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【ビジネスリーダーのための菜根譚講座 その十一】

1.見識と包容力

『徳は量にしたがって進み、量は識によりて長ず。ゆえにその徳を厚くせんと欲すれば、その量を弘めざるべからず。その量を弘くせんと欲すれば、その識を大にせざるべからず。』(前集一四五)

 

(訳)人格は、包容力が高まるにつれて向上し、包容力は、見識が深まるにつれて高まる。人格を向上させようと思うなら、包容力を高め、包容力を高めようと思うなら見識を深めなければならない。

 

 人の上に立つリーダーには、絶えず人格の向上が求められるでしょう。その人格を向上させるには、包容力を高める必要があるでしょう。心が狭く相手に気遣いができない者に人はついていけないからです。

 その包容力を高めるためには、見識を深める必要があるでしょう。見識がないと視野が狭くなり、自分目線でしか物事が見られず、相手の立場に立って相手を思いやることが難しくなるからです。

 真のリーダーには、広い視野、深い見識に裏打ちされた包容力が求められるといえるのでしょう。

 

2.反省できる人、できない人

『己を反(かえり)みる者は、事に触れて皆薬石となる。人をとがむる者は、念を動かせばすなわちこれ戈矛(かぼう)なり。一はもって衆善の路を開き、一はもって諸悪の源をふかくす。相去ること霄壌(しょうじょう)なり。』(前集一四七)

 

(訳)自分を反省する人にとっては、体験することの全てが自分を向上させる良薬となる。人の過失をとがめる人にとっては、思考することがそっくり自分を傷つける凶器となる。前者は多くの善行の道を開き、後者は諸悪の根深い原因となる。その違いは天と地ほどの差がある。

 

 ビジネスでも、うまくいかないときに、リーダーが、その原因を他人に責任転嫁し責め立てるのか、自らを反省して自分の行動を変えられるかで、リーダーの資質が判るでしょう。

 リーダーが他人に責任転嫁をすれば、周囲の信頼を失い、協力者をなくして、結局自らをおとしめることになるでしょう。

 リーダーが自らを反省して、自分の行動を変えられれば、多くの協力者を得て、道が開けていくでしょう。

 

3.滅びるものと滅びないもの

『事業文章は身にしたがいて銷毀(しょうき)す。しかして精神は万古新たなるごとし。功名富貴は、世をおいて転移す。しかして気節は千載一日なり。君子は信にまさに彼をもってこれに易(か)うべからず。』(前集一四八)

 

(訳)事業や学問は、肉体とともに滅びてしまうが、人間の精神は、絶えず新しい生命を与えられて、悠久の時代を生き続ける。名誉財産は、世の移り変わりとともに取って代わられるが、人の品格は、千年の後までも称えられる。君子は、このことを信念として、滅びるものと滅びないものを取り違えてはならない。

 

 企業においても、そこに普遍的な理念がなければ、いずれ衰退し滅びていくでしょう。しかし、そこに普遍的な理念があれば、絶えず新しい担い手が、新しい生命を企業に吹き込んでいき、永続していけるのでしょう。

 地位財産も、世の中の変化の中で、いずれ他人の手に移る運命にあるでしょう。しかし、人の尊敬を集める人徳は、いつまでも語り継がれ、その精神も受け継がれていくでしょう。

 だから、ビジネスリーダーも、地位や利益や財産を追い求める以上に、理念信念人格を磨き続けることを大切にすべきでしょう。それが事業の永続性につながるのでしょう。

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