主体的に組織に貢献できるように、明確な目標をもって計画的に組織をマネジメントすることが求められるでしょう。そうすれば、部下が私利私欲で動くことのない強い組織を創ることができるのでしょう。
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