〜その三 人を育てる〜
「事業は人なり」とよくいわれますが、松下幸之助は『実践経営哲学』の中で、「人を育てる」ことについて、つぎのように述べています。
・事業経営においては、まず何よりも、人を求め、人を育てていかなくてはならない。
・経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かす人を得なければ、成果も上がらず、使命も果たしていくこともできない。
・人が育つためにいちばん大切なことは、正しい経営理念、使命観を企業としてしっかりもつことである。
・企業は社会に貢献していくことを使命とする公器であり、そこにおける仕事も公事である。だから、公の立場から見て、見すごせない、許せないということに対しては、言うべきを言い、叱るべきを叱らなくてはならない。
・それとともに大事なのは、思い切って仕事を任せ、自分の責任と権限において、経営理念に則して自主的に仕事ができるようにしていくことである。
・企業が人を育てる場合には、職業人としても社会人としても立派な人間を育てることを強く心しなくてはならない。
松下幸之助は、事業経営の最優先事項として、人を育てることをあげています。企業
が、成果を上げる、使命を果たす、社会に貢献することができるかどうかは、全て人に
かかっているからです。
人が育つためには、企業が経営理念・使命観を明確にして、経営者が一貫性のある力強い指導力を発揮できるようにする必要があります。
企業は社会のための公器であるとの前提のもとで、経営者が私情をはさまず、公の立場で、部下を叱咤激励してこそ、部下も育っていけるのでしょう。
部下が責任感をもって主体的に仕事ができるようになるためには、部下を信じて仕事を任せることが大事になるでしょう。その際に、部下が勝手な行動に走らないよう、経営理念・使命観を共有することが大事になるでしょう。
そして、職業人として仕事の技能を育成することにとどまらず、社会に貢献する公器の一員として、人格を兼ね備えた社会人として人を育てることが、企業の生産性と同時に、働く者の幸福、社会への貢献につながるのでしょう。
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