〜第四の習慣「Win-Winを考える(リーダーシップの原則)」〜
1.リーダーシップ
自立から相互依存状態の領域に足を踏み入れる瞬間、必然的にリーダーシップの役割を引き受けることになります。なぜなら、それは他の人に影響を及ぼす立場に立つからです。そこで、「Win-Winを考える」ことが、人間関係における効果的なリーダーシップの習慣となります。
2.人間関係の六つのパラダイム
人間関係には以下の六つのパラダイムがあります。最も良い選択はその状況によって異なりますが、ほとんどの状況は、相互依存の現実の中にあり、Win-Winを考えることが最も現実的な方法です。
(1) Win-Win
自分も勝ち、相手も勝つ。それぞれの当事者が欲しい結果を得ること。
Win-Winは、全ての関係において常に相互の利益を求める心と精神のことであり、お互いに満足できる合意や解決策を打ち出すことです。Win-Winは、人生を競争ではなく、協力する舞台とみるパラダイムです。
(2) Win-Lose
自分が勝ち、相手は負ける。
人生のほとんどは自立したものではなく、相互依存状態の中にあり、人が望む結果は、ほとんどが人と協力することによってはじめて得られるものです。Win-Loseを考える精神は、その協力を覆すものであり、効果的なものではありません。
(3) Lose-Win
自分が負けて、相手が勝つ。
交渉においては、Lose-Winは降伏することであり、リーダーシップのスタイルで言うならば、それは甘さと過剰な寛容さです。Lose-Winとはお人好しになることであり、お人好しは必ず最終的に負けます。
(4) Lose-Lose
自分が負けて、相手も負ける。
Win-Loseを考えている者同士が頑固で、融通が利かない、我の強い者同士がぶつかると、その結果はLose-Loseになる。両方ともが負けるのです。
(5) Win
自分だけの勝ちを考える。
Winの精神を持つ人は、自分の目的を達することだけを考え、他の人が目的を達成できるかどうかはどちらでもよいと考えます。
(6) Win-WinまたはNo-Deal
Win-Winの合意に至らなければ、取引しないことに合意する。
相互依存状態において、Win-Win以外は、低次元の選択であり、長期においてはお互いの関係に悪影響を及ぼすことになるでしょう。本当のWin-Winを達成することができなければ、No Dealを選ぶ方が適当です。
3.Win-Winを支える五つの柱
Win-Winの原則は、全ての対人関係において成功するための基礎であり、五つの柱によって支えられています。それは「人格」で始まり「関係」に進み、その中から「合意」がつくられる。Win-Winは、それを支える「システム」、組織構造の中で育成され、Win-Winの「プロセス」によって達成されるのです。
(1) 人格
人格こそがWin-Winの基礎であり、他の全ての柱はこれを土台にしている。Win-Winのパラダイムには、三つの必要不可欠な人格の要素があります。
@ 誠実
誠実とは、自分の価値観を明確に打ち出し、日頃の生活において、それに基づいて主体的に計画し実行していくことです。他に対する約束をつくり、かつ守ることができなければ自分の約束や決意は全て無意味なものになります。
A 成熟
成熟とは勇気と思いやりのバランスです。成熟した人とは自分の気持ちや信念を表現する勇気と、相手の気持ちや信念を尊重する思いやりのバランスがとれている人のことです。このバランスを確立していれば、相手の話を聞いて感情移入をすると同時に、勇気を持って自分の立場を主張することができます。
B 豊かさマインド
豊かさマインドとは、全ての人を満足させることが可能である、というパラダイムです。豊かさマインドを持つ人は、その結果、威信、名誉、利益、権限などを、容易に人と分かち合うことができます。豊かさマインドは、他の人と接しながら、無限の可能性があることを認め、新しい創造的な代替案や第三案をつくり出すものです。
(2) 関係
信頼残高こそが、Win-Winの本質です。信頼がなければ、できるのはせいぜい妥協くらいです。信頼がなければ、開かれた相互の理解は得られず、本当の想像力を発揮することもできません。
双方がお互いに高い信頼残高を持ち、Win-Winを決意している関係にあるなら、巨大な相乗効果を生み出すことになります。
(3) 合意
Win-Winの精神で得られた合意を、「実行協定」と呼びます。この合意により、建設的な関係についてのパラダイムが縦から横へ、上司による管理から自己管理へ、立場を守ることからお互いに成功を目指すパートナーになることへ、転換するのです。
Win-Winの実行協定には、次の五つの要素が含まれます。
@ 望む結果 手段ではなく、何をいつまでに達成するかを明確にする。
A ガイドライン 望む結果を達成するにあたって、守らなければならないルール(原則、方針など)を明確にする。
B 使える資源 望む結果を達成するために使用できる、金銭的、技術的、組織的、人的な資源を明確にする。
C 責任に対する報告 評価基準、評価者、および評価の時期を設定する。
D 履行・不履行の結果 プラス・マイナス、自然・必然的な結果を設定する。評価の如何によってどうなるか、賞罰などを明確する。
(4) システム
Win-Winが機能するには、それを支えるシステムがなければなりません。研修システム、計画立案システム、コミュニケーションと情報伝達システム、予算システム、報酬システムなど、全てがWin-Winの原則に基づいていなければなりません。
多くの場合、問題は人にあるのではなく、システムにあります。たとえ善い人でも悪いシステムにおけば、悪い結果が出るでしょう。
(5) プロセス
Win-Winの結果を出すためには、次の四ステップのプロセスが必要です。
@ 問題を相手の立場から見る。本当に相手を理解するように努め、相手と同じくらい、あるいはそれ以上に、相手のニーズや心配・関心事を表現する。
A 対処しなければならない課題と関心事を明確にする。
B 完全に納得できる解決には、どういう結果を確保すべきかを明確にする。
C その結果を達成するための新しい案や選択肢を打ち出す。
|